Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

EPIC DAY

とうとう本日が発売日。雑誌の掲載が増えたり、Yahoo!へ特集ページができたり(意外と長めのインタビューが嬉しい)色々ありますが、まずはアルバムが発売です。実に3年半ぶりのアルバムEPIC DAYが登場。もちろん昨日がフラゲ日なので購入した方も多いと思うし、かく言う僕もその一人でリピートかけまくってます。DVDについてはまたちょっと日を改めて。アルバムについては、興奮醒めぬ前にがつんと書いておきたいと思う。

MONSTERの頃から、アルバムでは色々なジャンルを取り込んだカラフルなものを出すようになってたと思う。アルバムとしては、MOTSTER、ACTION、MAGIC、C'mon、どれもそれぞれのカラーがあるのだけれど、中身は色んなジャンルを詰め込むスタイルで振り幅が凄く広い。それに雨だれぶるーすを皮切りに昭和歌謡っぽい路線を、ロックとうまく融合させた曲が少しずつ幅を利かせるようになってもいた。

EPIC DAYは一旦リセットをかけたアルバムのように聞こえる。曲調はロック、バラード、ポップスと種々取り揃えているけど、アルバムを通して聞くとロックアルバムとして一本筋が通っているように聞こえる。2nd Beatも一切いれず、シンプルに10曲。昭和歌謡めいた路線は一旦捨てたロックアルバムではあるけど、BrotherhoodやELEVENほど尖ってもいない。

アルバムの開幕を司るのはLas Vegas。タイトルに相応しい派手なギターの音と、シャウトに導かれて、これまた派手なブラスの音が曲を飾りたてる。こんな風に書くとSeventh Heavenを思い出してしまうのだけど、個人的にはThe 7th BluesやLOOSEの頃の少し乾いたアレンジが一番近いと思う。曲の隙間を縫って派手に鳴るブラスの音による何とも大仰なサウンドに乗せて、ラスベガスのような生活を夢見ている少し情けない男の歌詞が乗っかるミスマッチが面白い。PVでの初聴時以上に勢いを感じる曲で、ギターソロから最後のサビ、そして「Las Vegas!Yeah, yeah, yeah!!」のコーラスまでがとにかく楽しい。その裏の松本さんの気合の入ったギターソロがどこか懐かしく、にやついてしまう。

2曲目をシングルが飾るのはB'zのアルバムの伝統芸。ということで、アコギに乗せてハードなサウンドが炸裂するシングル、有頂天。アルバムの中ではやっぱりシングルらしいキャッチーなサビが目立ってる一方で、どの曲よりも挑戦的な曲構成であるというのが面白い。シングルからの変更点は特にないけれど、これ以上手を加える余地はないということなのでしょう。

ドラマではアコギから始まっていたと記憶しているのだけど、音源では命名ばりにクラシカルなストリングスのイントロが付け加えられた。思い返してみれば、B'z再始動の最初に出てきたのは、このExit To The Sunだった。ドラマのバックでは分からないのだけど、一番の裏で流れているストリングスのアレンジが素晴らしく美しい(あるいはドラマでの放送版にはなかったのかもしれない)。いわゆるサビで盛り上がっていくような王道的なバラードとは違って、核心同様に物憂げな雰囲気が漂う曲。二番が終わり「どんなに時間がかかってもやり直せると知ってるから」というフレーズが抒情的なギターソロを導いてくるところは、これぞB'zといった感じだ。最後に力強く「I will find a way」という今までにないメロディが出るのも嬉しい驚きだ。受ける印象は違うけど、仄かなる火と似たようなタイプの楽曲かと思う。

