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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

『稲葉浩志作品展 シアン』に行ってきました。

角川武蔵野ミュージアムで開催中の『稲葉浩志作品展 シアン』に、ゴールデンウィークを利用していってきました。場所は東所沢で都内からでもややアクセスは悪め、駅から遠いということもないですが駅近というには少し遠いでしょうか。角川武蔵野ミュージアムを擁するところざわサクラタウン自体が小規模の上野公園のようになっているので、天気の良い日には遠足感覚で行けるかもしれません。

美術館としてはやや奇抜な外観をした角川武蔵野ミュージアムサブカルの展示やイベントが多いこともあり、1階ロビーには子供から大人まで入り乱れる中々の盛況ぶり。『稲葉浩志作品展 シアン』はエレベーターで5階に上がると、すぐに受付。電子チケット(QRコード)を見せて、入場特典の栞をもらい、観覧にあたっての簡単な注意を受けて中へ。

まずは撮影可能エリア。
稲葉さんの前書きが掲示され、写真と「シアン」のインタビューなどから抜粋した稲葉さんの発言が壁面を埋める構成。
それとは別に「シアン」をイメージして、青色をベースに様々なモチーフや歌詞を取り込んだオブジェが展示されており、自由に写真撮影可能。オブジェの前にちょっとお上品な椅子があるので何だろうと思ったら、「シアン」のインタビューで稲葉さんが着席していた椅子とのこと。着席しても構わないとのことですが、遠慮して写真に収めるに留めました。また、「シアン」の特装版、通常版もガラスケースに飾られています。

B'zのアルバムがむき出しで展示されたスペースを抜けると、B'zの歌詞に係るコーナーで、ここが一番広い展示。もちろん撮影不可。
壁には稲葉さんの作詞ノートを綺麗に撮影した写真、その横に曲のオリジナル歌詞を展示する構成。古いものは「君の中で踊りたい」「BOYS IN TOWN」「BE THERE」から展示されています。基本的には非常に有名な楽曲を揃えてくれているので、マニアと呼べるレベルじゃなくても知っている曲ばかり。
まだ「LOVE ALIEN」と記されている「LOVE PHANTOM」、「走れるだけ走ろう」をキーワードにした「RUN」、フランスの地下鉄風景を「METRO」と題してやがては「ねがい」になる歌詞、「just one point」「イチブ」といったキーワードがありタイトルがつけられていない「イチブトゼンブ」等々、興味深いものが多数。
また、NHKのインタビューでも映像が出ましたが、歌詞ノートをドアの大きさくらいの布に印刷した展示には「ALONE」「いつかのメリークリスマス」「ギリギリchop」「Liar! Liar!」「光芒」の歌詞が掲載。
「夢と女」「夕暮れの手紙」「夕暮れに君を想う」といったキーワードをもとに何度も書き直しの跡が見える「ALONE」や、実際にはさらっと書かれた歌詞のより具体的な風景を織り込んだ「いつかのメリークリスマス」、お馴染みの落書きがでかでかと光る「ギリギリchop」、いなくなった女性への生々しい怒りを見せる「Liar! Liar!」、当初はもっと詩的な内容だった「光芒」など見てて飽きないです。ただ、大きなページをめくるような構成になっているので、人がたくさんいると見づらいかもしれません。
ごく一部のみ歌詞ノートを開いた状態で展示しています。NHKのインタビュー映像では稲葉さんが無造作にめくっていましたが、もちろんガラスケースの中です。
展示スペース真ん中にはPleasureシリーズの歌詞がPleasure当時の稲葉さんの写真とあわせて掲載。原曲の歌詞ノートはないですが、2008年の歌詞変更部分の展示があり、「自分に似た17歳の少年」という非常に興味深いフレーズを考えていたことが分かります。その他は音源化されたもののみ歌詞が掲示されており、最後に「Pleasure goes on」の文字があり、今年も歌詞に期待を持たせます。

歌詞ノートを見ると、見開きにまずは歌詞のモチーフとなる言葉や文章を書き連ねて、メロディーに合わせた歌詞を書き足していることが分かります。初期はこの前に英語の仮歌もあったりするので、歌詞ノートは膨大になるでしょうね。これを踏まえてある程度形になると、1枚の歌詞として歌入れ用に書き出し、さらにレコーディングの中で言葉が変わっていくという手順を追っているようです。ドキュメンタリーなどで見えるのはネタ出しが終わって、歌える段階にしたものですね。さらにそれをスタッフが聞き取って清書する作業も何かの映像で見た記憶があります。

