Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

B'z新曲「イルミネーション」/TMG関連情報等について

B'zにはたまにあるのですが、新情報が突然大量に解禁された週末でした。
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まずはB'zとしての新曲「イルミネーション」が朝ドラ主題歌に決定しました。だいぶ前にそういう記事があったと思うのですが、正直眉唾だと思っていたのでちょっと驚きでした。平成を舞台にしたドラマなので、確かにB'zはぴったりかもしれませんが、どんな曲か想像がつきません。タイトルや朝ドラであることを考えると、「マジェスティック」のように落ち着いた曲かと思うのですが、パワフルに盛り上げるという言葉もあるのでわからないですね。アーティスト写真は割と派手ですが、ダークなアーティスト写真から「STARS」の例もあるので全然あてにならないですね。9月末からは毎日聞けるので少しの辛抱。もちろんリリースは未定。
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TMGもいよいよ本格稼働。松本さんとしては久々のミュージックステーション出演が決定。TMGで2曲、松本さん参加の「DA DA DANCE」で3曲分の出演と豪華。BABYMETALとのコラボがあってのことですね、これは。アルバム発売直前ですが、TV出演にあわせて披露曲である「GUITAR HERO」と「ETERNAL FLAMES (feat. BABYMETAL)」の2曲が9月11日から先行配信決定。

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GUITAR HERO」はTMGの「The Beginning of TMG II」という短い動画の裏でしれっと流れていた曲で、公式で特に言及はないですが、少なくともサビは「Real Face」をそのまま流用して歌詞やアレンジをTMGとしてやり直している曲ですね。「ETERNAL FLAMES (feat. BABYMETAL)」はニュースにあわせてワンコーラスだけ動画が公開。シンセとリフが入り混じるスリリングなリフから、スピード感のある展開に持ち込まれ、BABYMETALのコーラスとエリックの主メロが入り組んで最後に交わるという、端的に言ってめちゃくちゃかっこいい曲です。ここだけでも繰り返し聞きたくなりますし、アルバムへの期待も高まります。
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少し前ですが、曲順は発表済。当初の10曲に加えて、LiSAさんに提供した「Another Great Day!!」を再アレンジした「THE STORY OF LOVE (feat. LiSA)」も収録されることになり、11曲となりました。個人的にはアルバムとしては11曲くらいの方がしっくりきます。LiSAさんは「THE HIT PARADEⅡ」に続いてソロでは連続起用ですね。
ツアーも間もなく開始でアルバム発売の翌日19日から9公演を約1か月足らずで東京ガーデンシアターまでまさしく弾丸のように駆け抜けます。MR.BIGのツアーの状況等を見ているとエリックの声が若干心配ですね。音源ではよさそうですし、MR.BIGは日本での最後の追加公演まで決まっているので、エリックのやる気は十分だと思いますが。
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駄目押しの松本さん情報で、木梨憲武さんのアルバムに再び参加。一体どれだけの楽曲に携わっているんだろうと思います。特に書いてないですが、作詞は横山剣さんとだけ書いてあるので、ギターでの参加だけではなく作曲も当然のようにしているのだと思います。

THE HIT PARADEⅡ

2003年にリリースされた「THE HIT PARADE」の続編にあたる「THE HIT PARADEⅡ」がリリースとなりました。
全17曲というボリューム感のあった前作に比べると、10曲のみのコンパクトな作品に仕上がっています。また、ビーイング系列の女性歌手を起用して、女性ボーカルによる歌謡曲が中心だった前作とは異なり、男性ボーカルの比率がぐっと上がっているのも特徴です。また、打ち込みを中心にしたサウンドが特徴的だった前作と違って、バンドによる生の演奏となっているのも大きな違い。時間がなかったのはどちらも同じだとは思うのですが、10曲に絞ったことや原曲アレンジをかなり踏襲したことでバンド演奏を中心とした音源とすることが出来たのかもしれません。
画像からでは分かりづらいですが、装丁もかなり凝っており、いわゆるプラスチックのCDケースではなく、レコードを紙ジャケットで再販したような作りになっています。帯も敢えて昭和風のフォントを利用しているほか、CDはビニール袋には入れず、レコード風の台紙にセットしている(ぱっと見、大型の円盤に見えるので間違ったエディションでも買ったのではないかと疑ってしまいました)。
ポスターは折り込み、歌詞カードとライナーノーツはセットですが紙ジャケットに収めるためか非常にコンパクトなつくり。見比べたわけではありませんが、ライナーノーツはホームページでも公開しているものと変わらないかと思います。
前作同様に本作に伴うツアー等は予定されていないのですが、「Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman-」ツアーで先行して披露された楽曲が特典映像として付属しています。「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」は前作収録曲ですが、20年の時を経て松本さん自身による歌唱が先のツアーで実現し、その模様を収録しています。ライブ映像は4曲のみですが、ゲスト含めて和やかな雰囲気の中で演奏されていることを感じ取れます。個人的に行ったことがない会場ですが、想像よりもステージが近く、想像よりもステージが大きく見えました。
全体で40分に満たないコンパクトなアルバムですが、内容的には前作に引けをとらず濃いカバーアルバムになっていると思います。

1.六本木心中 (featuring LiSA)/原曲:アン・ルイス「六本木心中」(1984年)
昭和の女性ロックの筆頭歌手の一人であるアン・ルイスの代表曲。
松本とも親交の深かった桑名正博の元妻としても有名だが、現在は芸能界を完全に引退している。
シンセサイザーの大胆なイントロにギターが絡み、四つ打ちのリズムに乗せて歌われる軽快なロックナンバーなのだが、本作ではシンセサイザーもギターも増し増しにして昭和よりも平成初期のようなイメージに仕立てられている。
フェードアウトするのは原曲と同じだが、自然にフェードアウトしていく原曲に対して、本作ではライブ終盤のような激しいドラムを響かせながら終わる。もう少し聞かせてほしいくらいがちょうど良いのかもしれないがもう少し聞かせてほしかった。
ボーカルを務めるのは松本から曲提供したことで縁が出来たと思われるLiSA。鬼滅の刃のイメージが強いとは思うが、元々はアニメの中のガールズバンド、Girls Dead Monsterのボーカルを務めたことで一躍脚光を浴びた歌手である。アン・ルイスの歌声はまさにタイトルに相応しい六本木を彷彿とさせるが、LiSAの場合にはもう少し弾けた印象があり、六本木というよりは渋谷の女性かもしれない。
もちろん音源も良いが、TV出演時のパフォーマンスが素晴らしく、体を動かしながらコブシをきかせて歌う姿がかっこよかった。

2.木蘭の涙 (featuring GRe4N BOYZ)/原曲:スターダスト☆レビュー木蘭の涙」(1993年)
「木蘭」は「木蓮」を意味する造語だという。よって、読みは「もくらん」ではなく「もくれん」となる。
アルバム収録曲の中では唯一平成リリースの楽曲であり、1993年のリリースである。松本自身はB'zのデビュー5年目であり、まさに全盛期を駆け抜けている最中である。本作はアルバムからのリカットシングル故にチャート上でのヒットには恵まれなかったが、楽曲の普遍性から多くの人にカバーされるなどして愛されてきた楽曲である。
本作がシングルリリースされた頃は、CHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH/夢の番人」がチャートの1位を独走しており、翌週リリースされたB'zの「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」がその勢いを止めて自身最大のヒットシングルとなる。この2作が1993年の年間1位、2位となったほか、「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」を皮切りにシングルチャートをビーイング系のアーティストが18週間にわたり独占するなどの事件もあった。
まさに平成のCDバブル時代にリリースされた楽曲だが、そうした分かりやすいヒットシングルからは少し距離を置いており、オリエンタルかつ沖縄風のメロディで揺蕩うように愛をうたっている。イントロなしで歌われるサビのメロディが印象的だが、続くAメロの沖縄民謡とポップスの中間を行くメロディが個人的には好きなポイント。B'zでも「睡蓮」という楽曲があるが、同じようなメロディを使っている。また、合間に意外としっかりとしたギターのバッキングが聞こえてくるあたりに平成の匂いを感じ取ることが出来る。
GRe4N BOYZはGReeeeNが事務所変更と同時に改称したグループ名で、鈴木雅之に松本が楽曲提供した際に、作詞担当したのがHIDEという縁がある。アレンジについては原曲から大きく変えてはおらず、歌の合間にギターが主張しだすところも忠実に再現。ただし、中間の英語コーラスのパートはボーカルの音量を絞り、ギターをメインとしたパートに変更されている。また最後のギターソロからのピアノソロもオリジナルのアレンジ。
GRe4N BOYZのボーカルはまさにGRe4N BOYZといった感じで、原曲が根本要の独特の抑揚で歌われて少し湿っぽい印象なのに対して、もう少しからりとした印象を受ける。ただ、何も知らない人が聞いたらGRe4N BOYZオリジナルの曲なのではないかと思うくらいには曲とボーカルがマッチングしている。