もしライブでこのベース音をきいたら間違いなく、ねがいだと思う。そんなベースのリフが導くシャッフルナンバー、NO EXCUSE。MAGICにもMayday!という曲があったのだけれど、これは完全に同系列の楽曲。せきたてるようなバンドの演奏に対して、少しじらすようなAメロから、リズムに乗るサビへの移り変わりが気持ちいい。ギターソロ前に、メインのリフを殊更に強調する手法はどことなくRISKYっぽい(Mayday!も元をたどればHOT FASHIONあたりに落ち着くから不思議ではない)。言い訳無用というタイトル通りに、殊更に意地を張ったサビとは真逆の稲葉さんの「もう一回やらせてくださいよ」という締まらないセリフが入ることで、曲の愉快さが一層増している。

ドラムのタイトなリズムから始まるのがライブを意識したように感じるアマリニモ。ややハードなイントロとは裏腹にピアノ交じりの穏やかな歌が流れてくる。CMとサビ頭の歌詞のせいで、どことなく旅にでも出るような楽曲を想像していたのだけれど、実は夜の街を感傷的に歩く楽曲でした。派手派手しい楽曲が並んだA面の興奮を冷ますわけでもなく、煽るでもない絶妙なポジションの楽曲。ちょっと地味だけれど、「I gotta go」のフレーズをフェイクして歌うところが個人的にはツボ。曲調としてはDAREKAによく似てるんだけど、明るいようで夜のひんやりとした空気を感じさせるのはHiも思い出す。

アルバムの制作前はDEEP PURPLEなんかを良く聞いていたということだけれど、そんな前情報がなくても、イントロを聞いた瞬間に笑い出してしまいそうなくらいに、まんまBURNのリフが流れてくる、タイトル曲であるEPIC DAY。稲葉さんの冒頭のシャウトもかの名曲に負けないように力強いもの。手が届きそうでなかなか届かない夢の実現の日(EPIC DAY)を待ち焦がれるという歌詞なんだけど、曲の勢いが凄すぎて歌詞の中身が中々入ってこないという珍しい対応のタイトルナンバー。シャウト寸前の「100年に1度の恋が実るようなEPIC DAY」に導かれて花開くギターソロが秀逸。リッチー・ブラックモアの様式美をそのままなぞって、ギターソロ、オルガンソロときて、二つでハモってサビに戻ってくるという王道的な形式。ここまで松本さんがギターを弾き倒すのはちょっと記憶にない。THE GAMBLER、Out of Controlあたりのガンガン弾いてた頃のソロを思い出させてくれる出来。曲終わりの火を噴きそうなシェーンのドラミングにも注目。是非ライブで聞きたい一曲。

2年前にはすでに録られていたというバラードClassmate。零れ落ちるようなギターの音が松本さんのソロっぽいのだけど、どことなくそれぞれのソロの雰囲気を足したような雰囲気の曲で、それが逆に新鮮に仕上がってる。ピアノとストリングスをバックに学生時代の淡い想いを情感たっぷりに歌い上げていく。サビから入る少し温かみのあるドラミングは、山木さんによるもの。このアルバムで唯一シェーンが担当していない楽曲でもある。二番からはギターもぽろりぽろりと入ってくるのだけれど、珍しくハモりのコーラス等は最後までなく、それが一層歌詞の寂しさを際立たせる。曲の系統としてはHomeboundが一番近いんだろうけど、ゆったりとした安らぎを与えるHomeboundに対して、Classmateは歌詞のおかげもあって切なさをかきたてるバラードになってる。二番の歌詞が本当に切なくて好きなのだけれど、こんな風に片想いのまま、想いが伝わらないタイプの歌詞は稲葉さんには割と珍しい。

コーヒーというと未成年の「苦いコーヒーを飲みほした後で」なんて歌詞だったり、飲み物は違うけれどBABY MOONの「大人びてるアイスレモンティー」だとか、未発表の稲葉さんのソロ曲cocoaを連想してしまって、なんとなく大人びた渋い楽曲じゃないかと思ってた。そういう意味では一番驚かされたのは、このBlack Coffeeだと思う。クリーントーンのギターのイントロでまずやられたと思う。ばりっばりの90年代テイストの楽曲で、1st〜3rdあたりに入っていましたと言われても信じてしまいそうな雰囲気がある。他の曲に比べると、メロディも分かりやすくキャッチーでサビ後半の畳みかけがとても気持ちいい。ギターソロも曲に合わせて、昔の雰囲気を漂わせるもの。アルバムの中では一番短くて唯一の3分台で、最後は少し長めのバンドの演奏が入るので曲としては極めてコンパクトな作り。異質ではあるけど、是非ともこれも生で聴きたい。ただ、アルバムの中でちょっと異質な奴ってライブで演奏されない傾向が強いのが心配なところ。

