【Amazon.co.jp限定】NEW LOVE (初回生産限定盤) (CD+オリジナルTシャツ) (特典: オリジナルクリアチケットホルダー)
- アーティスト: B'z
- 出版社/メーカー: バーミリオンレコード
- 発売日: 2019/05/29
- メディア: CD
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B'zとしては1年半ぶりのニューアルバム、「NEW LOVE」が先日リリースとなりました。B'zのフルアルバムとしては初めてのシングル曲の収録がなく、「MAGIC」以来続いた映像特典等もなく、今のB'zの音楽をとにかく聞いてほしいという気持ちがこもったアルバムです。
通して聞けばわかりますが、タイアップ曲として既に音源が出ていた3曲、「兵、走る」「マジェスティック」「WOLF」が形は違えど、従来のB'zらしいキャッチーさを持っているのに対して、その他の曲はとにかくハードな仕上がり。
「EPIC DAY」「DINOSAUR」で見られた70年代のハードロックへの回帰がさらに強まっています。過去2作はそれでもメロディや構成において、従来のB'zスタイル、いわば歌謡曲的スタイルを踏襲する曲が多かったのに対して、今作はそういったセオリーのようなものから解き放たれているという印象です。
ただし、「The 7th Blues」「Brotherhood」「ELEVEN」のように積極的にこれまでのスタイルを壊しているわけではなく、「ACTION」のように悩みぬいてたどり着いた結果というわけでもなく、これまでの流れに沿ってより自由に表現した結果のように思えます。ハードなんだけれども、サウンド的には意外と開放感があるというのが正直な感想です。一方で各種インタビューでも語っている通り、歌詞については昨年のPleasureツアーでの不調が影響しているのか、テンションのわりに意外と暗いことを語っているものが多いですね。
「マイニューラブ」タイトルナンバーかと思いきや、特にアルバムタイトルとの深い関わりはないと稲葉さんは語っています。一曲目にしては珍しくラフな印象の楽曲で、リズム重視のパーカッションのきいたサウンドは「声明」を彷彿とさせます。「声明」の歌詞が自分の内側に向けられており、サウンドとしても非常に引き締まっていたのに対して、「マイニューラブ」は歌詞にもある通り「目線変えて」「新しい」ものを探しに行こうという緩めの楽曲です。サビの歌詞は今作のB'zの意気込みにも読み替えられるな、と個人的には思っています。強いサビメロや特別にヘビーなリフがあったりするわけではないのですが、バンドの演奏で十分ハードに聞かせられるというのは、長年のキャリアがあってこそでしょうか。
「兵、走る」B'zにはスポーツが良く似合うということで、「ultra soul」をはじめとした色々なスポーツ関連のタイアップ曲があります。そういった21世紀のB'zの王道スタイルをこれでもかと言わんばかりに詰め込んだ楽曲かと思います(タイトルは極めて斬新ですが)。CM用にはギターのアーミングで始まっていたイントロが、アルバム収録にあたり、ギターの音がポロポロと零れて哀愁漂わせるイントロに変更。続く「エイエイエイオー」のコーラスの雄々しさは「RED」もかくやと言わんばかりです。サビの「ゴールはここじゃない」という歌詞が示す通り、前の曲のラフさとは打って変わって現状に決して満足しない強い意志を感じます。HINOTORIのドキュメント映像にも出ていましたが、この曲だけはシェーンとバリーによる演奏となっております。「兵、走る」ではなく、「マイニューラブ」を1曲目に据えたのが面白いですよね。普通だったら逆になりそうですが。
「WOLF」は頭からなるブラスがとにかく印象的なナンバーです。「Las Vegas」「Mayday!」「Seventh Heaven」といったブラスが印象的なナンバーは沢山思いつきますが、個人的には「ねがい」のシングルバージョンを思い出しました。「ねがい」もそうですが、カッティングに徹している松本さんのギターが全体的にお洒落な印象を醸し出しています。特に二番終わりの薄いコーラス混じりの感想はとてもお洒落です。一方で歌詞は不器用な一匹狼の男をうたっており、硬派な様と弱気な様が交互に描かれます。「俺は荒野」というサビのフレーズがとても不思議で、色々な捉え方ができます。個人的には「俺は(今)荒野(にいるんだ)」という意味で取っています。「VAMPIRE WOMAN」以来の豪快な稲葉さんの叫び声も聞きどころです。ドラマ「SUITS」のタイアップ曲で、劇中ではブルージーなバラードバージョンが披露されましたが、そのバージョンは現時点では未発表です(制作風景はHINOTORIで見ることができます)。