3.落陽 (featuring TERU(GLAY))/原曲:吉田拓郎「落陽」(1989年)
日本におけるフォークの名手というか事実上の始祖である吉田拓郎の楽曲である。
女性ボーカルが中心だった前作では選曲されなかったが、本アルバムでは本曲に加えて、インストゥルメンタル「俺たちの勲章テーマ」も吉田拓郎作曲である。
「落陽」は苫小牧発仙台行きのフェリーに乗り込んだ主人公に対して、北海道で知り合った行きずりの老人がわざわざ見送りに来た短い情景を描き出している。身を持ち崩した老人とたまたま意気投合したのだろう、土産代わりに預かったサイコロ片手に老人との縁に思いを馳せながら沈む夕陽をフェリーから眺めるという、短いながらも物語性と余韻に富んだ楽曲である。
原曲はまずライブ盤に収録されたものであり、その後アレンジを変えたスタジオ版がいくつかリリースされている。フォークらしいアコギの響きの横で、まさしく燃える太陽のように弾かれるエレキギターの熱っぽさが印象的な楽曲である。頭のギターの入り方は松本のプレイにも通じるものがあり少なからぬ影響の度合いを知ることが出来る。
本作ではGLAYのTERUがボーカルとして参加。どちらかといえば、松本はTAKURO、稲葉はTERUとギター・ボーカル同士で親交があるイメージだが、音源上での共演はこれが初めてとなる(UNITE #01のライブ上での共演はあるが)。北海道出身で有名なので、苫小牧をキーワードにしたこの楽曲への参加はぴったり。
原曲は1989年にシングル化もされているが、サウンドは原曲を大きく離れて打ち込みを大胆に使用したアレンジとなっている。途中にはサックスソロも挟んだ上で、最後にギターソロが出てくるというフォークというよりもロックのフォーマットに沿った形式になっている。オリジナルに比べると曲の展開が派手すぎて歌詞がもつ風情をやや殺してしまっている感もあるが、これはこれで映画のエンドロールを見たような重厚感がある。
本作では元のライブ版のアレンジを採用しており、冒頭からエレキとアコギが交錯する。エレキのニュアンスは少し変えており、スタッカート気味にメロディーを区切って演奏しているのが印象的。TERUのボーカルはノリノリ。元々TAKUROが作るGLAYの楽曲には歌謡曲のテイストがあり、それを歌いこなしていたということもあるが、語りかけるような調子から次第に感情を込めていくボーカルはお見事。2番が終わり、ギターソロの途中で自然と「Hey!」の掛け声が出てくるあたりに、バンドマンなんだなということが伝わる。
出だしこそ原曲のアレンジだが、後半にいくに連れて盛り上がっていくのは後年のアレンジバージョンに近い。「豊かなる一日」や「つま恋2006ライブ」のバージョンでは、最後の「戻る旅に陽が沈んでいく」という曲を象徴するフレーズをコーラスが複数回繰り返しており、後を引き継いで長いギターの演奏が続くのだが、このバージョンも参考にしていると思われる。「あのじいさんときたら」と口先では揶揄うような調子なのだが、実際にはその心意気に深く感動した主人公の心情をより強調した形になっている。

4.銃爪 (featuring 稲葉浩志)/原曲:世良公則&ツイスト「銃爪」(1978年)
世良公則&ツイストは1977年にデビューし、その名の通り世良公則を中心としたロックバンドである。
既に欧米ではLed ZeppelinDeep Purpleが切り拓いたヘビーでラウドなロックのピークを過ぎ、Sex Pistolsに代表されるパンクロックが古色蒼然としたロックを隅に追いやろうとしていた時代である。そうした欧米の音楽事情から時間差で登場したのが世良公則&ツイストであり、日本においてハードロックをヒットチャートに送り込んだ最初のアーティストの一つである。世良公則&ツイストデビューの翌年にはご存知サザンオールスターズがデビューし、方向性は違うものの欧米から学んだロックと昔ながらの歌謡曲、そこに桑田佳祐のセンスを含んだ独自のロックをヒットチャートに送り込むことになる。
タイトルは「ひきがね」と読むのだが、もちろん造語である。
原曲はドラムの短い音色から力強いギターのリフが遠慮なく聞こえてくるロックナンバー。今となってはそこまでラウドには聞こえないだろうが、当時の日本としてはとんでもなく喧しいギターの楽曲のように感じたのではないだろうか。さらにそこに咆哮するような世良のボーカルが轟き、タイトル負けしない楽曲像を作り上げている。自分に決して靡いてくれない女性に対して奮起を誓う力強い歌詞だが、途中相手を憐れむような調子のパートで曲調もメランコリックになるのが昭和的。
勝手にしやがれ」以来となる松本孝弘 featuring 稲葉浩志がここで実現。前作以降、B'zとしてのカバー楽曲も増えており、直近では「Get Wild」、少し前なら「セクシャルバイオレット№1」があるため、二人の組み合わせでのカバーはそこまで珍しいものではなくなってきたが、存在感は流石だし余裕さえも感じる。
ドラムのイントロから最後のエンディングまでほぼ音源を完コピしている状態。間奏のギターソロの入りを少し現代的にしているが、印象的なギターソロはツインになっている以外は原曲通り。原曲はもう少し60~70年代のブルースっぽい響きがあるのだが、松本が弾くと端正なギターソロというイメージに変わるのが面白い。
世良公則は太い声を柔軟に使い分けていたが、稲葉は特に声色を変えるでもなくいつも通りのハイトーンで歌い上げている。稲葉としてキーに余裕がある楽曲だからか、2番では声を思いっきり張り上げ。世良のボーカルが曲中の女性に対する憐憫の情をうかがわせるのに対して、稲葉の場合にはもどかしい男性の気持ちが強調されているのが面白い。近年のカバーでは「らしさ」を強調するためか、シャウトやフェイクが多めになる稲葉だが、本曲でも冒頭やギターソロ前で荒っぽい声を久々に聴かせてくれる。

5.Yes-No (featuring 山本ピカソ (青いガーネット))/原曲:オフコース「Yes-No」(1980年)
オフコースの楽曲は前作でも「時に愛は」を女性ボーカルでカバーしている。それだけでなく、「Yes-No」も「時に愛は」も同じアルバム「We are」に収録された曲であり、松本がこのアルバムを好んでいることがよく分かる。
オフコースは紛れもなく昭和を駆け抜けたバンドなのだが、そのサウンドやメロディーには正直あまり昭和歌謡曲を感じない。本曲もオリジナルは1980年のリリースながら、収録曲中最も新しい「木蘭の涙」と遜色のないサウンドである。小田和正の透き通るようなボーカルが未だに変わらず耳にすることが多いため、地続き感を感じられるのも古さを感じない一つの要員かもしれない。
キーボードとボーカルの澄んだ雰囲気とは裏腹に「君を抱いていいの」というインパクトのあるフレーズとメロディでサビが展開される。こうしたフレーズが下品なものにならず、むしろ悩ましく寂しげなトーンになるのはオフコースというか小田和正ならではだと思う。二番を終えた後に差しはさまれるCメロで物憂げな雰囲気は頂点に達し、寂しげに佇む主人公の像がはっきりとしたイメージとして浮かぶようになる。
本曲はGARNET CROWのトリビュートグループである青いガーネットから山本ピカソが参加した。前作ではGARNET CROW中村由利が「私は風」で堂々たる歌声を響かせていたが、2013年のGARNET CROW解散と共に残念ながら彼女は引退状態にある。山本ピカソの声は中性的であるという点で通じるものがあるが、どこか女性味のある柔らかさを感じる。
イントロのメランコリックなフレーズは、原曲のシングル版のイントロを模したもの。シングル版ではフリューゲルホルンの柔らかな音が入るのだが、サブスクなどで聞けるアルバム版はこれがない。全編を貫くキーボードはそのままに、曲の隙間に寂しげなギターのフレーズを差しはさんでいる。ハイライトであるCメロパートでは、頭からキーボードの代わりにギターがボーカルに寄り添い続くギターソロにそのまま感情を手渡すかのようなアレンジに変更。原曲はCメロ終わりからギターが音量を上げて出てくる構成だったのだが、松本らしさを感じる好アレンジ。
山本ピカソはこの曲の透明感と悩ましさを見事に表現している。女性ゆえにサビでそこまで声を張り上げていないのだが、それが良い塩梅で曲の表情を原曲から変えている。癖が強い楽曲とボーカルのカバーがひしめき合う中で、透明感のある本曲が一際目立っているのも面白い。個人的にはボーカル・ギター共に本作の中ではベストの出来。

