Koshi Inaba LIVE 2024 ~enⅣ~の有明アリーナ公演2日目に参加しました。
有明アリーナ自体はSTARSツアーでも利用されたことがあるのですが、残念ながら不参加のため、これが初めての有明アリーナ。色々な行き方があるとは思うのですが、新豊洲から橋を渡って行くことを選択。前日は晴れていたものの、この日はあいにくの雨。大雨ではないものの終演後まで降り続け、行き帰りの道を若干不便なものにしていました。
グッズ売り場は盛況ながらもかなりの人数で捌いているため、そんなに待つことなく購入にたどり着きました。売切れもほとんどなかったように思います。
新しい会場だけあって、中の設備は綺麗だしアリーナとしては充実。場内での飲食、休憩スペースも設けられているほか、お手洗いも多めに設置されているように見えました。SSということでアリーナ席に導かれたものの、SSの対象はかなり広めにとっており、アリーナの2/3くらいはSSになっていたように思います。
サイドに大型モニターを二つ、正面のステージから観客側に斜めに伸びた花道が左右に2本あり、真上から見ると「只」の字になっているのがポイント。ステージ後方は階段状に照明が設置されているだけでなく、大型のスクリーンにもなる仕様で、時に無骨なステージ、時に映像による華やかなステージを演出しました。
開演前の段階では特段の演出はなく、ステージ上方に火の粉が散ったような照明のみがつけられサイドスクリーンにはツアー名称が繰り返し流れているのみ。BGMは恒例の洋楽メドレーで、Led Zeppelinの「Thank You」などが流れていました。en-Zeppと被る間奏も多いですが、各曲の感想はざっと以下の通りです。日替わり曲については大阪公演以前に調べたものなので、今はもう少し変動があるはずです。
NOW
ほぼ定時に開演。近年は技術の発達からか会場との契約の問題か、「押し」という概念が殆どなくなってきている。」
すっと客電が消えて、ステージ全体がマグマ調に彩られて、「NOW」の特徴的なイントロが長めに流れ出す。
en-ballからは前ツアーのENDING SEや最終曲を1曲目に持ってくることが多いが、enⅣにおいても直近のen-Zeppのアンコールラストを1曲目に持ってくる形となった。
ステージからの逆光に包まれて、サポートメンバーが入場すると、ピアノのシリアスな音色が鳴り響き、歌が始まる直前で中央から稲葉が登場。
リリースされたばかりの曲ながら、en3.5から十分にライブで披露してきた楽曲なので、演奏自体は堂に入ったもの。「時は濁流となる」のシャウトにあわせて、ステージ後方スクリーンで扉が開いて光が差し込むような映像が映り、ステージが一気に明るくなるパートがクライマックス。
本曲は短いながらもMVも作成され、アルバム発売後にYouTubeにて公開中。
マイミライ
「enⅣにようこそいらっしゃいました!」と短いMCをすると、ザクザクとしたギターの音にあわせて体を揺らしながら「マイミライ」を歌いだす。
B'zでいうところの過去の「ZERO」のような立ち位置を獲得しつつある楽曲。元々は提供曲であり、「Okay」のカップリング曲なのだが、「Wonderland」や「AKATSUKI」などのシングル曲よりもライブでの存在感は強い。「STOP」で演奏を止めたり、「どういうこっちゃ」を会場全体で叫ぶパートがあったり短いながらもライブならではの要素を詰め込んでいるのがセットリスト入りの理由だろうか。
BANTAM
