Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Rock Or Burst

AC/DCを取り巻く最近の環境というのは実によくない。ニュースになっているように、マルコムはもうこのバンドに復帰する見込みはない。それだけでも、バンドとしては大打撃かと思うが、続いてフィルの冗談としか思えないような逮捕のニュースである。2010年代とは思えないようなニュースの連続である。

そんな中でリリースされた、新作Rock Or Burst。最高に充実していた前作Black Iceからおよそ6年。上記のニュースも相まって、期待と不安の両方が大きい作品だったが、バンドのプライベートと作品がまるで無関係であることを感じさせる作品だった。

11曲35分という非常にコンパクトな収録時間だが、余分がないこのバンドにはこれで十分なのだろう。一曲目のRock Or Burstのリフと、ブライアンの鋭いシャウトを聞いただけで、体が縦に動き出すあの感覚が蘇ってくる。デビュー以来変わらぬソリッドさで聞き手を体全体で揺さぶってくれる。

前作で培った程よいポップさも健在で、Rock The Blues Awayはハードなサウンドながらも晴れやかに聴けるパーティーソング風味だ。4曲目までは概ね軽快なロックンロールといった風だが、5曲目のDogs Of Warでは戦車がのたくるような重々しい曲調が聞こえてくる。シリアスな雰囲気に染まらないのは、コーラスワークと鮮やかなギターソロのおかげだろう。アルバムの中でも個人的にはベストなトラックだ。

それにしても、ブライアンのボーカルには驚かされる。これで67歳というのだから恐れ入る。AC/DCが不変性を保っていられるのは、彼のボーカルに負うところも多いと思う。Hard TimesやRock The Houseでコブシの効いたそれでいて恐ろしく甲高い歌いまわしを聞かせたかと思いきや、続くBaptism By Fireではテンポの速いロックを易々と乗りこなす器用さだ。

そんなことを考えているとあっという間に35分が過ぎてしまう。大物バンドの底力というものを久々に感じた熱量のあるアルバムだった。