Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Burning Bridges

バーニング・ブリッジズ

バーニング・ブリッジズ

BON JOVIから新作が届けられた。リッチー・サンボラ脱退後初めてのアルバムということになるのだけれど、もうアルバムが出せるのかというのが正直な感想だ。リッチー不在のままでアルバムを作るというのは中々に難しいのではと思っていたが、どうやら今回のアルバム、いわゆる新作ではなく、近年の未発表曲をまとめたものらしい。100,000,000 Bon Jovi Fans Can't Be Wrongと同じ位置づけになろうかと思うが、10曲(国内盤は11曲)に絞ったおかげか、一つのアルバムとして聞くのに違和感がないレベルに仕上がっている。
アルバムの中身については見事にリッチーがいないことを浮き彫りにしたようなアルバムになっている。ポジティブなムードが全編に漂っていたWhat About Nowに比べて、少々重苦しいアレンジの曲が目立つ。いつもならば景気の良いロックナンバーが一曲目だが、代わりに民族的なイントロとコーラスが耳を引くミドルナンバー、A Teardrop To The Seaで幕を開ける。散文的な歌詞が印象的で、曲名通り海に沈み込んでいくような楽曲である。
続く本アルバム唯一の新曲であるWe Don't Runはどういうわけか前曲と同じメロディラインのコーラスで曲が始まる。アルバムのリード曲ということもあって、I Amあたりを思い出させるヘビーながらも、サビが印象的な仕上がり。
Saturday Night Gave Me Sunday Morningは唯一リッチーがクレジットされているポップな楽曲だ。これぞBON JOVIという感じのフックのある楽曲で、アルバムに収録されなかったのが不思議なくらいであるが、The Circleのアウトテイクと聞いて納得した。確かにあのアルバムにこの底抜けの明るさは似合わない。
そこからは落ち着いた楽曲が続く。硬めのアコギの音が前に出た牧歌的なWe All Fall Down、ジョンの色がもろに前に出たしっとりとしたピアノバラードBlind Love、メロがほとんど語りになっているWho Would You Die Forといった具合だ。Who Would You Die Forでは熱いギターソロがあるのだが、やはりリッチーに比べると物足りなさを感じる。ただし、この曲のアレンジは非常に凝っている。
Fingerprintsは再びアコギ(ジョン・シャンクスが弾いてるらしい)をメインにしたミドルテンポの楽曲だが、メロディとアレンジのせいかどこか演歌チックに聞こえてくる。
再び「オーオー」というコーラスから始まるLife Is Beautifulで少し明るい雰囲気を取り戻す。I'm Your ManはSaturday Night Gave Me Sunday Morningを除けば一番BON JOVIらしい楽曲で曲の隙間を埋めるリフが非常に印象的なロックナンバーだ。これは他のアルバムに入っていても違和感のない楽曲だと思う。
最後を飾るのはタイトル曲で、ティコのしわがれたカウントから始まるアコースティックな短い楽曲だ。「Sayonara, Adios, auf wiedersehen, farewell」といった具合に色んな言葉で「さよなら」や「おやすみ」が歌われる曲だ。歌詞が少々意味深なのだが、今のところアルバムにかかるインタビュー等が見当たらないので、歌詞の真意は個々人で想像するしかない。
アルバムの出来自体は意外とよい。全体的なトーンは別として、曲調がバラエティに富んでいるし、アレンジも中々に凝っている。ただ、リッチー不在という要素がどうしてもアルバムにありもしない穴を一生懸命探させてしまう。何も知らずに、これが普通にBON JOVIのアルバムとして聞いていたら、意外と何も気づかずに受け入れたのかもしれない。とはいえ、リッチー不在のためにジョンのソロのような落ち着いたトーンにしたのは間違いないと思う。
勤勉なジョンらしく本作とは別に新作はまた来年に発売予定という。リッチー不在のBON JOVIへの評価は、その新作発売まではお預けにせざるを得ない。