MV公開段階でも書いたけれど、初めましてというよりも久しぶりといった感のある、君を気にしない日など。曲としては4年前にできていたということで、この中では古株。そのせいかもしれないけど、新鮮さや懐かしさが溢れるこのアルバムの中では、一番今までのB'zと地続きの曲のように感じる。ストリングスとバンドが一体となった厚めの演奏の中で、ファルセット交じりの稲葉さんの歌声がすとんと入ってくる。Classmateの切なさとは対照的に、意外と熱っぽいラブソングなのだけれど、力いっぱい歌うのではなくファルセットを交えることで、大人びた感じが良く出てる。ここでは、エレキではなく、アコギのシンプルなソロを披露。曲調や歌詞、ギターソロもあいまってちょっとハピネスの面影も感じるかな。

夢見心地の気だるげな演奏ではじまるMan of the Match。少しゆったりした演奏から一気にハードな展開というのは、最近のB'zがすきなやり方で、曲としては黒い青春なんかもこの手法。ハードな展開になだれ込む時のギャップが何とも言えず気持ちいい。この曲も地響きを上げるようなリフが登場して、これでもかと力のこもった稲葉さんのボーカルが炸裂する。安穏とした日々に対する強い苛立ちを見せたかと思えば、何とも呑気な「コレデイイノダ」というバカボンのパパばりのコーラスが登場。ちょっと笑ってしまうのだけど、このコーラスが意外と病みつきになる。そこから導き出されるサビと歌詞が素晴らしく強烈。個人的にサビの強烈さでは有頂天に並ぶし、「押しつぶされるほどの重荷をわたしにください」という歌詞ががつんとくる。最後の最後でとんでもない稲葉節が待っていたといった感じ。イントロに合わせたジャズテイストのギターソロがが登場した(絡みつくようなベースがまたお見事)かと思えば、しっかりロック然としたソロが現れ、再び「コレデイイノダ」とくる。歌詞含めて一番ロックしてるのは実はこの曲なんじゃないかという興奮に包まれていると、再び微睡んでるような歌が登場して、アルバムが幕を閉じる。この後にレコードの針をなぞる音なんかが聞こえてきそうな鮮やかな幕引き。

あっという間の10曲。もう1曲くらい欲しいなと思わせてくれる絶妙な構成。バラードが3曲に対して、全体が10曲なんでバランスが悪くならないかななんて思ってたけど、確かに通してみると非常にロックなアルバムだと思う。曲のバランスやアレンジの方向性は割とRUNに近いものを受ける印象。RUNほどキャッチーというわけでもないのだけれど、アルバムとしての構成はRUNが一番近いと思う。RUNが80年代のアメリカンを意識しているとすれば、EPIC DAYはもう少しタイトな70年代のブリティッシュなイメージ。近年、どちらかと言えば曲全体のバランスと個々の音を重視して、あんまりギターソロを弾き倒すことがなかった松本さんが、今回ガンガン弾いているのもその印象を強くしているのかもしれない。バンドの勢いに引きずられて、稲葉さんのボーカルもかっちりとしたものというよりもライブ感のあるボーカルになってるのも特徴的。

3年半ぶりのアルバム、どんな風に出るのかな、C'monからの流れでいくと少しずつ大人しくなっていくのかななんて思ってたんだけれど、予想を裏切って力強いロックアルバムが来たのがとても嬉しい。そして何よりもこのアルバムをライブで聞くのが楽しみ。これに尽きますね。