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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

SUPERMARKET FANATSY

SUPERMARKET FANTASY [初回限定盤:CD+DVD]

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ポップザウルス、Mr.Children
一度は拒否した方向性へのチャレンジ。HOMEは初期のミスチルに通じるおとなしめのポップスだったのが、今回はどの曲にもストリングスやらブラスやらピアノやらを大量に投入。きらきらを通り越してギラギラのレベルで派手に曲を飾ってる。正直、バンドとしてのミスチルは機能停止状態。ミスチルのアルバムとしては首をかしげざるを得ない。
しかし、一枚のポップアルバムとして見ると、これは中々どうして大した出来である。以下、いくつか特に気になった曲について。
タイトルの強烈さの割にはマイルドな仕上がりになってる終末のコンフィデンスソング。系統としてはシフクノオトの言わせてみてぇもんだと同じだけど、ずっと聞きやすい。これがもっとアコースティックな仕上がりなら聞こえ方も随分変わったと思う。このアレンジを良しとするかどうかでアルバムの評価は大分割れそう。
アルバムのリード曲となっているのがエソラ。イントロからとてもカラフル。ポップなミスチルをごった煮にして、一番濃い部分を抽出したような曲。ミスチルにありがちなBメロからサビにかけての急な転換をBメロをあえて排すことで回避してる。その発想はなかったなぁ、というのが正直な感想。コロコロとテンポよく進むAメロに比べると、サビ自体もそれまでの間奏も少々もたついてる印象。ただ、このストリングスとブラスの使い方は好き。鳴らすなら派手に。
口がすべってはHOMEの曲を思わせる素朴な歌い方やテンポの良いメロディーが個人的に気に入ってる。中々思い通りに生きられない自分と人間という生き物をシンクロさせた歌詞も嫌みがなくて好き。「口がすべって」というフレーズが良いね。最後の最後でHOMEからかけ離れた壮大なエンディングを迎えるのに度肝を抜かれる。
ロックンロールは曲名通り一応バンド中心のサウンドなのだけど、棘がない。ロックンロールの極端な生き方に憧れつつもそうはなれない歌詞が余りにコミカルなせいかもしれない。注目すべきはギターソロ。SUNRISEでも中々のソロがあったけど、今回は「ブライアン・メイばりのソロ」というコメントを雑誌で見かけていたので、気になっていたのだ。確かに間奏の後半でブライアン・メイみたいな音のソロがはっきりと。こんなにソロがはっきりとした曲はミスチルには珍しい。
どちらかといえば、羊、吠えるの方がロック。アルバムの中で唯一ロックしてるのがこの曲かな、と思う。羊、吠える、というタイトルは絶妙なもので、正しく羊の叫びである。その叫びは聞いたものに畏怖も動揺も与えない。歌詞の内容とはまるで意味が違うのだけど、羊はまさしく今のミスチルを象徴している。
少年はここ数作のアルバム曲の中でも傑出した出来。聞きやすさと無難さの境界線上を行くアルバムの中で唯一じっとりとした熱を放って、存在感を強烈に主張している。バンドがストリングスやピアノを凌駕して、タフなポップという言葉が良く似合う楽曲。どこかNOT FOUNDのように強い揺さぶりをかける桜井さんの歌も響く。「日焼けしたみたいに心に焼きついた君の姿をした痕になった」というサビの歌詞が凄く頭に残る。最初はどういう意味か分からないのだけど、分かると余計に頭に残る。
風と星とメビウスの輪、旅立ちの唄はオーバープロデュースで無理やり着飾った楽曲の印象を受ける。もっとシンプルにした方がきっと響いた。花の匂いと東京と声はミスチルらしい極めて無難な出来。ここ数年のミスチルのどのアルバムに入っても不思議じゃないという意味で。ただ、声の歌詞については中々心に残るものがあった。GIFTとHANABIはタイプの違うバラード。HANABIはサビでの爆発感が、GIFTはBメロの必死に走ってる感じが好きです。まぁ、その辺はシングル買った時に書いたはずなので割愛。
何をリスナーが求めているのか知り尽くしているのだからこそ出来るアルバム。言い方を変えれば究極に媚びたアルバムなのだけど、実際にリスナーがそれを求めていて大ヒットさせるのだから、大したものだと思う。ただ、全てのリスナーがこの方向性だけを求めているとは思わないでほしいな、と思う。シングルとはまるで違うアクの強い歌詞や、実験色の強い数々の楽曲を愛してやまない人達もいることを忘れないでほしい。売り方をよく心得ている会社とバンドなだけに、良いアルバムが来ても不安になってしまう。
DVDは見ていない。PVだけなんですもの。ライブ映像があるなら喜んでみるんだけど。