Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

CHUBBY GROOVE

色々とありまして、更新が長いこと滞っておりました。そうこうしている内に、INABA/SALASは全国ツアーを終えてしまいました。残念ながら参加することはかないませんでしたが、来週の25日にはWOWOWでライブ映像が放送されます。いけなかった人は、私含め要チェックですね。
さて、遅くなりましたが、CHUBBY GROOVEです。サラスのファンクかつフリーなノリに稲葉さんが精一杯ついていったアルバムです。もっとロック色が強くなるかなと思いましたが、全体を通してみるとモダンでポップなノリが強調されています。欲を言うと中盤にもう少しだけ変化のあるノリがほしかったところでしょうか。
至る所で言われているように稲葉さんの歌詞は日本語だけど、日本語でないような不思議な響きになっている楽曲が多いです。あと、音の抜けが素晴らしくいいですね。ヘッドフォンで大きな音で聴くと色々な音が、色々な方向から聞こえてきてそれだけでも楽しいアルバムです。

CHUBBY GROOVE(初回限定盤)(DVD付)

CHUBBY GROOVE(初回限定盤)(DVD付)

  • SAYONARA RIVER

INABA/SALASというプロジェクトの始まりを告げた1曲。いきなりこの楽曲のPVが公開された時は驚きましたが、既に耳馴染みが深くなりつつあります。派手な構成ではありませんが、立体的なミックスの中を行き来するシンセ、音に溶けてしまっているようなボーカルと、CHUBBY GROOVEというアルバムを象徴するような曲です。ただの掛け声だと思っていた「Yu〜hu〜」という声が、間奏部分では「雄風」という単語で表記されていたのが驚きです。「勢いよく吹く気持ちのよい風」という意味だそうです。川の流れを困難の象徴に例えると、非常に前向きな歌詞ですが、三途の川というような深読みをすると一転してブラックな歌詞になります。

アルバムの中では一番分かりやすいタイプのロックナンバーです。PVでは街中で稲葉さんが歌い、サラスがギターを弾くというシンプルな構成ですが、合間に出てくるパフォーマーが中々にシュールで目を引きます(ちなみに楽器をもった子供はサラスの子供とその友人だとか)。Cメロの展開の仕方等、割と稲葉さんのソロらしいロックかなと思ってたのですが、曲自体はサラスの方でほとんど作ってたものとのこと。この曲に限らず、クレジットこそ作詞作曲が二人の共作となってますが、基本は作詞:稲葉、作曲:サラスの体制のようです。

  • WABISABI

日本人特有の侘寂を指したタイトル・歌詞、と見せかけて、実は身から出た錆について詫びるしかないという歌詞。世間で良く起きる炎上等について、皮肉っている歌詞ですね。SAYONARA RIVERをさらにストイックに煮詰めたような楽曲です。スクエアなサウンドの中でボーカルとギターがうねるのが特徴で、サラスがラジオでも語っていましたがQueenのDragon Attack(The Game収録)を彷彿とさせるアレンジです。インタビューにて稲葉さんも発言してますが、ソロもしくはB'zなら2番でがっと派手な展開になるところですが、頭から終りまでタイトな空気を保ち続けます。中間のシャウトから炸裂するCメロが一番派手な部分ですね。

  • AISHI-AISARE

サラス曰く筋肉質なポップス。年末にはCMでかかり、発売週にはアルバムのリード曲としてミュージックステーションでも披露されました。OVERDRIVE同様に詰込み気味のAメロから、すっとキャッチーなサビが下りてきます。CDで聞くと耳に馴染みやすい曲ですが、歌うのは簡単ではないようで、ミュージックステーションでもメロディをつかむのに、時間を要しているように感じました(序盤の音響が悪そうな印象も受けましたが)。2番が終わった後のギターソロ突入と思いきや、突然現れる囁き声に近い低音パートが印象的ですが、個人的には最後の「春の陽のように優しい 夏の雨のように優しい 秋の予感のように優しい」という畳みかけが印象的です。頭の音だけ高いコーラスが入って、爽やかな風が吹きますね。