「デウス」前の曲から間髪入れずに、重量級のイントロが鳴り響きます。スズキ「エスクード」のCMソングとして聞いた時には「Blue Sunshine」のような爽やかな夏イメージの楽曲だろうなと予想していたのですが、頭から裏切る展開です。この曲では特にブライアン・ティッシーのドラムが暴れまわっており、大砲でも鳴らしているかのようなドラムが印象的です。歌詞を読むと青い空の下を疾走する車が思い浮かびますが、タイトルのとおりテーマは「復活」の方にありそうです。アルバムにはいくつか稲葉さんの昨年の不調が影響していそうな歌詞が見受けられますが、この曲も「誰でももう一度走り出せる」といった具合に昨年の不調からの「復活」を意識したフレーズがあります。途中には稲葉さんによるブルースハープのソロ、低めの合唱パートがあり、意外と盛りだくさんの楽曲です。個人的にはサビの裏で鳴ってる木琴のような優しい音がツボです。合唱パートと最後に稲葉さんが「もっともっともっと!」と叫んでますが、案外「もっともっともっと!」というシンプルな言葉が一番この曲で伝えたいことなのかもしれません。
「マジェスティック」ポッキーのCMソングではありますが、昨年の秋からポッキーの一連の動画のバックでしっかり使っていただいたからでしょうか、何だかドラマの主題歌のような印象を受けます。応募特典がポッキーだったり、ポッキー側でもアルバムのCM動画を作成したり、CMの声が宮沢りえさんだったりと良い意味でのタイアップができているなという印象です。曲としては、「Classmate」を始めとした非常に落ち着いたトーンのバラードナンバー。気持ちをゆっくりにさせるギターの音から始まり、語り掛けるような稲葉さんの歌詞が優しく絡み合います。「マジェスティック」は「壮大」を意味しますが、あんまり壮大さは感じず、むしろ身近さを感じます。「魔法のスティック」と「マジェ(≒マジック)」「スティック」のごろ合わせに稲葉さんの巧みさを感じますね。「WOLF」と同様にベースには亀田誠治さん、ドラムに玉田豊夢さんが起用されております。こういった楽曲にはやはり日本人勢がよく合いますが、亀田さん、玉田さんとは初共演(これまでならこの手の楽曲のドラムには山木さんという印象ですが)。また昨年のPleasure in Hawaiiにて、アルバム曲中唯一ライブで演奏済の楽曲となります。
「MR. ARMOUR」少し早いですが個人的にはここから後半戦というイメージです。この曲から怒涛のアップダウンを繰り返していきます。リフの出だしがLED ZEPPELINの「CUSTARD PIE」に聞こえますが、中身は全くの別物です。サビに行くにしたがって、曲がスマートになるという少し変わった構成の楽曲で、曲を特徴づけているのは「Hey, Mr.Armour」から始まるBメロのフレーズでしょうか。言葉では説明しづらいのですが、B'zにはなかったタイプのメロディ構成だなと思います。本音や素顔を中々見せようとしない男性に対する女性の率直な物言いが歌詞になっていますが、SNSや匿名掲示板等で物言う人へのメッセージのようにも取れます。最後に「Hey!Hey!」の掛け声が入りますが、ここだけ稲葉さんソロの「マイミライ」っぽいですね。
「Da La Da Da」何とも奇妙なタイトルの楽曲ですが、全体的にはLED ZEPPELINへのオマージュを強く感じさせる楽曲です。なので、同じような系統である「Endless Summer」「MONSTER」といった楽曲も思い出させます。松本さん自身がフレーズを指示したという間奏のストリングスは、もろにLED ZEPPELINの「KASHMIR」です。色々なルーツがB'zの二人にはありますが、LED ZEPPELINは元々強く影響されていて、今作でまたその傾向が顕著になったと思います(ツアータイトルからしてそうですが)。一方でこういった完全に洋楽寄りの楽曲になると、稲葉さんの歌詞や歌は苦戦する傾向にあるようで、EPIC DAYなんかもそうですが割と無理やり歌と歌詞を乗せたように感じられます。良い人でありたいのに中々思うとおりにいかない人間の心情を激しい調子で歌ってますが、サビの最後は「Da La Da Da」という言葉にならぬ叫び声で締めています。最後の「Da La Da Da」と歌うだけのフレーズがありますが、こちらは周囲からの声として聞こえてこない雑音を表しているようにも聞こえます。要は他人の益体もない声なんて「Da La Da Da」という雑音くらいにしか聞こえていないし、自分の声もまた然りということでしょうか。
「恋鴉」松本さんが大好きなジミヘンの「Little Wing」的なイントロで始まる一曲。字面だけ見ると詞的な雰囲気ですが、歌詞も曲も割とパンチのきいた一曲で個人的にはお気に入りの曲です。ギターとボーカルがユニゾンするようなメロがこれまたジミヘンっぽいのですが、メロディ自体がどことなく歌謡曲っぽくもあります。そのせいか「夕暮れの鴉」のフレーズで思いうかべるのは、赤い夕焼けに鴉が飛び立つ日本らしい風景です。「恋の滓」という非常に強い表現が印象的なサビも秀逸です。「恋鴉」は「恋涸らす」のダブルミーニングなのかなと勝手に想像しています。GIMME YOUR LOVEめいたワウから「Let me fly」の声でギターソロへ。最後はエコーのかかったギターのフェードアウトで終わりますが、鴉が鳴きながら空の彼方へ飛び去って行くような絵が思い浮かばないでしょうか。