6.ブルーライト・ヨコハマ (featuring 倉木麻衣)/原曲:いしだあゆみブルーライト・ヨコハマ」(1968年)
本アルバムからの第一弾先行シングルとしていち早く配信リリースされた楽曲である。
稲葉以外で前作からも継続して起用されたのは倉木麻衣のみ。20年の時を経て、ビーイングはB ZONEに名称が変わり、倉木が元々所属していたGIZA studioは事業内容を大幅に縮小し、倉木自身も所属レーベルを移している。随分と長い時間が経ったことを改めて感じさせる。
前作では山口百恵の「イミテイション・ゴールド」を歌唱したが、さらに時代を遡り、収録曲の中でも最も古い楽曲を歌唱することになった。何せ1968年の楽曲であり、松本・稲葉でさえも幼少期だった頃の楽曲である。
リリースから50年以上を経た楽曲であるが、横浜のご当地ソングとしては未だに有名であり、五木ひろしの「よこはま・たそがれ」や童謡の「赤い靴」同様に、何となく聞いたことのある曲ではないかと思う。
作曲は筒美京平であり、本作の大ヒットをきっかけに作曲家として大ブレイク。その後の活躍は言うまでもなく、B'zがカバーした「セクシャルバイオレットNo.1」も彼の作曲である。
原曲は昭和テイストをど真ん中で行く楽曲であり、令和どころか平成、昭和後期の世代にとっても古めかしい雰囲気を感じる楽曲である。カラーというよりもモノクロ、セピアの印象がある楽曲にいしだあゆみの時代特有の歌い方が色を添えて、横浜の街並みを照らし出す。何だか寂しい雰囲気のある楽曲に聞こえるが、実際には切なくも幸せな女性の心情をしみじみと歌った楽曲である。
原曲が割と派手な音で幕を開けるのに対して、ゆっくりと曲に入っていく形にアレンジされている。しかし、イントロを抜ければ楽曲のメロディーラインがギターで丁寧になぞられており、現代的なサウンドでオリジナルが持つ独特の雰囲気を大きく損なうことがないように注意していることが分かる。
切ない楽曲を滔々と歌い上げるのは倉木麻衣の持ち味の一つだが、オリジナルを意識しているのか、序盤はかなり感情を抑えた歌い方になっている。その分「歩いても歩いても」からのサビフレーズに気持ちがこもっている。少し微笑んで歌う倉木が良い意味でこの歌の雰囲気を盛り上げているとも思う。

7.白い冬 (featuring KEISUKE (Z)、YUJIRO (Z))/原曲:ふきのとう「白い冬」(1974年)
「白い冬」は1974年にリリースされたふきのとうのデビューシングルである。1970年代を代表するフォークデュオであり、1992年に解散し、その後再結成等は一切行っていない。北海道出身の二人で結成されたグループであり、活動拠点はずっと北海道だったが、年間200本以上のライブを行う精力的なグループだったという。松本はこの曲をバイト先の上司に聞かされて知ったという。ロックバンドZからKEISUKE (Z)、YUJIRO (Z)がボーカルを務めている。
自分の不足していることを書きあげても仕方ないのだが、本作収録曲の中で、曲名、アーティスト名、カバーしているアーティスト全てに知識がない楽曲である。アレンジは寺地秀行が担当しており、寺地は本曲と「傷だらけのローラ」のみでアレンジを担当。その他は全てYTことYukihide "YT" Takiyamaが担当している。
KEISUKE (Z)、YUJIRO (Z)が所属するロックバンドZ(ゼット)は長戸大幸プロデュースのバンドで2023年10月に結成されたばかり。長戸大幸プロデュースだが、B ZONE所属ではなく本作には参加していないギターのAZが長戸大幸と設立した株式会社XYに所属。現状は音源リリースとは行っておらず、ライブ活動と少し懐かしいアニソンのカバーの模様をYouTubeで公開している模様。
愛する女性が去った後の季節を白い冬と表現した歌詞を眺めていると、歌詞としてではなく一つの独立した詩としても成立するような美しさがある。女性と過ごした日々を思い出と共に捨て去ろうとする歌詞なのだが、「早や涙」「秋の枯葉の中に捨てた」といった詩的表現が光る。
原曲はイントロから音が分厚く重ねられているが、少しアレンジしてアコギの音を強調したシンプルなサウンドで始まり、次第に音を増やしていくスタイルを取っている。しかし、驚くべきはそのボーカルで、ふきのとうの原曲のイメージをそのまま再現しており、切々とした高い声で歌い上げる序盤から「もう忘れた」で始まる強いフレーズも完璧である。癖のない歌い方をしているので、逆にロックバンドとして普段はどのようなスタイルで歌っているのかが気になる。

8.時の過ぎゆくままに (featuring 上原大史 (WANDS))/原曲:沢田研二「時の過ぎゆくままに」(1975年)
前作の「勝手にしやがれ」に続いて、沢田研二の楽曲を選曲。
その経歴について説明はもはや不要だが、「時の過行くままに」は沢田研二最大のヒット曲である。1975年にリリースされた楽曲であり、1977年リリースの「勝手にしやがれ」より少し前の作品となる。「勝手にしやがれ」と同じ作詞:阿久悠、作曲:大野克夫のゴールデンコンビによって作成された楽曲であり、「太陽にほえろ!」のメインテーマでお馴染みの井上堯之バンドがバンドを務める。まさに昭和を代表するアーティスト・クリエイターが揃った豪華な一曲である。
ピアノの音に井上堯之のギターが絡みながら始まるバラードであり、沢田研二の物憂げな声が退廃的な雰囲気を加速させる。有名曲なので本作に限らず様々なアーティストがカバーをしているが、投げやりな気持ち、ぼんやりとした希望、仄かな艶めかしさを全てひっくるめて退廃的・ロマンティックさを演出するオリジナルの雰囲気を踏襲できた例はないのではないか。
この雰囲気を盛り上げているのが、随所に印象的に挟み込まれるギターの音だが、演奏は先に記載した通り井上堯之。前作収録の「一人~I Stand Alone~」の作曲者であり、自身でもカバーしている。ギターのトーンで聞かせる井上堯之のギターの音色は、松本の好みとも合致しており、井上堯之へのリスペクトも込めた選曲ではないかと思う。そういえば、91年頃のB'zのLIVE-GYMでは「太陽にほえろ!」をバックにバンド全員でコントをしていたこともあった。
今回ボーカルを務めるのはWANDSから上原大史。メンバーチェンジを経た末に活動を停止していたWANDSだが、上原大史を迎えて2019年に再始動し2020年に第5期としてCDリリース、活動をコンスタンスに続けている。低めの声と癖のある歌い方からWANDS初代のボーカルである上杉昇へのリスペクトが多分にうかがえるが、もちろんただ真似するだけではなく、新しいWANDS像を作り上げている。とは言え、一聴すると上杉昇が歌ってるのかと錯覚するのも確か(上杉昇自身は当然、WANDS在籍時とは声色が変わってきているのだが)。
原曲ではギターが狭い部屋の奥で鳴っているような響きだったが、ピアノと同じく前面にギターが出てきたサウンドとなっている。サウンドこそ現代的に聞こえるが、フレーズ含めかなり原曲に忠実に演奏している。上原のボーカルは原曲の退廃的な雰囲気は敢えて捨て去り、上原らしいボーカルで歌いきっている。ロマンチックなバラードに仕上がっているともいえるが、原曲を思うと少し力強さが前面に出過ぎているようにも聞こえる。原曲が二人の儚さを表現しているのに対して、こちらは渋さや「窓の景色も変わってゆくだろう」というフレーズの希望を強調しているとも言える。

9.傷だらけのローラ (featuring 新浜レオン)/原曲:西城秀樹「傷だらけのローラ」(1974年)
西城秀樹と聞くと「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」を思い出す人も多いかもしれない。
西城秀樹は1970年代のアイドル歌手として一世を風靡した新御三家郷ひろみ西城秀樹野口五郎)の一人であり、日本でスタジアムツアーを始めて敢行し、スタジアムにおけるド派手な演出の先駆者である。本作は彼が紅白歌合戦に初出場した際の楽曲であり、明朗快活な「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」のイメージとは異なり、絶唱系と呼ばれた力強く情熱的なボーカルが特徴的な曲である。
西城秀樹はアイドル歌手の括りに入り、そのような甘い曲が多いのも事実だが、豊かな声色と確かな歌唱力を活かして時々こうしたアイドルの枠をはみ出た強い楽曲をリリースしている。個人的なお気に入りは「若き獅子たち」なのだが、それについては一旦置いておく。ライブでは70年代~80年代にヒットしていたお馴染みの洋楽をカバーしており、これがまた素晴らしい。もちろんバンド演奏がついていけてない部分はあるが、洋楽を日本的なアプローチで歌って様になる人は中々いなかったのではないだろうか。
さて、本曲はオリジナルではギターのイントロとノイズのような打ち込みが合わさる中に昭和的なピアノの音が響くのだが、ギターによるすっきりとしたイントロに変更している。またイントロ以外はあんまり表に出てこないギターの代わりに昭和らしいブラスの派手な間奏が響き渡るのだが、それをまるっとギターソロに差し替えたほか、テンポが上がるサビのパートの裏に得意のバッキングを加えることでスリリングな展開を強調している。この少し懐かしい気配のするサウンド作りは寺地秀行によるもの。
西城秀樹はこの曲を力強く声が掠れる勢いで歌い上げたが、新浜レオンは十分な余裕をもって艶やかに歌い上げている。元々西城秀樹の大ファンであり、自らもカバーしていた新浜レオンだけにその歌いっぷりは堂々たるもの。原曲においては最後のサビ前で「ローラ!」と絶叫するのだが、さすがにそこは割愛され、二度目のギターソロとなっている。また、原曲では男女混声のコーラス(女性強め)がアクセントになっているが、男性のみのシンプルなコーラスに変更されている。
なお、1993年のB'zのRUNツアーの映像演出において、稲葉扮するネイティブアメリカンのイネーバが「ローラ!」と物真似するシーンがあり、ファンクラブ向けの映像にもそれが収められている。
西城秀樹の楽曲は一部を除きサブスクが解禁されていないため、本曲のみサブスクで原曲を聞くことは出来ない(配信リリースはされている)。