en3.5、en-Zeppでは後半戦に据えられていたが、今回は前半で登場。徳永のブンブンとしたベースの煽りから始まりMVを彷彿とさせるモノクロ調にステージの色彩も変化。しょっぱなから畳みかけにきている構成だが、観客からの応答という意味ではen-Zeppの方が生々しいパワーに満ちていたかもしれない。間奏では稲葉がステージ上に寝ころびながらもがくような姿勢を取り、カメラが真上からの映像を捉えるという奇抜な演出。ステージの床にあたる部分にも映像を出すことで、真上からの映像でも絵になるという特殊なステージだったことが分かる。最後のフレーズを思いっきり伸ばしてシャウトに繋げるシーンは、en3.5の「念書」並に圧巻。
くちびる
ギターを小刻みにかき鳴らして観客の期待を誘いながら、始まったのは「くちびる」。「マグマ」の2曲目に収録された楽曲で「マイミライ」と比較するとかなりストレートなロックナンバーで、演奏頻度も比較的高め。en-Zeppでも1日だけ演奏され、愛知公演でも1日目に登場している(現状、「arizona」「念書」との日替わり)。原曲は2番が終わった後の感想がスリリングな楽曲だけど、ギターソロパートに大幅に変更して、今の「稲葉浩志」らしい曲になっていたように思う。
GO
ここは「I AM YOUR BABY」「Stay Free」「Salvation」と毎回違う楽曲が披露されているブロックだが、ドラムのタイトなリズムに導かれて「志庵」から「GO」が登場。enⅢで初披露され映像化もされているものの、演奏機会自体は非常に少ない珍しい楽曲。珍しく稲葉がエレキギターを手に持ちながら歌っているが、アコギの時よりも若干ギターに集中していた様子。目立つような楽曲ではないものの、ファルセットが混じったりボーカルとしては結構表現豊かな楽曲。
孤独のススメ
それまでの公演では「Golden Road」が演奏されていたが、同じ「Singing Bird」より「孤独のススメ」が初めて演奏された。この曲を聴くとen-ballで足踏みした記憶が蘇ってくるのだが、生憎そうした演出はなく「オーオーオー」のコーラスをシンプルに煽る形式。聞いている側も最初何が演奏されたのか分からなかったのだが、稲葉のイヤモニも調子が良くなかったのか歌いなれていないのか出だしはかなり歌いにくそうにしていたのが印象的。
ブラックホール
最新作である「只者」のリリースについて触れ、作るのも楽しいが生でお届けできることも嬉しいので聞いてほしいと語る稲葉。キーボードの長めのイントロから一転、音源同様にアカペラの音声にエフェクトをかけて「ブラックホール」が開始。音源ではちょっと目立たないコーラスがバンドメンバーにより強調されており、捻くれた心象を音に乗せた音源よりも若干スマートな印象。一方で歌が終わった後の演奏は音源以上に激しく照明の明滅が激しさを強調していた。
Chateau Blanc
スリリングなピアノのリフが印象的な楽曲で、ステージ後方に控えるサムから遠慮なくそのリフを繰り出してくる。歌の出だしが低めなのは音源通りだが、音源のちょっと捻くれたような歌い方はしていなかったように聞こえる。アルバムにおいては「VIVA!」同様に少し目立たない位置づけにある気もするが、ライブでは十分な存在感があり、「ダーイブ」の声が気持ちよく響き渡った。
シャッター
アルバム内のバラードは本曲と「我が魂の羅針」の2曲だが、それが日替わりとなっている。いずれもメロディの際立った良曲なので片方しか聞けないのは非常に残念な限り。花弁がひらひらと落ちてくるようなイントロとカメラのストロボのような背景をバックに、とある親子の何気ない風景を歌い上げる。サビでのファルセットはもちろん、二番の「元気でいてね」のフレーズを思いっきり跳ね上げて歌うなど音源以上に情感たっぷり。
VIVA!
