Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

だらだら書いたから、長いし分かりづらい文章だ。

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件

×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル

×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル

×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル/西尾維新
西尾維新がノベライズする必要性はあったのか。侑子さん風に言うのなら、そこに「必然」はあったのか、と言われればそこは微妙なところである。明るいのだかブラックなのだか分からない作風はむしろ乙一向けな気もする。

しかし、起こってしまったものには必然がある。「西尾維新がHOLiCをノベライズ」という結果から読み取れる必然───乙一には侑子さんの良くも悪くも毒のある強烈なキャラやその言動を描かせるのは難しい、キャラ立たせと言えば西尾維新、よく分からない謎をよく分からない言葉と方法で解決に持っていったとみせかける人を煙に巻いたような展開、HOLiCも西尾も講談社である・・・───いくつもの必然が読み取れるがそれをいちいちあげつらって検証するなどというのは野暮なことである。目を向けられるべきは必然によってもたらされた結果の方であろう。

さて、本書は三つの短編で構成されている。原作でもキャラの裏や世界背景は明かされていない部分が多いためか、出てくるキャラは必要最低限に留めてあり、他はせいぜい四月一日の言葉の上で出てくる程度である。

無駄に几帳面な西尾らしく原作の他の話を仄めかしたり、侑子さんと四月一日にお得意の言葉遊びをさせてみたり、と芸が細かいが、個人的な感想を言わせてもらうと四月一日はもっとお人好しで、言葉遣いも振る舞いも天然の気が強い。それは僕が四月一日というキャラが好きだからそう思うだけかもしれないけど。

第一話はごく普通にノベライズしたという印象だ。そこに西尾維新ものの影すら見ることは出来ない。第二話は、HOLiCという体の下で西尾維新という影が口をあけて笑ってる。第三話になると、HOLiCというのはただの舞台装置でしかなくなっている。第三話の四月一日が独り言が好きな戯言遣いでも、妙に賢しい小学生の魔女遣いでも同じ話が進んだに違いない。はは、それでこそ西尾である。在る物を土台にして、手が届いた所で土台を叩き壊し、自分の運んできたものを土台へと挿げ替える、その───

長くなる。やめよう。

結果として、そこそこに面白いものには仕上がっていると思う。HOLiCのダークサイドだけでなく、あやかしと四月一日のちょっぴり良い話を書いて欲しかったなんていうことを西尾に要求するつもりはない。それこそやらせるなら乙一の領分である。無論、挿絵にも話の中にもHOLiCの存在意義の73%を占める座敷童がいなかったことについて、ありったけの不満を投げつける気もない。

侑子さんと四月一日の掛け合いは西尾にしか出来ない面白さだった。今はそれだけで十分。じゃあ、一体何を長々と書いていたんだろうね。


DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件/西尾維新

唐突だが、ヨツバ編以降、評価を下げられっ放しなDEATH NOTEではあるが、僕自身はDEATH NOTEという作品を決して低く評価してはいない。展開で気に食わない部分はあれど、作品の完成度自体は素晴らしいものだと思っている。木賀峰教授風に言えば「私はあなたがそのような行動に出ることを予め予測して言いました」というだけのLと月のバトルを、これだけ高度な裏のかき合いに見せかけたのだから。その表現力に天晴れである。

本書はそういった部分を見事カットした、いや、せざる得なかったのだろうが、作中でほんの少しだけ触れられたLのかつての事件のノベライズである。そこにはリンゴ好きの気まぐれな死神は存在しない、残念なことに。したがって、月君もいないわけだ。まぁ、DEATH NOTEを保持してからの月とLのバトルや共闘については、時間的に空きがないので、こういう外伝的な形になるのは仕方のないことだ。L死亡後からニアの登場までの空白の期間や、他の死神が落としたデスノートについてではなく、物語を途中退場したLと南空ナオミがタッグを組んだ事件にスポットライトを当ててくれたのだから、それで良しとしよう。ちなみに僕は月よりは断然L派である。もっともニア、メロよりは月の方が好きだが。

読んでみて感じたのは西尾維新DEATH NOTEへの限りなき愛である。それくらい西尾の匂いがしない真っ当なDEATH NOTEのノベライズである。DEATH NOTEという作品の雰囲気を壊さぬように、相当に気を使っている。登場人物の言動に若干の西尾っぽさを感じないでもないけど、それでも大場つぐみがこの小説を書いたといっても驚かない、そんな作品になっている。あ、でも、南空ナオミのキャラについては、西尾っぽさがかなり出てるかな。原作ではレイが死んだ後のナオミしか出てないから、元がああでも問題はないんだけど。

それだけじゃない。西尾が、あの西尾維新が真っ当な推理小説に仕立ててあげているのである。とりあえず謎っぽいもの入れておきましたというわけでもなく、暴論による無茶苦茶な謎解きでもなく、ヒントをきちんとまいてあり考えれば解けるはずの謎をいくつも周到に仕掛けている。それは本家DEATH NOTEにはなかった要素。

ブラボー、西尾維新!これこそがノベライズ。これこそがコラボの真髄である。まともな推理小説を書けると思ってなかった僕を許してください。そして、これに留まらず、今一度DEATH NOTEのノベライズを!DEATH NOTEだけじゃなくて、その愛で以ってジョジョのノベライズも!ユーならやれる!

個人的には最後の方のLが何故あんな姿勢だったりするのかという部分の記述やナオミに対するLの解答は実に良かった。熱かった。結婚できない男の冒頭を見逃したくらい面白かったといえば、僕の中での熱さが分かろうというものだ。