Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

MUSIC FROM ANOTHER DEMENSION!

America's Greatest Rock Bandのご帰還である。Honkin' On Boboから8年、Just Push Playから数えると実に11年もの歳月が流れたことになる。久々のアルバムはプロデューサーにジャック・ダグラスを迎え、メンバー全員でアイデアを出し合い、といった話があり、これはROCKSを思い出させるようなソリッドになってるのではないかと、期待した人も多いのではないだろうか。かくいう僕もその一人であった。
結論から言うと、ROCKSからは程遠いアルバムになった。ある意味では、復活以降のどんなアルバムよりもマイルドなアルバムとなっている。
アルバムは、不思議なトーンのナレーションで幕を開け、複雑なリフのロックナンバー、LUV XXXが続く。Aerosmithのアルバム一発目といえば脳天を突き抜けるような激しいロックというのが定番であったが、このLUV XXXは脳天を突き抜けるには、すこぶるパンチが弱い。Aerosmithらしい色気はあるものの、一曲目にUnder My Skinでも聞かされたような不思議な感覚である。続くOh Yeahはジョーの趣味が表に出た曲で、味はあるもののもう一つパンチに欠ける気がしないでもない。ストーンズ風のスローなロックというのは、実に雰囲気があって良いのだが、二曲目に持ってくるような楽曲ではないように感じてしまうのだ。
三曲目のBeautifulで、ようやくAerosmithらしい歯切れの良さを聞くことができる。ラップ調のメロにスティーブン独特のリズム感覚がシャキシャキとはまって気持ちよく耳の奥に届いてくる。スロー目のコーラスの裏でスティーブンが叫ぶように歌うさまも「らしさ」がある。
惜しむらくは、以降の全ての激しい楽曲がこの型にはまってしまっていることだ。ラップ調のメロとタイトルを連呼するコーラス。これはこれでAerosmithの王道の形ではあるのだが、Honkin' On Boboで発掘しなおしたヘビーなブルースの要素はいったいどこにいってしまったのだろうか。90年代に得たエンターテイメント精神あふれる華やかなロックはどこにいたのだろうか。
アルバムを通して聞いてみると、頭に残るフレーズは多いが、頭に残る曲は非常に少ない。色んなアイデアを惜しむことなく詰め込んではいるが、アイデアが曲の個性として煮詰まり切っていないように感じるのだ。ある意味では手癖とも言えるような、王道のバラードWhat Could Have Been LoveやAnother Last Goodbyeの方が曲としてきれいにまとまっているのは少々皮肉でもある。
アルバムとしては、もう一つのまとまりなのだが、Legendary ChildやBeautifulの切れの良さはやっぱり聞いてて気持ちがいい。特にLegendary Childのリズミカルな調子から、一気にシャウトまで持ち上げるスティーブンのボーカルは他では絶対に聞けない。また本編終了後に流れるカバー曲のShakey GroundとI'm Not Talkin'はカバーながらも非常に秀逸な出来で、むしろこちらの方がAerosmithらしく感じる。
年齢的に次回作というのはなかなか難しいからこそ、これだけ多くのアイデアを詰め込んだのだとは思うが、是非ともフラットな状態からの次回作をお願いしたい。