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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

A Night At The Odeon

オデオン座の夜~ハマースミス1975 スーパー・デラックスBOX(初回限定盤)

オデオン座の夜~ハマースミス1975 スーパー・デラックスBOX(初回限定盤)

The Beatlesに次ぐ英国の国民的ロックバンド。そう評して差し支えないバンド、QueenからLive At The Rainbow '74に次ぐ、初期の貴重なライブアルバムがつい先日届けられた。昨日はフレディ・マーキュリーの命日なのだが、これにあわせた発売であるのは間違いないだろう。

A Night At The Odeonと名付けられたこのライブアルバムだが、いささか誤解を招きやすいタイトルである。一見すると、A Night At The Operaのライブアルバムのように見えるが、実際には前作であるSheer Heart Attackツアーの延長戦である。実際にA Night At The Operaからの選曲はほとんどなく、先行シングルとして英国1位を突っ走ってたBohemian Rhapsodyが演奏されているのみである。

曲目ベースでみれば、Bohemian Rhapsody以外はどれもLive At The Rainbow '74に収録されたものばかりである。後には中間のオペラパートで堂々とテープを流すBohemian Rhapsodyがこの頃はまだメドレーの一部として分割された演奏されたという以外には珍しさを感じない内容である。

しかしながら、Live At The Rainbow '74を購入した人ならわかると思うが、バンドとしての風格がまるで違うものになっている。どちらかと言えばアングラめいた妖しげな雰囲気を持っていたバンドが積み重ねてきたヒットを糧に堂々とした演奏を聞かせてくれる。

フレディの喉の仕上がりも上々なのは、CDに勝るとも劣らぬWhite QueenBohemian Rhapsodyの朗々とした歌声を聞けば分かるかと思う。BBCによって生中継された公演ということもあってか、ブライアン、ロジャーによる気合も十分。淡々とした演奏を奏でるジョンは相変わらずといったところ。

Live At The Rainbow '74と同じ曲目ながらも違う表情を与えてくれるのは、フレディによるピアノだ。個人的にThe March Of The Black Queenは短いながらも素晴らしくスリリングなアレンジで両公演でメドレーに組み込まれているのだが、軽やかなピアノの音を響かせる74年の公演に対して、75年は曲本来の暗く沈んだピアノが印象的である。

Live At The Rainbow '74にはない曲目として挙げられるのが、Brighton Rock。後には歌部分が消えて、完全にギターソロの代名詞となってしまった曲だが、ここではきちんと歌部分からのギターソロという形式をとっている。Live Killersではやや物足りなかった感のある演奏だったが、若いだけあって勢いのある演奏である。ブライアンのギターソロも後年はエコーを多用した即興的な演奏が目立つが、この当時は中間部に事前に作りこんだと思わしき、メロディアスなパートが登場するので聞くものを飽きさせない(後年のはファンの自分でも聞いていて時々ダレる)。

聞いているだけでも楽しいこれらの楽曲だが、ありがたいことに映像がリマスタリングして付属している。さすがに先日のThe Beatlesと同じレベルでの映像のリマスタリングとはいかないが(かけている時間も費用も桁違いと思われる)、ライブ映像として見る分には申し分のないレベルでクリアな映像を見ることができる。

フレディの毛穴まで見たいという方には不満かもしれないが(そんな方がいらっしゃればの話だが)、気取ったMCを挟みつつ、時にピアノ、時にマイクスタンドを持ってステージを所狭しと動き回る彼の姿はきっちりと収められている。オペラ座というイメージをそのまま引きずり出したかのような劇場型の会場で、当時としては最先端の演出であるスモークや火薬がバンドの演奏を盛り上げる様子は一見の価値があると思う。ちなみに、アンコールでは有名な着物姿も登場する(脱ぐとシャツと短パンという後の誰かを思わせる服装だが)。

BBCのスタッフがカメラをダブルアンコールの際には切ってしまったため、最後の2曲は映像がないが、代わりに日本のファンには嬉しい75年の初来日となる、武道館公演の映像を3曲収めている。こちらは元の映像があまりよくないのだろう。同じ年のライブとは思えないほどに音も映像も荒い。カメラアングルも今一つだが、非英語圏とは思えないくらいに凄まじい歓声に負けぬように、ライブを行うバンドの貴重な姿が見られる。In the Lap of the Gods Revisitedに至っては、隠し撮りなんじゃないかというくらいの酷い映像だが、曲前のフレディの美しいピアノソロだけでも価値はあると思う。

また、Lonnking Back To Odeonと題した短いドキュメンタリーを付属している。オデオン公演の司会を務めたボブ・ハリスを司会に迎えて、ブライアンとロジャーが当時を振り返るという内容だ。アルバムが売れていてもまだ当時のメンバーはバスで通勤していたなどというエピソードも飛び出した。よく知られている初来日の際にThe Beatles並の歓迎を受けた際の空港の様子を収めているのも嬉しいし、音声のみながらリハーサルの様子もうかがうことができる。余り期待はしていなかったが、曲の細かい部分やフレディの思い出にも触れる良いインタビューだったかと思う。

個人的には中々に良いライブアルバムだが、Blu-ray付のものだと5000円を超過するため、簡単には手が出ないのが残念なところ。先のThe Beatlesや、LED ZEPPELINの再結成ライブのボリューム、価格と比べると割高な印象を受けるのは否めない(その2バンドと比べられても困るのかもしれないが)。

お金の話はさておき、本当に残念なのはジャケットである。これ以上なく安っぽいジャケットである。ブートレッグだってもう少しまともなジャケットに仕上げたのではないかと思う。紫を基調としたLive At The Rainbow '74に比べると何ともセンスのないジャケットである。