Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Progressive Rockを聞いて(Pink Floyd雑感)

何とはなしに、プログレを漁る日々が続いた。恥ずかしながら、僕のプログレの知識なんて言うのは非常に浅いもので、いくつか代表的なバンドの上っ面をなぞった経験がある程度である。
そもそも、プログレとは何なのか。例えば、僕の大好きなQueenの初期のアルバムはプログレ的であると言われるが、Queenプログレバンドと言われることは滅多にない。
短い期間であるがプログレの音に浸っただけでも、Queenプログレでないというのはよく分かる。確かに初期のQueenには凝った多重録音や複雑な転調と言ったプログレに近しい要素がいくつもある。ただ、彼らの曲は非常にポップなメロディーを繋いで出来ていることが多い。有名なBohemian Rhapsodyは何とも不思議な構成の楽曲だけど、個々のパートは口ずさめてCMにも使われる程度に分かりやすい。
幻想的ではあっても、深遠さとは無縁。ある意味、歌謡曲らしい分かりやすさを持つ彼らが日本で人気になったのは当たり前で、逆にどう捉えていいのかさえ分からないようなプログレが日本でそう大きく流行らなかったのも頷ける話である。
社会人の休日という時間は貴重で本当に短い上に、プログレというジャンルは集中力を要するジャンルである。まずは、プログレの代表的バンド、余りに有名ないくつかのバンドに焦点を当ててみた。

Piper at the Gates of Dawn

Piper at the Gates of Dawn

プログレと言えば、Pink Floyd、こう言っても差支えないだろう。他のプログレ勢とはそもそも成功の度合いが桁違いである。とは言え、彼らは最初からプログレバンドとしてデビューしたわけではない。デビューアルバムの「夜明けの口笛吹き(The Piper at the Gates of Dawn)」は、60年代後半のリリースに相応しいサイケデリックな仕上がりである。シド・バレットを中心としたこのアルバムはThe Beatlesがノックアウトされたというだけあって、60年代後半の遊園地に迷い込んだようなトリップ感の強いアルバムに仕上がっている。
Saucerful of Secrets

Saucerful of Secrets

シド・バレットが様々な問題から脱退し、「神秘(A Sauserful of Secrets)」が作成される。Let There Be More Lightの少し不気味さを感じる作りこまれた音像には、後のPink Floydの片鱗が伺えるが、基本的には前作の影響を抜け切れず、サイケデリックな雰囲気が漂っている。唯一、10分を超えるタイトル曲、A Saucerful Of Secretsの物々しい雰囲気の中にのみ、後のPink Floydらしさが姿を現す。ただし、曲としては荒削りで、10分という長い時間を持て余しているように感じる。その証拠に続くSee-Sawのメロディアスな浮遊感の方が安心して聞けてしまう。
Ummagumma  (Remastered Discovery Edition) (2cd)

Ummagumma (Remastered Discovery Edition) (2cd)

映画用のコンパクトな仕上がりであるサントラ、「モア(More)」を経てリリースされたのが「ウマグマ(Ummagumma)」で、Pink Floydが本当の姿を現す(すいません、Moreはあまり聞いてないので感想を残せません。いつか機会があれば。)。ライブアルバムとスタジオアルバムとの二枚組である本作。ライブアルバムでは実にロックバンドらしい力強い演奏を聞かせてくれる。個人的には2ndのSet the Controls for the Heart of the Sunでの儀式音楽風の長尺の演奏が好きだ。スタジオ版ではやや退屈な感もあったA Saucerful Of Secretsもメリハリの効いた演奏のおかげで10分をだれることなく乗り切れる。
スタジオアルバムについては、メンバー4人それぞれの曲をフィーチャーした作りで、この時点ではロジャー・ウォーターズ一頭ではなかったことがよくわかる。全体的にクラシカルながらも暗い雰囲気を漂わせるのが、リチャード・ライトによるSysyphus。どちらかと言えば、今のゲーム音楽のような構成であり、音だけでは絵を想像するのが厳しい。ロジャー・ウォーターズは、The Beatlesの影響をのぞかせるGrantchester Meadowsを提供したかと思えば、ほとんどSEだらけのSeveral Species Of Small Furry Animals Gathered Together in A Cave And Grooving With A Pictという難解な曲を提供している。ウォーターズの難解さを解きほぐすようなデイビッド・ギルモアによるThe Narrow Wayがありがたい。涼やかなアコギと美しいメロディに救われる。ニック・メイソンによるThe Grand Vizier's Garden Partyは美しいEntranceとExitに挟まれて、EntertainmentのPink Floydらしい音の空間が炸裂する。
Atom Heart Mother  (Remastered Discovery Edition)

Atom Heart Mother (Remastered Discovery Edition)

「原子心母(Atom Heart Mother)」はその邦題とジャケット、そしてプログレの金字塔として名を馳せる一枚である。アナログA面を丸ごと1曲にしてしまった表題曲の出来に負うところが大きい。ストリングスやコーラス隊を使って、宇宙的な広がりすら感じる仕上がりになっている。後のウォーターズ主導のアルバムとはまるで異なる神秘的な出来である。とはいえ、この域に来ると、インパクトは十分だが、もはやPink Floydである必要性も薄い(先の話ではないが、ほとんどゲームのラスボス戦のような音楽である)。個人的には、全員のメロディセンスが光るB面の曲の方が好感が持てる。IfとSummer '68、Fat Old Sunの聞きやすいメロディ・アレンジにはThe Beatlesによく似たセンスを感じる(というか、ボーカル含めてポールとジョージの中間を行くような曲である)。そう考えると、Alan's Psychedelic BreakfastもどこかA Day in the Lifeを思わせる嫌みのない出来である。
Meddle  (Remastered Discovery Edition)

Meddle (Remastered Discovery Edition)

続く「おせっかい(Meddle)」は前作を裏返したような作品である。個人的にはPink Floydらしさもあり、聞きやすくもあり、Pink Floyd入門には最適な一枚と思っている。1曲目を飾る「吹けよ風、呼べよ嵐 (One of These Days)」がまず素晴らしい。邦題がなんとも秀逸で、風吹き、嵐が来そうな雰囲気のベースラインが非常に特徴的なかっこいい曲である。プロレスの入場曲として耳にした人も多いことだろう。そこからガツンとくるロックではなく、メロウな雰囲気のA Pillow of Windsへなだれ込むのが、ウォーターズ流である。その後のAメロは、西部風の軽やかな雰囲気が漂うコンパクトな楽曲が続く。満を持して、B面で登場するのが、Echoesである。プログレの傑作と誉れ高いのは次作なのだが、曲としての完成度はEchoesが一番に感じる。23分という長い時間にPink Floyd、いやプログレが持ち合わせる幻想性、緊張感のある音作りといった全てが詰め込まれている。途中のやや退屈気味な時間も、最後のドラマチックな構成のための布石である。「原子心母(Atom Heart Mother)」とは異なり、あくまでも歌ものであり、Pink Floyd単独の世界であることも評価したい点の一つである。
本当は次の「狂気(Dark Side Of The Moon)」を主軸に据えた記事にしたかったのだけど、長くなりすぎたので、ここでいったん止めます。「狂気(Dark Side Of The Moon)」〜「The Wall」について、それから他バンドについても、ちまちま書いていきたいです。