10.俺たちの勲章テーマ/原曲:トランザム「俺たちの勲章テーマ」(1977年)
エンディングはゆったりとしたインストゥルメンタル。作曲は吉田拓郎であり、松田優作中村雅俊主演の日本テレビ系刑事ドラマ「俺たちの勲章」のメインテーマである。後に歌詞を付けて「あゝ青春」としてリリースもされている。松本はこのドラマを見ていた当時は特にギターに興味を持っていなかったが、当時から良い曲だと感じていたという。
原曲を聞いてみると、びっくりするほど松本孝弘のような音が流れてくる。分かりやすいところでは「Riverside Blues」を聞いてもらえると共通した雰囲気を感じ取ることが出来るだろう。
古いピアノをかき鳴らしたようなイントロから、ギターが奏でるシンプルなコードの繰り返しに、口笛のような音などが加わりノスタルジー感を強めていく。こうした部分を含めて松本はかなり忠実にコピーしている。それだけ原曲に自分の音楽との近さを感じたということだろうか。原曲ではサビではギターが後退するのだが、そこはしっかりとギターで聞かせてくれる。
また、サウンドトラックらしく原曲は2回目のリフレインと共にフェードアウトしていくのだが、その後にオリジナルの展開を若干ではあるが追加して曲にオチをつけている。突然妙に松本らしいフレーズが飛び出してくるので分かりやすいと思う。

本作のリリースとあわせて、前作「THE HIT PARADE」の配信サービスでの解禁が決定しました。「勝手にしやがれ」「異邦人」を筆頭に本作とはまた違った方向でのカバーが光る作品なのでこれは嬉しいですね。全17曲の内の14曲が解禁されています。解禁されなかった3曲については、歌唱されているアーティストとの折り合いがつかなかった等の理由が予想されます。その影響かどうかは分からないのですが、ジャケットも味のあるオリジナルからⅡに合わせたものに変更されてます。配信サービスにおいてあまりジャケットは意味ないですが、ちょっと残念。
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「THE HIT PARADEⅡ」については、リリースをもってプロモーション含めた活動が一旦終了。作品の特性とスケジュール上やむを得ないですが、ツアーでお披露目、告知、TV出演、リリースと色々順序が普通とは逆転していました。
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松本さんとしては9月からはいよいよTMGリリースとツアーが控えています。割と大盤振る舞いだった「THE HIT PARADEⅡ」と比較して、「TMGⅡ」は曲目等以外は一切が明かされておらず、ようやく先行リスニングパーティーが発表され、つい先日リード曲がラジオで解禁されました。
雑誌のインタビューを見る限りでは、骨太だった前作よりも作風はもう少しバラエティに富んでいるようです。気が付けばこちらもリリース1か月を切っている状況です。一通りのソロ活動を終えた稲葉さんと入れ替わる形ですね。

NHK「SONGS」出演/六本木心中/TMGⅡ詳細決定

生憎の大雨のため、30分繰り下げで「SONGS」へ松本さんが出演しました。いつも通りのB'z、ソロそれぞれの略歴紹介から、大泉さんとの対談へ。都響とのコラボの際に入りが分からないといったエピソードで大泉さんを爆笑させるなど、久々にTVで長めのトークを披露。合間にTAKUROさんからのコメントなども差し挟み、以下の曲を演奏。
・#1090 ~Million Dreams~からBATTLEBOXのメドレー
・「俺たちの勲章」のテーマ
・傷だらけのローラ
・六本木心中
バンドは先日のツアーにも同行した大賀さん、麻井さんに加えて、川村ケンさん、河村カースケさんと稲葉さんのツアー同様にB'z、ソロで付き合いのある方の混合編成。松尾基さんのソロにはしっくりくる編成という気がします。
「六本木心中」は25日に先行配信したばかりの楽曲。不良少女めいた雰囲気の楽曲がLiSAさんにはよく合いますが、原曲よりは可愛らしい感じになって聞きやすいように思います。シンセサイザーからギターがぐいぐい来る展開は原曲通りですが、シンセサイザーもギターも原曲すこし派手なアレンジがされています。ギターソロは松本さんのオリジナル。
新浜レオンさんとの「傷だらけのローラ」も地上波初登場。オリジナルの派手なパフォーマンスを意識した動きも含めて、こちらも素晴らしいカバーだと思います。
番組では「銃爪」と「落陽」もさわりだけですが初公開されていましたが、二人のボーカルはやっぱりさわりだけでも引き込まれますね。
そして、本来は「SONGS」終了と同時に公開するはずだった「TMGⅡ」の詳細が発表。

こちらも10曲の収録。4ピースにこだわっていた前作とは異なり、ダニエル・ホー、ジェフ・バブコ、BABYMETALと豪華なゲスト陣を招聘。まったくアルバムの全貌は見えませんが、前作よりもキャッチーな仕上がりになってそうな雰囲気を感じます。数量限定盤とPREMIUM EDITIONの2種類を用意。数量限定盤には記念品となるメタルフォトフレームを、PREMIUM EDITIONには20年前のZepp Tokyoの映像を再編集して同梱。Zepp Tokyoは暑い中、参加した記憶がありありと思い出されますが、20年も経ったことのほうが驚きです。
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Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣ~ Kアリーナ横浜公演

有明アリーナに続き、enⅣとしては2回目の関東公演となるKアリーナ横浜公演の1日目に参加しました。B'z、ソロを通じてKアリーナ横浜での公演は初めてとなります。「只」の文字を象ったステージの花道から、そのままに会場自体が扇型に開き、傾斜の強いレベル3、5、7の高層階まで観客席が広がっており、今回のステージがぴったりはまっています。音楽イベントを念頭に置いた会場のためか、ステージサイドに席はない構造も大きな特徴。
今回はB'z PARTYの一次抽選で獲得したS席での参加ですが、レベル5のかなり上方からの参加。他の機会にレベル7を経験したことがありますが、レベル7はスクリーンも遠いため、客席上部に小さいモニターがあり、そちらがメインになりがちなのでそれよりはだいぶ見やすいかなという印象。上方からはステージ床面も見えるのですが、白い床にうまく照明を当てて真上から撮ると床自体に絵が映っているような綺麗な映像になるのが不思議。斜め上から見ても照明が当たっているようにしか見えないのですが。
公演の内容は大枠で有明アリーナ公演と変化はないのですが、日替わり曲はだいぶ違うので、その備忘です。

セットリストについて
複数の日替わり枠に公演ごとに違う曲を割り当てて、公演単位で違うセットリストになるのはソロ公演の大きな特徴。何が来るか分からないドキドキと○○会場の○日目という形で予想が組めないため、複数公演に参加しても同じ曲を聴いてしまうこともあったりする。
有明アリーナ2日目とKアリーナ横浜1日目では「くちびる」「あの命この命」が共通となった。また、「シャッター」と「我が魂の羅針」は日替わりで演奏されていたが、本公演のみ両方演奏された。それまで「波」「Salvation」などの楽曲が演奏されていた枠に「シャッター」が収まった形となる。
全体では曲数が1曲追加となり、アンコール含めて23曲と近年ではかなり多めの曲数となっている。何公演か経て、もう少し行ける、もう少しボリュームが欲しいと判断した結果だろうか。屋内で週2回をベースに公演するので、比較的体調は整えやすいツアーなのかもしれない(屋外メインだったSTARSや連続開催のen-Zeppよりは)。時間を取るような演出があるわけではないので、公演自体は2時間15分程度。

BANTAM
特に大きな変化があったわけではないのだが、間奏でステージに寝ころんだ稲葉が起き上がるのが一瞬遅れたために、最後のサビに微妙に出遅れていた。その借りを返すようにサビの最後では気合のこもったロングシャウトを披露。

念書
Singing Bird」の先行配信シングルにも関わらず、「Singing Bird」の爽やかな作風からは一線を画す楽曲。どちらかと言えば「只者」の作風に近く、本公演でも違和感なく組み込まれた。スクリーンにはMVの檻を思わせる映像が照明とあわせて映し出され、ステージ中央では稲葉が歌唱。特徴的なピアノのリフが流れると、自分の周りでは「おお・・・」という低い歓声。en3.5でもハイライトの一つだったが、今回も気迫のこもった演奏。ここでも最後に金切り声のようなシャウトが炸裂。