横は少し薄暗い書斎のようなエリア。
稲葉さんのプライベートスタジオ「志庵」をモチーフにしており、「志庵」の壁面の再現、「志庵」にある本の展示、稲葉さん自身が撮影した写真などが展示されています。
このエリアのメイン展示は「コトバノカケラ」という未公開の歌詞。壁面に約3分の映像で短い未公開の歌詞が映し出されます。ただ歌詞を映すのではなく、イメージをバックに稲葉さん直筆の文字が光り踊って歌詞になるという演出。どれも短い歌詞ですが、恐らくは音楽に乗る前の歌詞ということで、詩的な側面とより直接的な表現が目立ちます。「アルファとオメガ」「ホワイトデイ」「10AM」など簡単なタイトルがついたものもあれば、「マグマ」を彷彿とさせるダウナーな言葉が目立つ詩もあったり。
簡単な椅子が何席か置いてあり、腰かけながらこの映像を見ることが出来ます。この詩が今後歌詞になるのかどうかは分かりませんが、音楽を離れた稲葉さんの言葉の魅力をよく伝えているので、「シアン」にぜひ収録してほしいものです。

再び撮影可能エリア。
ここでは、歌詞の帯に包まれたシアン色のマイクスタンドのオブジェがメイン。奥の壁面には稲葉さんのソロ作品のゴールドディスクが展示。また、床に横たわって大の字になるシュールな稲葉さんの写真もあります。

最後は稲葉さんのソロ作品のエリア。
小さいモニターが壁面につけられており、「BANTAM」のMV、「シアン」の写真撮影風景、インタビュー映像などが繰り返し流れています。
壁面にはB'z同様にソロ作品の歌詞ノートの写真が展示されていますが、「マグマ」はほとんどの曲が展示してありましたね。
「NON BLOOD ANIMAL」「CRUEL」と書かれた「冷血」、意外にも何度も推敲され「LOVE BALOON」と書かれお手製ロゴまで描かれている「風船」、「覚醒」と名付けられている「Little Flower」、「Duty Free」なんて書いてある「愛なき道」など歌詞の興味深さではB'z以上かもしれません。B'z以上に元々の歌詞の表現が詩的なのも注目なポイント。
逆にソロシングルは、「遠くまで」含めて全然なかったと記憶しています。最後に完成系の「BANTAM」の手描き歌詞が飾られている程度。
ちょっとした展示として、en3.5で使用した衣装が2着展示されています。
衣装のシャツの1枚は稲葉さんが撮った写真をプリントした特注で、もともとは「シアン」のために撮った写真だとか。それをグッズ化すればいいのにとも思いますが。
また、en3.5で使用したセットリストの紙が展示されており、稲葉さんのMCなどの簡単なメモが記載されています。昔に比べると割と適当に喋っている感もありますが、一応簡単な段取りや話したいことはメモっていることが分かります。

出口付近には稲葉さんの4月20日付けでのメッセージ。
インタビューを毎週受けていたこと、特装版の装丁を見て若干ビビったこと、「シアン」という作品をどうとでもよいからたまに手に取って読んでみてほしいことなどが綴られ、最後は松本さんへの感謝と「ARIGATO」の文字(ちなみに「ARIGATO」の歌詞展示はありません)。

入場中はどのエリアも自由に行き来できるので、混んでたら飛ばして後からまた見れるのがよかったですね。
連休中ということで、がらんとしてはいなかったですが、人があふれて展示が見れないということもありませんでした。程よく人がいる感じで展示を楽しむにはちょうどいい具合の広さと人の量。
展示スぺースはそんなに広いものではないですが、じっくり歌詞を見てたら2時間くらいはゆうにいられるんじゃないかと思います。同じミュージアムに稲葉さんが撮影でも使用した本棚劇場もあるのでここを見に行っても面白いと思います。

検索すれば歌詞なんていくらでも見ることが出来る時代なので、敢えて紙の詩集を出すのはどうなんだろうという気もしてましたが、こうして歌詞だけを見てみると、確かにそういうものがあってもいいなという気になるから不思議です。ただ、歌詞ノートあっての興味深さという側面もぬぐえないので、できれば「シアン」にはうまくその辺も取り込んでほしいなとは思います。そして、高いけど特装版を予約しておいてよかった・・・。