Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Rock N' Roll

ロックン・ロール

ロックン・ロール

ご機嫌なロックバンドの新作である。Confessionという7つの大罪をテーマにしたシリアスな前作、途中にF**k EPというミニアルバムを配信してからの本作となる。F**k EPの奔放な作風から予想はついていたけれど、今回はこれぞBuckcherryといった具合の賑やかなアルバムである。
タイトルは直球でRock N' Rollとしているが、その看板に偽りなし。ストレートなロックが10曲にカバー曲が2曲収められている。1曲目のBring It On Backは強力なサビと意外にも丁寧なコーラスがキャッチーさを引き立てる、彼ららしいド直球なロックナンバーだ。
続くTight Pantsはタイトルからも分かるように、これまた彼らが得意とする猥雑なパーティーソングだ。意外にもこれが初めてというブラスの起用が賑やかさに華を添えている。
KISSのようなサビのラインと短いながらもよく暴れているギターソロが映えるポップなWish To Carry On、久々に聞く気がするBuckcherryのもう一つの顔である大らかなバラードであるThe Feeling Never Dies、メロのジョシュの渋めのボーカルに寄り添うギターが印象的なCradleで激しいアルバムの流れを一旦落ち着かせる。
The Madnessは不穏なイントロから始まり、ドラムがアップテンポなリズムを刻みだす。しゃきしゃきと滑舌の良いジョシュのどこか機械的なボーカルが(珍しくがなりたてることなく)続くクールなナンバーだ。
元々はConfessionは七つの大罪と五大元素をテーマにするつもりだったらしい。その際に書かれて、最終的には外されたのがWoodとのこと。イントロを飾る「Wood」のコーラスが、歌詞の猥雑とは相反する涼やかさで、爽やかな曲調を演出する。
ぽろぽろと零れるようなギターのイントロから、ベース音が強めなバンドの演奏で始まるRain's Falling。これはBuckcherry流のジャズともブルースとも取れるムーディーなナンバーだ。気だるげな雰囲気が心地よい一曲である。
お待たせしたと言わんばかりに、攻撃的なリフと気持ちの良いバスドラのリズム、そこにジョシュのシャウトが一発。Sex Appealという曲名から分かるが、Buckcherryお得意のロックナンバーが再び炸裂する。二番から絡みついてくるギターの音とむせび泣くようなギターソロが気持ちよいし、そこからの転調もお見事な一曲。
最後まで追求の手を緩めないということでGet With Itという朗らかなロックナンバーが最後を飾る。シンプルではあるが、サビ終わりの「Hey!」の掛け声が、思わず拳を振り上げたくなるような絶妙な間合いで入ってくる。本編はここまで。40分に満たない潔いロックアルバムである。
おまけとして分かりやすいカバーが2曲。1曲はSammy Hagarのカバーで、Rick Springfieldがカバーしたことでも知られているI've Done Everything For You。ジョシュの声質にはちょっとあってないような気もするのだけれど、普段よりもぐっと抑えて歌っているジョシュもまた面白い。もう1曲はAerosmithからMama Kinをカバー。こちらは困ったくらいに彼らによくあっている。Aerosmithのオリジナルは少しR&B風のスウィングした感があるのだが、Buckcherryのバージョンはまさにロックンロールである(Guns N' Rosesのバージョンのようにテンポが上がっていない分、原曲に近い)。
シリアスな雰囲気だったConfessionや徹頭徹尾パーティー路線だったAll Night Longに比べるとバランス感のある聞きやすい出来になっているのではないかと思う。さすがにFifteenと同じとまではいかないかもしれないが、タイトルに恥じない素晴らしいロックアルバムである。