Golden Road
Singing Bird」からの、恐らくは稲葉自身のお気に入り曲。シンセサイザーのイントロからバンドが入るところで、「イチブトゼンブ」のようなノリでジャンプ。en3.5同様に花道を黄色の照明で彩り、「Golden Road」に見立てて歩きながら歌っている。ミドルテンポな楽曲に「信じた道をゆけばいい」という真っすぐなメッセージを乗せた楽曲だが、「無理をしたっていいんじゃない」とサビ後半で稲葉節が炸裂して観客と声出し出来るパートがあるのが特徴。

我が魂の羅針
スクリーンには焚火の炎のような映像が映し出され、ステージ上にも火の粉が散るような照明が。過去にも素晴らしいバラードを制作してきた稲葉だが、ゲームタイアップという条件がこれまでにないバラードを生み出した。ぽつりぽつりと語るような歌い出しから、ファルセットの入り混じるサビまで綺麗に歌ってのけたが、個人的には音源以上に感情のこもった最後の「それはずっと・・・」のフレーズの繰り返しがぐっと来た。音源ではそのフレーズを受けてすっと曲が終わるが、ライブでは長いアウトロが追加。稲葉は歌が終わると静かに退場しており、着替えのための繋ぎとしてのアウトロなのかもしれないが、DURANの熱のこもったギター含めいつまでも聞いていたくなるようなアウトロだった。

Chateau Blanc
ピアノのリフとともに、スクリーンには白背景をバックに体をくねらせながら歌う稲葉が大写しに。いつの間に撮ったものか分からないが、ライブ用にまるまる1曲分の映像を用意するのは非常に珍しい。恐らくはスタジオでそんなに時間をかけずに撮ったものだとは思うが、「NOW」や「Stray Hearts」でもフルサイズのMVはないことを踏まえれば、異例の映像と言える。コーラスパートのある「VIVA!」など他のアルバム曲と比較するとさらりと演奏されていたので、より印象に残るように演出を強化したのかもしれない(実際インパクトがかなり強い)。
こちらの映像については本日付で品川ヒロシによって撮影されたMVであることが発表された。本日オープンするShibuya Sakura Stageの大型ビジョンでMV含め映像を展開するとのこと。YouTubeでもMV自体はフルでアップ済。白黒背景に稲葉が体をくねらせながら歌うというシンプルな映像は、長期にわたってお蔵入りとされた「LADY NAVIGATION」や「ミエナイチカラ~INVISIBLE ONE~」を思い出させる。ライブでは映っていなかったが役者の演技パートもある。意外な方向の映像である。

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Seno de Revolution
これは有明アリーナで見逃しているだけだと思うが、イントロでサムが定位置を抜けてDURAN、徳永の間に登場。手に持っているのは恐らくはエレキシタールで、本曲のシタールを用いたイントロを披露。イントロが終わるとスタッフに楽器を返しながら、キーボードの位置に戻っていた。こんなのが俯瞰的にみられるのはアリーナではなく、スタンド席の特権。

音響について
音響についてはどんな会場でも席により差があるものと思うが、Kアリーナ横浜の音響は有明アリーナに比べると格段によいものに感じた。楽器やボーカルが重なり合って埋もれることがほとんどなくクリアに聞くことが出来た。「Okay」のイントロではそれが特に顕著で有明アリーナでは、混然一体となっていた音がバンド、コーラスでくっきり聞き分けられるようになり、心なしかボーカルの入りもスムーズだったように感じる。

撮影機材について
待ち時間が殆どでないように入場したので、自分が撮影に関するアナウンスを聞いていないだけかもしれないが、撮影機材は有明アリーナに比べて多めに入っていたように見える(有明アリーナはアリーナ中段だったので見えていなかっただけかもしれないが)。

メンバー紹介について
徳永はKアリーナ横浜全体に向けて雄たけび(今日はどうですかと聞くまでもなかったと稲葉)、サムは会場について稲葉から振られた際に「他の・・・平らな」と珍しく言いよどみ「『平べったい』ね!」と稲葉がフォロー。また一つサムの日本語の語彙が増えたものと思う。シェーンに対しては「意外と日本語分かってるんですよ」と茶化しを入れ、シェーンも少しずつ戻ってきた日本語を笑顔で披露。DURANに対しては「忍び」「魔法使い」といった比喩を改めるとして、やたらと壮大な表現をした後に「DURANもいつの間にか(ソロの)バンドでは最年長」と言ってしまい、「最年長ではない」と突っ込みをDURAN自身から食らっていた。ちなみに年齢は稲葉:59歳、シェーン:56歳、徳永:52歳、DURAN:39歳、サム:29歳と年齢幅の広いバンドなのに、40代がいない(DURANは12月で40歳)。

Kアリーナ横浜について
初めての会場ということで、その構造が珍しかったらしく稲葉はMCで度々会場について言及。スタンドがレベル3、5、7となっているのを観客に確認し「Kアリーナ横浜には偶数がない」と言ったり(実際にはレベルではなく階と言っていたが)、上の方からもパワーを浴びるような感覚と言ったり。
また、40年くらい前に会場の近くで下宿していたことを明かし、まさか40年後に再開発が進みその中でライブするなんて思ってもみなかったと、個人的な昔話を踏まえた話を披露。
Kアリーナ横浜は比較的アクセスが良い会場なのだが、閉演後に雨が降り始め、駅につく頃にはゲリラ豪雨が来襲したため、個人的には中々に厳しい帰り道だった。

ボーカルについて
歌詞の間違え等のちょいちょいしたミスはあったものの、稲葉のテンションは総じて高く喉の調子も良かったみたいで、近年は控えている短いシャウトも多めにしていたように感じる。逆に近年の特徴である「ハッ!」という声は少なめ。曲数が多いのでさすがに「羽」「YELLOW」のあたりでは少し疲れ気味だったが、「YELLOW」は有明アリーナ公演よりもしっかりと歌いきっていた。還暦が近づいているのに、このパワーは流石としか言いようがない。

「THE HIT PARADE Ⅱ」8月28日発売決定

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松本さんのソロ新作についてもようやく情報が解禁。曲目やゲストに変更はなく、8月28日のリリースが決まりました。数量限定生産盤と初回限定盤にはBlu-rayで「Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman- at Billboard Live TOKYO」で先行演奏した「THE HIT PARADEⅡ」の楽曲を収録。「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が入っているのが嬉しいですね。そして、全ての仕様でセルフライナーノーツとTMGとの連動応募特典が付属。
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プロモーションの一環として、久々にNHKのSONGSに出演。「THE HIT PARADEⅡ」の曲もさることながら、大泉さんとの会話やソロ楽曲のメドレーが気になるところです。松本さんのTV出演にはTAKUROさんとTMGの二人がVTRで登場。GLAYは義理堅いですねえ。
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LiSAさんとの「六本木心中」がSONGSにあわせて配信開始、新浜レオンさんとの「傷だらけのローラ」はすでに先行配信済みです。もともと情熱的な曲ですが、新浜さんもさすがの歌唱力で色気たっぷりに歌い上げています。荒々しさを感じる西城秀樹さんに比べると情感の方が前に出ているでしょうか。アレンジ自体は比較的原曲寄り。もちろんギターの音が前には出ていますが、ギターソロも原曲に忠実にこなしています。原曲ではピアノが軽やかさを演出していたのに対して、ギターのバッキングがメインになっている分、現代的な厚みが増しています。サビ裏のこれぞ松本さんというバッキングが聞いてて気持ちいいですね。

Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣ~ 有明アリーナ公演

Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣ~の有明アリーナ公演2日目に参加しました。
有明アリーナ自体はSTARSツアーでも利用されたことがあるのですが、残念ながら不参加のため、これが初めての有明アリーナ。色々な行き方があるとは思うのですが、新豊洲から橋を渡って行くことを選択。前日は晴れていたものの、この日はあいにくの雨。大雨ではないものの終演後まで降り続け、行き帰りの道を若干不便なものにしていました。
グッズ売り場は盛況ながらもかなりの人数で捌いているため、そんなに待つことなく購入にたどり着きました。売切れもほとんどなかったように思います。
新しい会場だけあって、中の設備は綺麗だしアリーナとしては充実。場内での飲食、休憩スペースも設けられているほか、お手洗いも多めに設置されているように見えました。SSということでアリーナ席に導かれたものの、SSの対象はかなり広めにとっており、アリーナの2/3くらいはSSになっていたように思います。
サイドに大型モニターを二つ、正面のステージから観客側に斜めに伸びた花道が左右に2本あり、真上から見ると「只」の字になっているのがポイント。ステージ後方は階段状に照明が設置されているだけでなく、大型のスクリーンにもなる仕様で、時に無骨なステージ、時に映像による華やかなステージを演出しました。
開演前の段階では特段の演出はなく、ステージ上方に火の粉が散ったような照明のみがつけられサイドスクリーンにはツアー名称が繰り返し流れているのみ。BGMは恒例の洋楽メドレーで、Led Zeppelinの「Thank You」などが流れていました。en-Zeppと被る間奏も多いですが、各曲の感想はざっと以下の通りです。日替わり曲については大阪公演以前に調べたものなので、今はもう少し変動があるはずです。

