Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Electric Island, Acoustic Sea

Electric Island, Acoustic Seaという素敵なタイトルを持つ本作は、TAKE YOUR PICK以来となる松本さんのコラボ作品です。TAKE YOUR PICKはずいぶん最近な気がしますが、もう7年も前の作品なんですね。時間が過ぎるのは早いものです。enigmaのような例外を除けば、B'zを離れるとソロであれ、コラボであれ、ジャズっぽいアレンジが目立つ松本さんですが、今作はジャズとはまた違う爽やかな雰囲気の漂うアルバムとなりました。
主にはダニエル・ホーによるアレンジが大きいのだと思います。アコギやピアノ、それに他のミュージシャンを起用しての琴やチェロといった様々な音が心地よく混ざり合います。

Electric Island, Acoustic Sea  [CD ]

Electric Island, Acoustic Sea [CD ]

  • Soaring on Dreams

波しぶきの音に、渋いギターの音が重なり夕陽のような情景を瞬間で作り上げます。そこに思った以上に激しく叩きつけるドラムとリフが加わり、一気に青空を駆け抜けるような大きなメロディーを松本さんが奏でます。タイトルの通りですね。非常に大きくキャッチーなメロディーはいかにも松本さんらしいと感じたのですが、実はダニエルによる作曲。意外と情熱的に弾かれる松本さんのギターを縫うように鳴るピアノの音色が非常に涼やかです。

  • Fujiyama Highway

一転して松本さん作曲によるアップテンポな楽曲です。頭のご機嫌なギターから、松本さんらしさが伝わってきますが、この曲ではダニエルの三味線ウクレレとの掛け合いです。太いギターの音を翻弄するように三味線ウクレレの音が自由に響きます。ギターの音が富士山とするなら、三味線ウクレレは宙を駆ける鷹でしょうか。そこに色鮮やかな琴の音も加わり、音楽ながら「絵になる」という表現がぴったりの楽曲です。

  • Magokoro(True Heart)

ウェットなアレンジのバラードに泣き続けるギターの音、これぞ松本節!と思いきや、この曲もダニエルによる作曲です。長いファン暦なんてちっとも当てにならないものですね。enigmaで言えばStep to Heavenにあたるシリアスなバラードです。松本さんのギターも素敵ですが、チェロの美しい響きに耳を奪われる楽曲です。チェロのイメージはどちらかというと稲葉さんのソロなのですが、松本さんのギターの音にもよくあいます。B'zでも是非。

  • Infinite Escapade

軽やかなピアノに導かれて始まる楽曲。ロックでもないし、ポップすぎもしないこのノリは松本さんでは出てこないものです。ピアノからギター、ギターから琴といった具合に楽器をリレーしていくのが面白いですね。琴の音というと少し大仰で、和を前面に出すものかなと思ってましたが、このアルバムではむしろ軽やかさを強調する楽器になってます。シンプルな曲に聞こえますが、中盤でピアノがリードを取って少しメロディーを崩す部分だったり、ギター・琴・ピアノ全体が零れ落ちるような後半の構成だったりと聞いてて飽きさせないつくりになってます。

  • Faithfully

Journeyによるバラードのカバーで、ダニエルがとても素敵なボーカルを聞かせます。Journeyといえば、Open Armsがぶっちぎりで有名ですが、この曲はOpen Armsの成功を受けて作られた美しくも、スティーヴ・ペリーのよい意味でしつこい声が生える一曲です。ダニエルのボーカルは、そのしつっこさを取っ払って、大人な雰囲気を醸しています。彼の手によるアコギもその雰囲気を盛り上げます。松本さんのギターは一番こそ大人しくしていますが、徐々に存在感を増していき、最後は原曲もかくやと言わんばかりに弾き倒してます。選曲の理由は松本さんにぴったりの楽曲だからとのこと。

  • Sunny Tuesday

個人的にお気に入りの一曲です。フックの聴いた落ち着いたメロディーがとても素敵です。過去作で言えばENGAGEDの雰囲気に近いでしょうか。ここからは松本さんの作曲が続きます。曲の雰囲気を汲み取った、ドラミングも粋で聞いててとてもほっとします。タイトルの通り、晴れた日の穏やかな午後を思わせる雰囲気で、Soaring on Dreamsとはまた別の形で、アルバムの象徴となっている曲かなと思います。

  • Wander Blues

複雑なアコギから始まるロックナンバー。アコギだけならば、どこか和の香りがするメロディーも、エレキが加わればとたんにハードなロックへと変わります。次のAdrenaline UP!もそうですが結構ハードなはずなのに、どこか上品さを感じるのはエレキの合間を巧みに埋めていくダニエルの楽器の妙でしょう。逆を言うと、ダニエルの楽器がいなくなるラストの部分なんかはもろにB'zの音作りですよね。

  • Adrenaline UP!

これまた和を強く感じさせる長めの琴の音から始まりますが、始まってしまえば前の曲以上にハードな楽曲が展開します。これまでの決定的に異なるのは琴の音が終始、ギターの横でシャラシャラと鳴り続けていることです。ピアノとは違うアクセントをつけるために琴や三味線といった楽器を使っている節がありますね。後半のギターの裏で鳴ってる琴の音は普通ならピアノでとるリズムだと思うのですが、ピアノとはちょっと違う硬さがあります。中盤のベースを導火線にして、ギターやら太鼓やらシンバルやらがにぎやかに加わってくるパートが、とても楽しいです。

  • Omotesando

松本さんによる地名シリーズです。六本木から表参道と、非常にお洒落な町並みが続きます。系統としてはSunny Tuesdayと同じなのですが、もう少しセピア色で情感がこもっているように聞こえます。ONE FOR THE ROAD、もといThe Momentsと同じく少ししんみりとした感傷に浸ってるように聞こえるのは中間のエレピのせいでしょうか。エレピやアコギを弾いてはいるのですが、ダニエルの印象がやや薄い楽曲。アレンジのメインが寺地さんのせいかもしれませんね。

  • Island of peace

ここからはセルフカバーが続きます。まずは松本さんのNew Horizonからのセルフカバー。もともとハワイをイメージした楽曲を、ハワイ出身のダニエルがアレンジするという面白い試み。松本さんのギター自体はNew Horizonのままらしいので、一緒に流して聞き比べても面白いかもしれません。元々はハワイのゆったりとした日差しのイメージが強い曲でしたが、ダニエルの音が水の存在をかき立てますね。

  • Rain

New Horizonからのセルフカバーをもう一曲。松本さんのギター、バリーのベースはそのままの他をすべてダニエルがやり直した一曲。松本さんは原曲をいつもの通りだけど、このアレンジでまた変わったと絶賛。序盤は原曲と大きく変わらない印象ですが、徐々に原曲とは違うRainが見えてきます。原曲は一粒が重たい雨が降り続けている印象でしたが、ダニエルのアレンジは雨雲からうっすらと太陽が見え隠れするようなアレンジです。特にハイライトとなる中盤のアレンジが秀逸で、琴を軸に様々な音が混じりあい、大小の雨粒が零れ落ちる風景を描き出しています。

これはダニエルのソロから一曲。原曲は残念ながら聞いたことがないのですが、松本さんとダニエルの二人だけで弾くという楽曲です。松本さんがエレキ、ダニエルがアコギとアルバムタイトルどおりの構成が粋です。ギターのみの構成ですが、不思議と単調なことはなく、むしろ前曲のRainよりもカラフルです。ダニエルのアコギの上手さと、松本さんの落ち着いたトーンが調和している証拠ですね。