ステージから斜め前方に伸びる花道の下手側にアコギを持った稲葉、もう上手側に徳永・DURANが歩いていき、歌える人は歌ってほしいというMCと共に「トゥルトゥルトゥットゥッ」のコーラスをバンド全体で口ずさみ始め、観客もそれにあわせて歌い始める。元々は曲の最後に出てくるコーラスだが、この構成の方が曲のカラーが掴みやすく分かりやすいようにも感じた。
あの命この命
稲葉のみ花道に留まり、給水してからおもむろに歌いだしたのは「あの命この命」。「波」「BLEED」などとの日替わり枠。個人的な話をするとen3.5、en-Zeppでも聞いたため、僅か3公演で3回も聞いたことになる。アレンジは当然en-Zeppと変わらず、弾き語りに徳永がチェロで参加し、最後はバンド全体が加わるという原曲よりも派手なもの。どうせ3回聞くなら原曲通りに弾き語りの形式で全編聞いてみたかった気もする。
空夢
ステージの後方には開いた窓と椅子の映像が映し出され、白い布と共に窓から飛び出し様々な景色を旅していく。映像自体は奇抜なものではないが、ステージ後方をフルに使ったことと、現実のやるせなさを嘆く曲の盛り上がりと見事にマッチングして、大きな感動を生んでいた。元々アルバムの中でも独特の存在感を発揮していた楽曲だが、このライブにおいてもクライマックスの一つになっていたのではないか。日替わり曲の妙で、前曲で出てくる現場の兵士と本曲の最前線を駆け抜けた夢という歌詞が奇妙にシンクロしていた。「あの命この命」での主張がシリアスなほどに、それが夢だった時の「空夢」のやるせなさが大きな落差となって、この曲を際立たせていたのではないか。
oh my love
「Oh!」というシンプルかつ短いコールアンドレスポンスをしてから、「oh my love」とタイトルコール。スクリーン後方には桜の木のCG。歌詞にシャツを1枚脱いだというフレーズがあるので初夏のようなイメージの楽曲だったが、桜の季節でもそこまで違和感はない。en-Zeppでは日替わり曲の一つだったが、レギュラーメニューで再登場。あんまりライブ中盤に来るイメージのない曲だが、前曲から穏やかに繋ぎ、最後のストーンズ風のコーラスで怒涛の後半戦へ持っていく役割を担わせるという意図があるのかもしれない。ステージの床にも桜のビジュアルが映し出され、真上からのカメラが時折ちょっと不思議な光景を映し出していた。
Stray Hearts
バンドメンバーの紹介を挟んでの演奏。
バンドメンバー紹介ではやはりシェーンが一際大きな歓声を浴びており、シェーンがサムの日本語の上手さに嫉妬してみせるなどして笑いを誘った。もっとも稲葉がサムに対しては日本語でガンガン喋りかけるのに対して、シェーンには短く小声で英語の質問を稲葉が挟むあたり、両者の日本語レベルの差は歴然としている(シェーンも十分に理解している方だが)。その後、DURANのギターを変幻自在、忍者みたいだ、忍のギターと独特の言葉で誉めそやすと、ステージ全体が赤く染まりDURANのギターから特徴的なイントロが登場。
en-Zeppもそうだったが、タイアップ曲ということもあり、イントロの歓声もひときわ大きい曲だったように感じる。
Seno de Revolution
観客に声出しを要求して始まった楽曲。次曲も含めてen-Zeppのレギュラーメニューから続投した楽曲。正確にはenⅣでの演奏が決まった曲の中から、en-Zeppにも起用された曲なのかもしれないが。この曲は「Say No!」で一斉に声を出すのだが、その後のサビも声出しを要求されているのかそうでないのかが地味に分かりづらい楽曲かもしれない。
CHAIN
声出しゾーンということで、ゆったりとした「NA NA NA NA~」のコーラスを観客に呼び掛けて始まる。ラップに入る前の間奏パートは大胆にアレンジされ、シェーンのドラムが際立っていた。
スクリーンとステージ後方にメンバー全員の顔が映るとモンタージュ写真のように顔のパーツが入れ替わるという愉快な演出が施された楽曲。生のステージよりもこの演出に目を奪われた人も多いかもしれない。当然顔は中々そろわないのだが、最後は一人ずつ笑顔の写真が名前と共に映し出されていた。
羽
これも「Stray Hearts」と並び歓声の大きかった楽曲。