NOW
ほぼ定時に開演。近年は技術の発達からか会場との契約の問題か、「押し」という概念が殆どなくなってきている。」
すっと客電が消えて、ステージ全体がマグマ調に彩られて、「NOW」の特徴的なイントロが長めに流れ出す。
en-ballからは前ツアーのENDING SEや最終曲を1曲目に持ってくることが多いが、enⅣにおいても直近のen-Zeppのアンコールラストを1曲目に持ってくる形となった。
ステージからの逆光に包まれて、サポートメンバーが入場すると、ピアノのシリアスな音色が鳴り響き、歌が始まる直前で中央から稲葉が登場。
リリースされたばかりの曲ながら、en3.5から十分にライブで披露してきた楽曲なので、演奏自体は堂に入ったもの。「時は濁流となる」のシャウトにあわせて、ステージ後方スクリーンで扉が開いて光が差し込むような映像が映り、ステージが一気に明るくなるパートがクライマックス。
本曲は短いながらもMVも作成され、アルバム発売後にYouTubeにて公開中。

マイミライ
「enⅣにようこそいらっしゃいました!」と短いMCをすると、ザクザクとしたギターの音にあわせて体を揺らしながら「マイミライ」を歌いだす。
B'zでいうところの過去の「ZERO」のような立ち位置を獲得しつつある楽曲。元々は提供曲であり、「Okay」のカップリング曲なのだが、「Wonderland」や「AKATSUKI」などのシングル曲よりもライブでの存在感は強い。「STOP」で演奏を止めたり、「どういうこっちゃ」を会場全体で叫ぶパートがあったり短いながらもライブならではの要素を詰め込んでいるのがセットリスト入りの理由だろうか。

BANTAM
en3.5、en-Zeppでは後半戦に据えられていたが、今回は前半で登場。徳永のブンブンとしたベースの煽りから始まりMVを彷彿とさせるモノクロ調にステージの色彩も変化。しょっぱなから畳みかけにきている構成だが、観客からの応答という意味ではen-Zeppの方が生々しいパワーに満ちていたかもしれない。間奏では稲葉がステージ上に寝ころびながらもがくような姿勢を取り、カメラが真上からの映像を捉えるという奇抜な演出。ステージの床にあたる部分にも映像を出すことで、真上からの映像でも絵になるという特殊なステージだったことが分かる。最後のフレーズを思いっきり伸ばしてシャウトに繋げるシーンは、en3.5の「念書」並に圧巻。

くちびる
ギターを小刻みにかき鳴らして観客の期待を誘いながら、始まったのは「くちびる」。「マグマ」の2曲目に収録された楽曲で「マイミライ」と比較するとかなりストレートなロックナンバーで、演奏頻度も比較的高め。en-Zeppでも1日だけ演奏され、愛知公演でも1日目に登場している(現状、「arizona」「念書」との日替わり)。原曲は2番が終わった後の感想がスリリングな楽曲だけど、ギターソロパートに大幅に変更して、今の「稲葉浩志」らしい曲になっていたように思う。

GO
ここは「I AM YOUR BABY」「Stay Free」「Salvation」と毎回違う楽曲が披露されているブロックだが、ドラムのタイトなリズムに導かれて「志庵」から「GO」が登場。enⅢで初披露され映像化もされているものの、演奏機会自体は非常に少ない珍しい楽曲。珍しく稲葉がエレキギターを手に持ちながら歌っているが、アコギの時よりも若干ギターに集中していた様子。目立つような楽曲ではないものの、ファルセットが混じったりボーカルとしては結構表現豊かな楽曲。

孤独のススメ
それまでの公演では「Golden Road」が演奏されていたが、同じ「Singing Bird」より「孤独のススメ」が初めて演奏された。この曲を聴くとen-ballで足踏みした記憶が蘇ってくるのだが、生憎そうした演出はなく「オーオーオー」のコーラスをシンプルに煽る形式。聞いている側も最初何が演奏されたのか分からなかったのだが、稲葉のイヤモニも調子が良くなかったのか歌いなれていないのか出だしはかなり歌いにくそうにしていたのが印象的。

ブラックホール
最新作である「只者」のリリースについて触れ、作るのも楽しいが生でお届けできることも嬉しいので聞いてほしいと語る稲葉。キーボードの長めのイントロから一転、音源同様にアカペラの音声にエフェクトをかけて「ブラックホール」が開始。音源ではちょっと目立たないコーラスがバンドメンバーにより強調されており、捻くれた心象を音に乗せた音源よりも若干スマートな印象。一方で歌が終わった後の演奏は音源以上に激しく照明の明滅が激しさを強調していた。

Chateau Blanc
スリリングなピアノのリフが印象的な楽曲で、ステージ後方に控えるサムから遠慮なくそのリフを繰り出してくる。歌の出だしが低めなのは音源通りだが、音源のちょっと捻くれたような歌い方はしていなかったように聞こえる。アルバムにおいては「VIVA!」同様に少し目立たない位置づけにある気もするが、ライブでは十分な存在感があり、「ダーイブ」の声が気持ちよく響き渡った。

シャッター
アルバム内のバラードは本曲と「我が魂の羅針」の2曲だが、それが日替わりとなっている。いずれもメロディの際立った良曲なので片方しか聞けないのは非常に残念な限り。花弁がひらひらと落ちてくるようなイントロとカメラのストロボのような背景をバックに、とある親子の何気ない風景を歌い上げる。サビでのファルセットはもちろん、二番の「元気でいてね」のフレーズを思いっきり跳ね上げて歌うなど音源以上に情感たっぷり。

VIVA!
ステージから斜め前方に伸びる花道の下手側にアコギを持った稲葉、もう上手側に徳永・DURANが歩いていき、歌える人は歌ってほしいというMCと共に「トゥルトゥルトゥットゥッ」のコーラスをバンド全体で口ずさみ始め、観客もそれにあわせて歌い始める。元々は曲の最後に出てくるコーラスだが、この構成の方が曲のカラーが掴みやすく分かりやすいようにも感じた。

あの命この命
稲葉のみ花道に留まり、給水してからおもむろに歌いだしたのは「あの命この命」。「波」「BLEED」などとの日替わり枠。個人的な話をするとen3.5、en-Zeppでも聞いたため、僅か3公演で3回も聞いたことになる。アレンジは当然en-Zeppと変わらず、弾き語りに徳永がチェロで参加し、最後はバンド全体が加わるという原曲よりも派手なもの。どうせ3回聞くなら原曲通りに弾き語りの形式で全編聞いてみたかった気もする。

空夢
ステージの後方には開いた窓と椅子の映像が映し出され、白い布と共に窓から飛び出し様々な景色を旅していく。映像自体は奇抜なものではないが、ステージ後方をフルに使ったことと、現実のやるせなさを嘆く曲の盛り上がりと見事にマッチングして、大きな感動を生んでいた。元々アルバムの中でも独特の存在感を発揮していた楽曲だが、このライブにおいてもクライマックスの一つになっていたのではないか。日替わり曲の妙で、前曲で出てくる現場の兵士と本曲の最前線を駆け抜けた夢という歌詞が奇妙にシンクロしていた。「あの命この命」での主張がシリアスなほどに、それが夢だった時の「空夢」のやるせなさが大きな落差となって、この曲を際立たせていたのではないか。

oh my love
「Oh!」というシンプルかつ短いコールアンドレスポンスをしてから、「oh my love」とタイトルコール。スクリーン後方には桜の木のCG。歌詞にシャツを1枚脱いだというフレーズがあるので初夏のようなイメージの楽曲だったが、桜の季節でもそこまで違和感はない。en-Zeppでは日替わり曲の一つだったが、レギュラーメニューで再登場。あんまりライブ中盤に来るイメージのない曲だが、前曲から穏やかに繋ぎ、最後のストーンズ風のコーラスで怒涛の後半戦へ持っていく役割を担わせるという意図があるのかもしれない。ステージの床にも桜のビジュアルが映し出され、真上からのカメラが時折ちょっと不思議な光景を映し出していた。

Stray Hearts
バンドメンバーの紹介を挟んでの演奏。
バンドメンバー紹介ではやはりシェーンが一際大きな歓声を浴びており、シェーンがサムの日本語の上手さに嫉妬してみせるなどして笑いを誘った。もっとも稲葉がサムに対しては日本語でガンガン喋りかけるのに対して、シェーンには短く小声で英語の質問を稲葉が挟むあたり、両者の日本語レベルの差は歴然としている(シェーンも十分に理解している方だが)。その後、DURANのギターを変幻自在、忍者みたいだ、忍のギターと独特の言葉で誉めそやすと、ステージ全体が赤く染まりDURANのギターから特徴的なイントロが登場。
en-Zeppもそうだったが、タイアップ曲ということもあり、イントロの歓声もひときわ大きい曲だったように感じる。

