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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

FRIENDS Ⅲ/B'z

25年ぶりとなるFRIENDSシリーズの最新作「FRIENDS Ⅲ」が本日フライングで入手可能となりました。B'z Club-Gymでの限定盤の到着日は本日なのでフライングという言い方が正しいのかは分かりませんが。

先日行われたYouTubeライブを始めとした各所でも話が出ていますが、松本さんがアメリカから帰国した際の隔離期間に作られた曲の方向性がFRIENDSシリーズにマッチしてることから、久しぶりのFRIENDSシリーズの制作となったとのことです。発表は「UNITE」が先でしたが、今年の早い段階で「FRIENDSⅢ」自体は出来上がっていたようです。

「FRIENDS Ⅲ」と並行して通常のアルバム作りもゆっくり進めていたようで、「シーズンエンド」はYTと共にほとんどをアメリカで仕上げたという発言もありました。松本さんが木梨さんのラジオに出演された際に、FRIENDSシリーズのライブはLIVE FRIENDSでお終い、来年はアルバムを引っさげて全国を回る予定という嬉しいお漏らし発言もありました(スタッフがこのお漏らしには慌てたようですが)。

YouTubeライブはアーカイブ化され、LIVE FRIENDSからいくつかの楽曲が短い時間ですが公開されています。事前に募った質問をベースに二人が回答していく映像付きのラジオといった風情で、TVほどには緊張していない二人の会話を楽しめます。未視聴の方は「FRIENDS Ⅲ」とあわせて確認すると良いかもしれません。アーカイブ期限はLIVE FRIENDS配信開始の前日、12月23日までとなっています。


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アルバムのオープニングは「harunohi」というインストゥルメンタル。「ミダレチル」が元となっていますが、ギターの音色がこぼれてくるようなサウンドは「Friends Ⅱ」っぽいかもしれません。小野塚さんのローズピアノがベースの役目を果たし、稲葉さんの涼やかなコーラスが流れると、「シーズンエンド」に綺麗になだれ込みます。わずか35秒程度の短い楽曲ですが、ジャケット写真のイメージに一番近い楽曲かもしれません。

アルバムのリード曲という位置づけになる「シーズンエンド」は、先に述べたようにアメリカで制作され、松本さんもからっとした仕上がりになってしまったと発言しています。ウィンドチャイムの音色と冒頭の歌詞も手伝って、晴れているけど少し肌寒い冬の日をイメージさせてくれます。回想と別れを告げる歌詞なのですが、冬の新鮮な空気に包まれて新しいスタートを切るような楽曲です。穏やかな曲調とは裏腹に間奏では分厚く重ねられたギターをバックにサックスが鳴り響き、朗々としたギターソロを導きます。そこはいつものB'zといった感じですが、ウィンドチャイムの音と最後の「The day will come」のひっそりとしたコーラスが冬っぽさを盛り上げています。

川村カースケさんの強いドラムがブラス隊を呼び込んでくる「ミダレチル」、この曲は一番FRIENDSシリーズらしくない曲調でしょうか。「FRIENDS Ⅱ」の豪奢なアレンジを継承してはいますが、わりとはっきりとしたロックです。アレンジを変えれば通常のB'zのライブでも違和感なくやれそうな雰囲気があります。言葉を詰め込んだAメロだけきいたらFRIENDSシリーズの楽曲とは思えないでしょう。サビ頭の「あんたの~」という言葉遣いに見られるように、歌詞も歌い方も少し突き放したような恨みがましいようなトーンになっています。間奏では斉藤ノヴさんのパーカッションが存在感を増し、稲葉さんの掛け声に応じたようにキャッチーなギターソロが顔を出します。曲の終盤でも同じようにバンドの顔が浮かぶ演奏が繰り広げられ、稲葉さんも高いシャウトを聞かせてくれます。

「Friends Ⅲ」で盛り上がった雰囲気を再度本来のFRIENDSシリーズの物に戻します。今作では、小野塚さんのピアノで一通りメロディを弾き終えると、オーボエとチェロが登場。室内音楽的というか、何かの曲をクラシック調に仕立てなおしたような雰囲気です。荘厳な「Friends」、もの寂しさを感じる「Friends Ⅱ」とも違った仕上がりです。

