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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Les Misérables

レ・ミゼラブル~サウンドトラック

レ・ミゼラブル~サウンドトラック

Les Miserables 10th Anniversary Concert

Les Miserables 10th Anniversary Concert

映画のサントラにはない楽曲を求めて、慌てて購入した一枚。もちろん映画版とはことなるキャストですが、ミュージカルのオールスターとも言えるキャストによるこの一枚、本当に素晴らしいです。

ミュージカルの楽曲というと、キーとなる楽曲以外はどうしても間延びする印象があったのですが、レ・ミゼラブルは本当に素晴らしいです。全体を通して、非常にメロディアスで普通の楽曲を聞いてた人間にも違和感なく聞くことができます。

代表的なのは、スーザン・ボイルがカバーして有名になったI Dreamed A Dream。彼女のバージョンももちろん素晴らしいのですが、是非ともミュージカル版にも耳を傾けてほしい。映画では、アン・ハサウェイがほとんど泣きじゃくりながら歌っていましたが、折角のきれいな楽曲です。切々と訴えかけるサビはファンテーヌの悲しみが詰まってて泣けます。

ミュージカルらしい仰々しさが、詰まってるAt the End of the DayとLovely Ladies。前者の慌しさと本来は息をつく暇もない労働者の声なき声を具現化した合唱パートは印象的。映画ではここで初めて陽の下のの街の様子が露わになるシーンでした。一方で、後者は時代を象徴するけばけばしさがよく出た楽曲で、落ちていくファンテーヌの一部始終を滑稽にするような奇妙な明るさがある。

ジャン・バルジャンの苦悩と決意を語るWho Am I?が、また素晴らしい。脱走した囚人であることを打ち明けるべきか迷うジャン・バルジャンの気持ちをそのままにやや慌てたような前半から、どちらに転んでも良くはならないということに沈み込むような中盤から、自分は何者だと問いかけながら、自分が脱獄囚であることを打ち明けに行く後半。後半の迷いなき決意を表すように、堂々とした歌がお見事。

ケチな悪人の代表格であるテナルディエ夫妻の、処世術を歌い上げるMaster of the House。映像を見ればわかるのだが、本当に小悪党という言葉がぴったりのしょうもない奴らなのだが、映画でこのシーンを歌うシーンはどこか憎めない町の名物宿屋という雰囲気が漂っている。映画版のサントラについては、少々味気ないので、これは断然このロンドン公演を推します。映画版は映像を見ながらだと楽しいですね。

ジャベール警部の曇りなき心を歌うStarsは非常に地味なバラードですが、彼が決して私情や私怨で動くのではないことを示す非常に味わい深い曲です。これは映画版のアレンジとラッセル・クロウの素朴な低音がお見事でした。もちろんロンドン公演の歌い上げ方も見事なのですが、何となくラッセル・クロウの歌い方の方がジャベールらしい気がするのです。

映画版のサントラでなぜカットされたのか理解に苦しみますが、若者たちのテーマソングともいえるDo You Hear the People's Sing?は非常に勇壮な楽曲で、後半の若者たちのテーマとなっている楽曲です。この勇ましい楽曲から、ロマンチックなIn My Life、A Heart Full of Loveへ繋がるのです。マリウスとコゼットの浮かれきった歌詞は少々甘ったるい気もしますが、裏でのエポニーヌの密かな失恋と献身に胸を打たれる人も多いのでは。

レ・ミゼラブル最大のハイライトで、個人的に最も気に入ってるのがOne Day Moreです。革命結構前夜、全ての登場人物が「あと1日で・・・」とそれぞれの気持ちを歌い上げていく非常に劇的な楽曲です。若者たちは革命に胸を震わせ、マリウスとコゼットは引き裂かれる運命に涙し、エポニーヌは惨めな自分を呪い、宿屋夫妻は儲けのチャンスに小躍りし、ジャベール警部は使命に燃え、ジャン・バルジャンは嵐の予感に震える。物語の背景を分かっていないと中々感動しづらい楽曲ですが、この曲のために是非とも映画なり小説なりに目を通してほしい。そんな楽曲です。

On My Ownは失恋し、雨にぬれるエポニーヌが泣きながら歌う楽曲です。I Dreamed A Dreamと同じくらいに有名な楽曲かもしれませんね。マリウスに誰よりも恋い焦がれながらも、叶わぬエポニーヌの切なさが目一杯伝わってきます。彼女は革命の最中に死んでしまいますが、マリウスの腕の中での悲しいけれど美しい死でした。A Little Fall of Rainでのマリウスの悲しみと、エポニーヌの穏やかな声の対比が本当に美しい。

革命により、友をすべてなくしたマリウスが一人でその悲しみを歌うEmpty Chairs At Empty Tablesはマリウスのハイライトなのですが、その直後にコゼットとちゃっかり愛を語ってるあたりが、どうにも釈然としないところです。

コゼットをマリウスのもとに送り、役目を終えたとばかりにコゼットの前から姿を消しやジャン・バルジャン。彼が再会したコゼットと語りながら、ファンテーヌのお迎えを受けるシーンは涙なしでは見れないシーンでした。何もかも投げ打って、目に見える者たちを全て助けてきたジャン・バルジャンの天晴だけど、切なさを覚える人生の幕切れである。その直後に聞こえてくるのは、the People's Song、若者たちが歌ったあの楽曲だ。懸命に生きた彼らがもたらした望んだ世界を讃えてこの物語は幕を下ろす。

映画のサントラ以上にロンドン公演の楽曲が映画の様々なシーンを思い出せてくれて泣けてきます。
是非とも一度、生でこのミュージカルを見てみたいものです。