Seno de Revolution
観客に声出しを要求して始まった楽曲。次曲も含めてen-Zeppのレギュラーメニューから続投した楽曲。正確にはenⅣでの演奏が決まった曲の中から、en-Zeppにも起用された曲なのかもしれないが。この曲は「Say No!」で一斉に声を出すのだが、その後のサビも声出しを要求されているのかそうでないのかが地味に分かりづらい楽曲かもしれない。

CHAIN
声出しゾーンということで、ゆったりとした「NA NA NA NA~」のコーラスを観客に呼び掛けて始まる。ラップに入る前の間奏パートは大胆にアレンジされ、シェーンのドラムが際立っていた。
スクリーンとステージ後方にメンバー全員の顔が映るとモンタージュ写真のように顔のパーツが入れ替わるという愉快な演出が施された楽曲。生のステージよりもこの演出に目を奪われた人も多いかもしれない。当然顔は中々そろわないのだが、最後は一人ずつ笑顔の写真が名前と共に映し出されていた。


これも「Stray Hearts」と並び歓声の大きかった楽曲。
ステージ後方には大きな羽が映し出され、正面から見ると稲葉の背に羽が生えたように見える(もっとも2番からは頻繁に動き出して羽だけが取り残されていたが)。特に印象的なのは2番でボーカルをメインとした演奏の裏でシェーンが思いっきりドラムを叩き、轟音が鳴り響いたシーン。ドラム音に対してエフェクトもかけているのではないかと思うが、それにしても気合の入った叩き方でステージでシェーンが両手を振りかぶって思いっきり叩いているのを見ることが出来た。曲中に銀テープが飛び交い、キャッチできた人はそれを振りかざした(テープ自体はen-Zeppと同じもの)

YELLOW
en3.5では、「羽」の前に配置されていたので丁度逆の配置。バンドにしても観客にしても盛り上がりがピークに達しており、観客も興奮状態。CMタイアップということで比較的キャッチーなメロディにブルースっぽいDURANのギターが絡み合う楽曲なのだが、サビはソロには珍しく高いキーを切れ間なく歌う必要があるため、さしもの稲葉でもややバテ気味。ただし、テンション自体は高くステージはもちろん花道を縦横無尽に駆け回り、音源よりも引き延ばされたアウトロで「Higher!」の声を体全体で煽っていた。

Starchaser
en-Zepp同様にキーボードの壮大なイントロで始まり、星空を思わせる照明が会場全体を包み込む。
正直en-Zeppで聞いた時も音源で聞いた時も、タイアップ曲らしいメロディアスな楽曲だなあという印象でハマりこむほどの興味を今日には持っていなかったのだが、この本編ラストで聞いた「Starchaser」は凄く良かった。曲のスケール感にアリーナという会場はフィットしていた。今回、アルバムにまつわるMCはほとんどなかったが、「僕はまだ星追うものの一人」という歌詞に只者としてまだまだチャレンジしていく稲葉の心意気が込められているようにも感じた。昨年B'zが「We're all STARS」というフレーズをキーワードに活動したのとは対照的。


アンコール
気分はI am All Yours
今回の公演のMCのキーワードとして「ちょっとでも楽しい気持ちになってほしい」というのがあったようなのだが、改めて楽しいかどうかを問いかけ、全力でオーディエンスが応えた。さざ波のようなギターから、優し気な調子で歌われる「気分はI am All Yours」は、ユニークなタイトルとは裏腹にソロ曲の中でも端正な楽曲。en-Zeppがアンコール1曲目でちょっと意表をついてたのに対して、ぬるっとした始まり方。「只者」からは日替わりも込みで11曲が演奏され、「cocoa」のみが未演奏となった。曲調的にも収録の経緯からしても演奏の可能性は低いと見ていたが、やや残念。

遠くまで
これは完全にen-Zeppと同じアレンジで、サムのピアノをバックに囁くような調子で歌いはじめ、バンドの演奏に合わせてのびやかになっていくという流れ。ほとんど顧みられることがないB'z本体のデビュー曲とは裏腹にソロツアーでは必ず演奏され、大事にされてきた曲。元々はアウトロでシャウトしまくるのが特徴的だったが、年々控えめに。ただ、この日は調子もよく大きな声ではないが、最後のロングトーンの前に細かくシャウトを入れていた

Okay
「oh my love」や「愛なき道」と並ぶソロ公演のラスト請負曲。マイクスタンドで観客にコーラスを呼びかけるイメージが強いが、今回はマイクスタンドは用いず。en-Zepp同様にかなりギターのボリュームが大きかったように聞こえたが、バンドメンバーによるコーラスも大きく鳴っていたのでen-Zeppほどの違和感は感じなかった。観客もこれが最後と分かっているので、音源よりも長めに演奏された間奏の「Okay!」のパートで、大きな声と思い思いの身振り手振りをステージに届けていた。ライブらしい少し大仰なエンディングを経て、全員で肩を組んで挨拶。「ビューティフルソルジャー」が流れる中、メンバー一人ずつの名を呼んで退場を見送ると改めて稲葉自身から礼を述べて退場。

いつもの規制退場だろうと席に座って暢気に構えていたら、どうしたわけか有明アリーナでは規制退場を採用しなかったらしく、慌てて退場の列に加わりました。出口を制限した上で、全フロアが出口に向かうため、それなりに広い通路でも観客でごった返していました。新豊洲までの道のりは橋を越えてからは比較的快適でしたが、フロアからの退場は規制した方が良いのではないかなと感じました。

ツアーは大阪・福岡を巡り終えて、再度関東は横浜に来た後で、折り返すように北へ向かい、津山でファイナルを迎えます。
収録だとは思いますが、有明公演の後にはFNS歌謡祭にも初出演を果たしています。特段のMCもなく「Stray Hearts」をTVでは初披露。知らなければ分からないレベルで微妙に曲がカットされていましたが、前回のTV出演に続き好パフォーマンスだったように感じました。

Koshi Inaba LIVE 2024 〜en-Zepp〜 Day3

ツアーが終わった直後ですが、本日も稲葉さんはTV出演(もちろん収録ですが)。前回と披露した曲は同じですが、「羽」はオリジナルバージョンを披露。「羽」も「NOW」もかなり調子のよいパフォーマンスで、久々にTV番組で特効を浴びる稲葉さんを見た気がします。
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それはさておき、en-ZeppのDay3に先週参加していましたので、簡単な覚書を残しておきます。

2020年にB'zが5ERASと称して無観客公演を行ったのが、このZepp Hanedaである。今回のen-Zeppだけではなく、TMGも今秋に本会場でライブすることが決まっており、関東のB'zファンにとって馴染み深い会場になりつつある。
天空橋駅からほぼ直結で会場には行くことが出来、周囲に飲食店等を兼ね備えているので、場所の割には便利な会場。Day3の日はありがたいことに気持ちよく晴れたので、開演まで会場の周りで待つ人が多数。公式HPにもある通り、隣接のタワーレコードでは簡単な展示会と「只者」予約によるポスタープレゼントを行っており、サイン付きポスターを求めた多くの客でにぎわっていた。待ち時間の間にも飛行機がどんどん上空を飛んでいき、羽田空港のすぐそばにいることを思い出させてくれる。
会場内だけではなく、会場周辺にも多くのロッカーが設置されており、最低限の荷物以外は預けておけるのも魅力(ただし、ロッカーとしてはかなり高額)。
会場1時間前くらいから整理番号のグループで集合がかけられるものの、呼び出しも完全に番号順なのであんまり早めに並ぶ必要は実はなかった。ドリンクを引き換えて会場内に入ると、その他の会場よりも大分多めに柵が設けられているのが分かる(5ERASではフロアも演出で使用する関係上、柵は取り外されていたため、映像で見ることは出来ない)。見る場所に拘らなければ柵にもたれてみる場所を確保できる。スタンディングは待ち時間も含めてそれなりに消費するので正直ありがたい。

01. Wonderland
開演はほぼオンタイム。事前に収録がされている旨のアナウンスがなされている。ステージ中央上部に本ツアーのイメージであるダイスが設置。開演と同時にダイスの表面の画像が複雑に入れ替わり、最終的には3日目を示す3の目が表示。
バンドメンバーが左手からぬるっと登場し、「Wonderland」を久々に披露。過去のライブでは繋ぎとして長めのイントロを追加していたが、今回は音源通りのイントロで登場。ソロキャリアの最初は重要なシングルだったが、その後リリースを重ねていくにつれて、シングルCDの表題曲としては演奏の機会が少ない楽曲となった。

02. I AM YOUR BABY
アコギとフィドルの絡みがムーディーな雰囲気を生み出す曲だが、昨年のen3.5同様にフィドルの代わりをDURANのギターが務めて、もう少しロックなイメージになった。図らずもシングル「Wonderland」収録曲が連続披露となった。「あなたの声だけがこの胸震わす」も出来れば披露してほしかったところ。