木枯らしが吹くようなアコギとピアノのイントロで始まり、自身の嫉妬深さを露にする女性を描いた「Butterfly」。この曲のウィスパーまじりの囁くようなな歌い方や暗めの曲調は初期の稲葉さんのソロ楽曲を彷彿とさせるものがあります。ドラム抜きで淡々と演奏されているはずなのに、抑えきれない情感が溢れてくるのはモノクロの映画をみているような気になります。好みは分かれると思いますが、退廃的なところにロマンティックなものを個人的には感じて好きです。FRIENDSシリーズとしてもB'zの楽曲としても少し異質な楽曲ですね。

前の曲を吹き飛ばすように「こんな時だけあなたが恋しい」が少し太めのギターの音をかき鳴らします。ご機嫌な楽曲かと思いきや、曲が始まると不思議と懐かしい感じが溢れてきます。「Black Coffee」同様にどこか90年代初期を思い出させるメロディ運びだったり、エコーのかかった英語の歌詞が切なげなサビを導いたりといった曲のさりげない要素が懐かしさの原因かもしれません。一人で途方に暮れて、いないはずの「あなた」を恋しく思う歌詞も90年代にはよく見られたモチーフであり一番FRIENDSシリーズらしい歌詞といえるかもしれません。間奏では小野塚さんが涼やかなピアノソロを披露。ギターソロはないですが、曲頭と終わりで印象的なギターを聞かせているのでギターがなくて寂しいという印象は受けません。

今作の締めとなるのが、穏やかに夢見るようなバラードである「GROW&GLOW」です。まず頭のイントロが素晴らしい。ギターとストリングスによるイントロで、派手なものではないのですが一気に曲に引き込んでくれる素晴らしい音色です。そこに乗せてくる稲葉さんの声も優しい。これまでFRIENDSシリーズの楽曲には何かしらマイナスの感情が付き纏っていましたいましたが、この曲では時間を重ねた二人がゆっくりとさらに時間を積み重ねていきたいという希望が込められています。まるでFRIENDSシリーズという映画のエンドロールでも見せられているような大団円的な楽曲にも聞こえます。この曲を聞くとFRIENDSシリーズはこれで幕引きなのかと問いたくなる気持ちもわかりますね。歌詞や曲(特に間奏)が続いていくことを歌っているのに、どことなく終わりの雰囲気が漂う楽曲です。冬や雪が似合う曲ですが、冬の向こうの春を見据えた曲でもあります。

全体的に見ればやはり前2作と共通する部分もあるのですが、やはり全く別物だなという印象を受けました。11月~12月のクリスマスを中心としたラブストーリーを歌い上げたのが「FRIENDS」、1月~2月の雪の冷たさを人間関係に反映させたのが「FRIENDS Ⅱ」とするならば、今作は2月の終わりに春の暖かな光に溶かされていく人の感情を歌いあげているようにも聞こえます。冒頭が「harunohi」だったり、冬のアルバムながら歌詞の随所に「春」というワードが出てくるせいかもしれません。

「EPIC DAY」あたりからB'zはロックバンドであるという意識が二人の中では強くなってきており、ソフトな楽曲は意識的に排除され、ソロ活動でそういった要素が多くみられていたのですが、コロナ禍にあってB'zという時間が増えたことや通常の形式のライブが出来ないといった状況が生んだアルバムなんだろうなと思います。B'zの強みであるメロディや少し豪華なアレンジを久々に堪能できるアルバムかと思います。

初回盤には新たに録音された「いつかのメリークリスマス」のMVが同梱されております。基本的なアレンジは原曲通りですが、アコギのみだったギターに、エレキが用いられて少し厚みと温かさが加わりました。稲葉さんはYouTubeライブでは、決して歌うのが得意な楽曲ではないと発言していましたが、かなり原曲近いテイストの歌唱に戻っています。温かい演奏に対して、声が渋さを増している分、回想であることや主人公の寂しげな感情がより前面に出ていると思います。

MV自体も凝った作りで、ステージ上に歌詞の世界を展開しています。松本さんは椅子の棚をバックに座ってギターを弾きますが、二番でエレキにもと変えています。稲葉さんは椅子の入った荷物を持ちながら電車に乗ったり、公園でたたずんだり、夕食を前にしたりと歌詞とリンクした行動をしています。最後はふたりで座りながら演奏しているのが良かったですね。アレンジ自体はLIVE FRIENDSの配信でも聞けると思いますが、映像は恐らく当面はこのDVD限りなので気になる方は見ても良いのではないかと思います。