「Rain & Dream」チリチリとした雑音がかかったようなギターのフェードインから始まるスローテンポの楽曲。AEROSMITHのジョー・ペリーが参加しておりますが、まさにジョー・ペリーが好む渋い楽曲かなと思います。冒頭のギターはジョー・ペリーのものですが、この奇妙な音を覚えておくとどれが彼のフレーズが分かりやすいかもしれません。一緒にスタジオ入りして録音したわけではなく、曲に合わせたフレーズをもらい、一部は切り貼りしたようです。「yokohama」を彷彿とさせる鬱々としたイメージの楽曲です。歌詞もどことなく自虐的な雰囲気が漂いますが、小さな一歩を積み重ねて次につなげようという強い意志も感じます。最後の稲葉さんのシャウトに呼応するように、松本さんとジョー・ペリーによる激しいギターの応酬が繰り広げられるのが、この曲のハイライト。最近は二人ともギターを延々と弾き倒すというようなプレイはしていないと思うのですが、ここでは激しいギターの応酬を聞くことができます。
「俺よカルマを生きろ」冒頭に「もう戻るもんか」というエコーのかかったコーラスが入る小気味の良い一曲。歌舞伎にヒントを得たという歌詞は「ピエロ」に代表される不倫ものの歌詞の美しくないエピローグを見せられているようです。「SICK」もそうですが、シンプルなロックナンバーの割にはキーボードが裏でガンガン鳴ってて、テンポの良さに一役買っています。ちなみに今作のキーボードはお馴染みの小野塚さんではなく、松本さんのソロではお馴染みのジェフ・バブコ。松本さんのソロ作品で際立った演奏をしていた記憶はないのですが、今作では表に裏に大活躍です。シリアスな曲調とは裏腹にやたらキャッチーなギターソロが颯爽と登場しますが、ここはライブでギターをユニゾンさせる様が今から思い浮かびます。
「ゴールデンルーキー」ハードな曲が続くアルバムの中で「マジェスティック」同様に箸休めの役を担っているナンバー。歌詞も次世代への希望を素直に歌い上げています。細かいメロディがたくさん出てきますが、歌詞含め全体的には稲葉さんのソロのような印象を受ける楽曲です。「Singing bird」の作風に近いものを感じますがいかがでしょうか。二番出だしの「ねぇ、ゴールデンルーキー!」と呼びかけるのが妙に頭に残りますが、アルバムの中では結構地味な印象が拭えません。「夢を持たずとも生きていく」というテーマは「Rain & Dream」と同じなのですが、切り口や曲によって印象がまるで違いますね。
「SICK」モヒニのベースが頭で炸裂するロックナンバー。大作というわけではありませんが、冒頭のベースに始まり、終盤はキーボードが大暴れする盛りだくさんの楽曲です。終盤のキーボードソロにあわせて稲葉さんがCDでは珍しく連続シャウトを決めているのも聞きどころです。近年のライブでは「Dinosaur」「FIREBALL」「Man Of The Match」といった楽曲で連続シャウトをする機会は増えていましたが、それにしても珍しいなという印象です。限界寸前といった調子の激しい歌詞とは裏腹にAメロのギターのフレーズやベースに導かれて始まるギターソロはとてもクールです。
「トワニワカク」この曲の第一印象はAC/DCですね。ギターのリフ自体はメタリックなのに、ソリッドさよりも武骨さを感じると言えば伝わるでしょうか。ハイトーンのボーカルの後を引き取るように、雄々しいコーラスが登場するのもAC/DCっぽいですね。アルバムの中で一番ヘビーな楽曲が最後を締めるというのはB'zらしい。歌詞自体は「モテたい」といったフレーズで茶化してはいますが、アルバムの中では一番稲葉さんの昨年の不調に対する思いが記された楽曲だなと感じています。「ユートピア」の歌詞では「出来てたことが出来なくなる でもそれに気づきゃまた始められる」と、老いに対する受入の姿勢のようなものも見て取れたのですが、この曲でははっきりと抵抗する意気込みが表れています。最後の決意表明にも似たフレーズがずしりと響いたところで本アルバムは締めとなります。
冒頭にも記しましたが、とにかくハードなアルバムに仕上がっているという印象です。一番近いアルバムには「THE CIRCLE」が思い浮かびますが、「THE CIRCLE」よりも開放的なサウンドに仕上がっていると思います。何よりも31年目を迎えるにあたって、B'z自身がまた変わろうという強い意志を感じられるのが良いですね。「DINOSAUR」がそれまでのB'zを総括するようなロックだったとすると、今作はまさにその先を見据えた作品となっています。
B'zは今作を引っさげ久々のホール・アリーナツアー「LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-」の真っただ中です。サポートメンバーをも一新した何もかもが「NEW」なこのツアーで、このアルバムがどんな風に演奏されるのでしょうか。