03. SAIHATE HOTEL
「Peace Of Mind」で初めて聞いた時には、呻き声から始まるちょっと暗い楽曲のイメージだったが、聞きこんでいくと情景描写に富んだ楽曲であることが分かる。出だしは不穏な響きなのにサビは意外とキャッチーな楽曲で、こうした路線はその後のソロ作品でもよく見られるようになる。enⅢ以来の演奏なので、間にはen-ballとen3.5しか挟んでいないのだが、物凄く昔に聞いたような感覚(10年以上前なので当たり前だが)。

04. マイミライ
これはお気に入りの曲らしく、INABA/SALAS含めたソロ活動でかなり頻繁に演奏される。DURANのギターに乗せて気ままな感じで稲葉が歌いだすのだが、気持ちよく歌っているのがこちらにも伝わってくる。提供曲のセルフカバーなのだが、若い女性ボーカルによくこんな渋い楽曲を提供したなとふと思う。「どういうこっちゃ!?」を合唱するのが楽しい。

05. BANTAM
徳永のベースの煽りからスタート。稲葉浩志という人間を曲に閉じ込めたようなストイックさとワイルドさが同居した楽曲で、en3.5もそうだけど盛り上がり方が凄い。リリース直後であり、声出しがまだ完全には解禁されていなかったen3.5とは異なり、ライブハウス特有の熱気で追っかけコーラスを観客が思いっきり歌うのが大きな違い。

06. 波
en3.5とほぼ同じアレンジでの披露。大サビ前のボーカルのエフェクトもen3.5同様に音源を再現。「もっと奥へ」の声とともに陽気なバンド演奏に切り替わるのだが、もう少し曲の余韻を楽しみたかったようにも思う。

07. 遠くまで
少し長めのピアノのソロからボーカルがいきなり入り曲へ。ソロツアーで外されたことのないシングル1作目だが、それ故に毎回演奏や歌い方に工夫を凝らしている。今回は序盤は囁くような優しい声色で歌い、次第に伸びやかな声へ。曲終わりのシャウトは気持ち多めで、最後はアカペラでロングトーンを披露。

08. 横恋慕
冒頭にギターの音色でFURANが遊び倒し、明治チョコレートのCMのフレーズを観客に歌わせるシーンがあった。個人的には「Peace Of Mind」において、「Tamayura」と並んで中核をなす楽曲でラテン系のノリとも和風なノリとも取れるギターの音色に色っぽい歌が乗っかる。サビ終わりでファルセットを活用するボーカルも聞きどころかなと思う。珍しいので。

09. あの命この命
これも基本的にはen3.5と同じで、稲葉のアコギから始まり徳永がチェロを弾くというちょっとレアな絵。曲に力が入っていくにつれて、バンドの演奏が加わっていき、最後は原曲よりもかなりドラマチックな演奏に。

10. ハズムセカイ
ギターのザクザクした演奏に乗せて歌いだしたのは徳永で「When the night has come~♪」と「Stand by me」を披露。サビでは笑いながら稲葉さんが少しだけ参加。観客ももちろん笑顔で参加。和やかなムードのまま、「ハズムセカイ」に突入。終始楽し気な演奏で気が緩んだのか、最後のフレーズで止めるべき演奏をワンフレーズ前で止めかけるハプニングで、前方で歌ってた稲葉さんも思わずバンドを振り返る。それでも、歌は止めずバンドも演奏を切り戻して最後まで持っていく辺りは流石にプロ。

11. 正面衝突
これも徳永のベースの煽りからスタート。ド定番曲だが、他のDay1、2では外されていた楽曲。稲葉は見事なブルースハープを冒頭で披露。ライブハウスにおけるこの曲の盛り上がりは凄まじいものがあり、バンドの音を凌ぐような勢いで観客が声を上げ手を振り体を躍らせる様は、観客側から見ていても壮観。

12. Starchaser
一番新しい曲という紹介でスタート。キーボードの荘厳なイントロで始まるキャッチーな楽曲で、星空を模した照明が場内を照らす(本公演での数少ない演出)。生憎この壮大なイントロは音源には収録されなかった。非常にメロディアスな楽曲ではあるが、聞き入るべきか手などを振って音楽に乗るべきか悩ましいところであり、実際観客の反応もややまちまち。

13. Stray Hearts
間髪入れずに特徴的なギターのイントロで歓声。キャッチーな曲調という意味では Starchaserと同じだけど、ドラマ主題歌であることに加えて、THE FIRST TAKEでの披露等もあり認知力抜群な一曲ということで、観客の盛り上がりには明らかな差があった。間奏のコーラスも大合唱。

14. Seno de Revolution
まだ声が出るかいという煽りから始まった楽曲。ソロライブの定番曲というイメージもないのだけど、「志庵」の中では比較的重宝されている楽曲のように感じる。サビの頭をもちろん合唱するのだが、タイミングを誤ると大変恥ずかしいので、何となく慎重に聞きながらタイミングを図った。

15. CHAIN
イントロ含めて大幅なアレンジがされていたため、最初は何が演奏されているのか分からなかった。全く演奏されない「Not Too Late」とは裏腹にソロの定番曲。曲のノリも含めてB'zに近しい楽曲で、バンドのノリも少しB'zっぽくなる。

16. 羽
もはや代表曲と言える立ち位置。イントロはアコースティックスタイルではないが、やっぱり音源通りのイントロが一番高揚感を掻き立てる。観客もこれでもか盛り上がりを体で表現できるのがライブハウスの良いところ。途中で銀テープが1階真ん中あたりまで飛び、キャッチした人はそれを振りながら演奏に乗っていた。ちなみに銀テープはen-Zeppではなく、enⅣのロゴが刻まれたenⅣ仕様。

17. Okay
ギターの音をかなり強調したアレンジとなり、序盤は稲葉が音程をとりづらいような表情を見せていた。いつの間にかすっかりラストが似合う感動的な楽曲に成長した。マイクスタンドを観客に突き出すパフォーマンスをすることが多いが、ライブハウスの距離間では不要と考えたのか観客の前で手を広げて「Okay」の声を集めていた。

アンコール
18. 透明人間
スタンディングであるということを考慮して、割とあっさりとアンコールに登場。歓声に包まれて披露したのは、「Peace Of Mind」の中でも人気が高い「透明人間」である。enⅡでの椅子を用いた見事な演出と歌唱が記憶に焼き付いている。もちろんそのような演出はなく、マイクスタンドを用いた演奏だったが、久々に聞く「透明人間」は圧巻。割と「只者」に近い作風の楽曲だとは思うが、熱量を帯びていくのに悪寒はそのままという一種の気味の悪さを感じさせるアレンジは当時だけのものだと思う。

19. NOW
最後は稲葉浩志の「今」を歌う楽曲として、「NOW」が登場。en3.5同様にイントロは長めに取り、ピアノとギターが聞き手の期待を煽るような音を奏でるスタイルで、やはりアレンジとしてはこちらの方が音源よりもしっくりくるように感じる。2番終わった後の「濁流となる」のフレーズを思いっきり叫ぶのが一番の聞き所で、その日一番の声が響いたと思う。最後のアカペラ―パートの後に、ラストらしく皆でジャカジャカかき鳴らして終了。最後はバンドが肩を組んでお辞儀して、バンドメンバーが握手を交わしながら退場。en3.5同様に未発表の「ビュティフルソルジャー」が流れる中、稲葉から改めて会場へ感謝を告げてライブは閉幕。

色々と仄めかされていたものの、蓋を開けてみると「マグマ」から「只者」までのアルバムを6日間に割振り、日替わりを大幅に取り入れるという大胆なセットリスト。5ERASのような全曲入替ではないが、9日間で6公演を駆け抜けるという短期間のツアーにも関わらずこれだけの曲数をこなすのは驚異的。バンドメンバーを気心知れた面子で固めたからこそのセットリストだろう。1週間後にはenⅣが控えているわけだが、これだけやってしまうとenⅣでの選曲にも悩むのではなかろうか。

元々リリース時にツアーを行っていない「マグマ」「志庵」にどうしても珍しい曲が固まってしまうため、人によっては好みによる不公平感を感じたかもしれない(「冷血」「灼熱の人」「炎」なんかは自分も聞きたかった)。ただ、全公演に収録用のカメラはあったので、何らかの形で日替わり曲を何らかの媒体で見る機会があるのではないかと期待している。

参加したDay3は「Peace Of Mind」を主軸にした公演なのだが、昨年実施したen3.5も割と「Peace Of Mind」選曲が多めだったため、被りも多くなってしまったのはやや残念なポイント。「水平線」あたりは出来ればセットリストに加えてほしかったなというのが正直なところ。ライブハウスにおける「正面衝突」のパワーを感じ取ることが出来たり、「Wonderland」「SAIHATE HOTEL」「横恋慕」「透明人間」といった「Peace Of Mind」の中核をなす楽曲を改めて聞くことが出来たのは大きな収穫。