  • シラセ

個人的にはB'zの仄かなる火を思い出しました。曲のゆったりとした雰囲気、伸びやかなサビの出だしからファルセットへ切り替えていったりといった部分が重なるのかもしれません。稲葉さん自身は各種インタビューで歌うのが一番難しかったと発言してますが、冒頭の歌いだしを聞けば、それも納得です。言葉をそっと置いていくような歌い方で、いつも以上に丁寧に歌いこんでいるのが伝わってきます(泣きながらの歌い方に近いですよね)。「なぜだろう きっと」でクライマックスまで盛り上がった感情を、ほろほろと零れおちるようなギターとバーナード・ファウラーによる落ち着いたコーラスが冷ましていきます。

  • ERROR MESSAGE

小気味よいダンサンブルなイントロから、ノリノリの楽曲を想像してしまいますが、中身は意外とメロディアス。歌詞の内容としてはSIGNALやMAGICに通じるものがありますね。時間が経つにつれて薄れていく愛情に対して、本当に大事なのは「花のように単純な願いなんですよ」と訴えかける楽曲。歌詞だけ見てるとバラードっぽいのですが。イントロからずっと跳ねてるベースラインがいい味出してる一曲。

  • NISHI-HIGASHI

「Hey, Koshi」「Yeah」という二人の会話(小芝居)から始まる、AISHI-AISAREと並ぶポップな一曲。WABISABIでQueenのDragon Attack(The Game収録)を引き合いに出しましたが、同じくQueenのRain Must Fall(The Miracle収録)を思い出しました。イントロ前のカラフルなベースラインがいかにもそれっぽいのですが、それを含めてどちらかというとマイケル・ジャクソン風と言ってもよいのかもしれません。タイトル通り、歌詞については、西へ東へと駆けずり回った一連のレコーディングとその新鮮さを歌っています。

  • 苦悩の果てのそれも答えのひとつ

特にタイアップがあるわけでもありませんが、事前に一番が公開されていた一曲。ハードなイメージのイントロですが、良い意味で気の抜けたコーラスが南風のように吹きぬけます。日本語の長めのタイトルなので、気張った一曲なのかと思いきや、非常にコンパクトな一曲になっております。稲葉さん得意の皮肉が交じった自己否定と、それさえも肯定する前向きさが混在した一曲です。サラスのシンプルなギターソロ含めて、非常にB'zっぽさが出てる一曲。

  • MARIE

露骨にSMチックな歌詞がを引く一曲ですが、実はサーフィンの波を待つ感覚を女性にたとえた面白い一曲。それを聞いてから歌詞を読み直すと、なるほどなぁと思えるから不思議ですね。歌詞の派手さに比べると曲自体は非常にシンプルなロックンロールといった感じで、CDよりもライブでの力強さが映えそうな一曲。マット・シェロッドによるバシバシとしばくような音のドラミングが素晴らしい。間奏での無国籍風な会話もいいですね。フランス語らしいですが。

  • BLINK

パワーバラードですが、Aメロでは稲葉さんがしつこく聞こえないように、気を遣って歌っているのがうかがえます。その分Bメロからの伸びやかなメロディーが力強く映えます。赤い灯の点滅は、信号機のモチーフだと思いますが、最近の稲葉さんには珍しく疲れ切った退廃的な歌詞です。「私だけのストーリー」という字面だけ見ると、何かとても冒険的なものを感じますが、歌詞全体を通すと、誰も助けてくれない、一人きりのといったかっこ書きがつきそうなくらい、後ろ向きな感じです。

  • MY HEART YOUR HEART

心臓の音から始まるBLINKとはまた毛色の違ったバラード。サラスはこの楽曲を子守唄と言っていますが、なるほどと思わせる仕上がり。個人的にはLittle Flowerと同じ空気の楽曲ですね。心臓の音とシンセ・ストリングスの音の絡みがうまい具合にマッチして、静謐さと壮大さを表現してます。歌詞は非常にぼんやりとしているのですが、心臓の音を互いに聞けるくらいそばに大事な人がいることは伝わってきます。

  • TROPHY

ガチャガチャと騒がしい声から始まって、叫び声やら掛け声が入り混じり、ネイティブ・アメリカン風の歌声が聞こえ始めます。この時点で楽しい一曲なのは確定ですが、曲が始まると更にボリュームの大きいコーラスに、気持ちよき叩かれたパーカッションの音が入り混じり、賑やかさを増します。レコーディングやPV撮影の風景をモノクロに処理して編集したMVが公開されていますが、個人的にはこのMVが一番好きですね。このアルバムがいかに楽しく、でも手間をかけて作られたかが分かる映像だと思います。ワイルドなようでいて、実は結構ポップな楽曲です。