ステージ後方には大きな羽が映し出され、正面から見ると稲葉の背に羽が生えたように見える(もっとも2番からは頻繁に動き出して羽だけが取り残されていたが)。特に印象的なのは2番でボーカルをメインとした演奏の裏でシェーンが思いっきりドラムを叩き、轟音が鳴り響いたシーン。ドラム音に対してエフェクトもかけているのではないかと思うが、それにしても気合の入った叩き方でステージでシェーンが両手を振りかぶって思いっきり叩いているのを見ることが出来た。曲中に銀テープが飛び交い、キャッチできた人はそれを振りかざした(テープ自体はen-Zeppと同じもの)
YELLOW
en3.5では、「羽」の前に配置されていたので丁度逆の配置。バンドにしても観客にしても盛り上がりがピークに達しており、観客も興奮状態。CMタイアップということで比較的キャッチーなメロディにブルースっぽいDURANのギターが絡み合う楽曲なのだが、サビはソロには珍しく高いキーを切れ間なく歌う必要があるため、さしもの稲葉でもややバテ気味。ただし、テンション自体は高くステージはもちろん花道を縦横無尽に駆け回り、音源よりも引き延ばされたアウトロで「Higher!」の声を体全体で煽っていた。
Starchaser
en-Zepp同様にキーボードの壮大なイントロで始まり、星空を思わせる照明が会場全体を包み込む。
正直en-Zeppで聞いた時も音源で聞いた時も、タイアップ曲らしいメロディアスな楽曲だなあという印象でハマりこむほどの興味を今日には持っていなかったのだが、この本編ラストで聞いた「Starchaser」は凄く良かった。曲のスケール感にアリーナという会場はフィットしていた。今回、アルバムにまつわるMCはほとんどなかったが、「僕はまだ星追うものの一人」という歌詞に只者としてまだまだチャレンジしていく稲葉の心意気が込められているようにも感じた。昨年B'zが「We're all STARS」というフレーズをキーワードに活動したのとは対照的。
アンコール
気分はI am All Yours
今回の公演のMCのキーワードとして「ちょっとでも楽しい気持ちになってほしい」というのがあったようなのだが、改めて楽しいかどうかを問いかけ、全力でオーディエンスが応えた。さざ波のようなギターから、優し気な調子で歌われる「気分はI am All Yours」は、ユニークなタイトルとは裏腹にソロ曲の中でも端正な楽曲。en-Zeppがアンコール1曲目でちょっと意表をついてたのに対して、ぬるっとした始まり方。「只者」からは日替わりも込みで11曲が演奏され、「cocoa」のみが未演奏となった。曲調的にも収録の経緯からしても演奏の可能性は低いと見ていたが、やや残念。
遠くまで
これは完全にen-Zeppと同じアレンジで、サムのピアノをバックに囁くような調子で歌いはじめ、バンドの演奏に合わせてのびやかになっていくという流れ。ほとんど顧みられることがないB'z本体のデビュー曲とは裏腹にソロツアーでは必ず演奏され、大事にされてきた曲。元々はアウトロでシャウトしまくるのが特徴的だったが、年々控えめに。ただ、この日は調子もよく大きな声ではないが、最後のロングトーンの前に細かくシャウトを入れていた
Okay
「oh my love」や「愛なき道」と並ぶソロ公演のラスト請負曲。マイクスタンドで観客にコーラスを呼びかけるイメージが強いが、今回はマイクスタンドは用いず。en-Zepp同様にかなりギターのボリュームが大きかったように聞こえたが、バンドメンバーによるコーラスも大きく鳴っていたのでen-Zeppほどの違和感は感じなかった。観客もこれが最後と分かっているので、音源よりも長めに演奏された間奏の「Okay!」のパートで、大きな声と思い思いの身振り手振りをステージに届けていた。ライブらしい少し大仰なエンディングを経て、全員で肩を組んで挨拶。「ビューティフルソルジャー」が流れる中、メンバー一人ずつの名を呼んで退場を見送ると改めて稲葉自身から礼を述べて退場。
いつもの規制退場だろうと席に座って暢気に構えていたら、どうしたわけか有明アリーナでは規制退場を採用しなかったらしく、慌てて退場の列に加わりました。出口を制限した上で、全フロアが出口に向かうため、それなりに広い通路でも観客でごった返していました。新豊洲までの道のりは橋を越えてからは比較的快適でしたが、フロアからの退場は規制した方が良いのではないかなと感じました。
ツアーは大阪・福岡を巡り終えて、再度関東は横浜に来た後で、折り返すように北へ向かい、津山でファイナルを迎えます。
収録だとは思いますが、有明公演の後にはFNS歌謡祭にも初出演を果たしています。特段のMCもなく「Stray Hearts」をTVでは初披露。知らなければ分からないレベルで微妙に曲がカットされていましたが、前回のTV出演に続き好パフォーマンスだったように感じました。