INABA/SALASの新作、「ATOMIC CHIHUAHUA」が発売されました。
2020年に2ndアルバムを発売し、そのままツアーに出る予定が新型コロナウイルスの影響でツアーが中止となったため、そのリベンジとして今年にツアーを組んでいます。とは言え、アルバム自体は5年も前ということもあり、最新のINABA/SALASの音源が新たに届けられました。昨年、稲葉さんがソロ活動に、B'zの制作等を並行していたこともあり、流石にフルアルバムを作る余裕はなかったようで7曲のミニアルバムとなりました。アグレッシブだった前作「Maximum Huavo」に比べると開放感のある楽曲やミディアム調の楽曲が目立つアルバムになりました。
ギターの陽気なリフにシンセが乗り、自由な歌詞が乗っかるINABA/SALASらしいファンキーなロックナンバー。INABA/SALASの楽曲は基本的に二人の共作だけど、本作ではデイビッド・フレンドリーとの共作とクレジットされています。歌詞面の共作とは思えないので、曲の方で貢献があったのかと思います。将来の大スターを夢見る若い主人公を若干茶化した調子で歌ってますが、若かりし頃の稲葉さんも投影されているのかもしれません。サラスとサム・ポマンティによるファルセットというか裏声のコーラスが曲に遊び心を添えてます。
EVERYWHERE
先行で配信され、本曲で先日8年ぶりのミュージックステーション出演を果たしました。
ミュージックステーションも以前とは大分勝手が異なり、アーティストが階段を降りてくるのは冒頭ではなく、ある程度番組が温まってからになっていました。前番組の視聴者を逃さないように前番組から間をあけずに番組を開始したのに、アーティストの登壇シーンでチャンネルを変えては意味がないということだとは思いますが。登壇シーンでは真っ先に登場し、カメラに向かってお辞儀して「頑張ります」と稲葉さんが微笑んでの登場でした。
トークはそんなに長いものではないですが、久しぶりにタモリさんと少しずれた感のあるトークを展開。とにかく久しぶりで勝手が違うという稲葉さんと、ミュージックステーションに出たというと友達のミュージシャンに羨ましがられるとお世辞を言うサラスでした。
さて、「EVERYWHERE」は冒頭から深い響きのギターがなり続けるシンプルな楽曲ですが、そこに緩やかなメロディと物憂げな歌詞が乗っかることで不思議と耳から離れない楽曲になっています。あらゆる場所からあなたを感じるということを表現するにあたって、「You're everywhere」というシンプルなフレーズを用いているのが上手いなと感じました。少し寂しげな曲調とシンプルな言葉選びに「Okay」を何となく思い出しました。INABA/SALASにおいても、「Okay」のような立ち位置で演奏されるかもしれません。INABA/SALASというよりは稲葉さんのソロ楽曲の風味が強いですが、時間がない中での制作だったので、メロディにも稲葉さんのアイデアが盛り込まれているのかもしれません。
強力なリード曲というわけではないですが、しっかりしたメロディの余韻と稲葉さんの少し枯れたボーカルが繰り返されることで、静かな感動を呼ぶ曲だと思います。
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Burning Love
系統としては「YOUNG STAR」と同じファンク系のロックですが、少しロック色が強めに感じます。クレジットを見るとドラムにブライアン・ティッシーの名前があり納得。彼のファンクとは程遠いしっかりしたドラムがあると、やはり曲が締まります。
「Burning Love」の後に「愛が暴れ」というフレーズが続くのですが、ここが「I got a burning」に聞こえるのはわざとなのか、自分の考えすぎなのか気になるところ。
本曲と「EVERYWHERE」で明日新たな音楽番組への出演も決定しています。
DRIFT
ちょっと不思議なイントロに導かれ、残響音強めのドラムが大きく響きます。イントロはかなりユニークなのですが、中身はかなり稲葉さんの色合いが強いミディアムテンポの楽曲。「Hadou」や「只者」に入っていても不思議ではない、ちょっと体に熱がこもったような楽曲です。歌謡曲さながらの湿っぽい歌詞がどんどん盛り上がっていき、最後は熱いシャウトが繰り出されます。「EVERYWHERE」「ONLY HELLO」といったミディアムテンポの佳曲があるため、目立ちにくいですが、ライブでは圧倒されそうな楽曲。
ギターソロにファルセットでユニゾンするのが少し斬新。
LIGHTNING
本曲もブライアンが参加するロックナンバー。
前作「Maximum Huavo」のアグレッシブさを受け継いだような楽曲で、陽気さやファンクよりもカッコよさに振っています。「Here I Am!」が始まりそうなBメロと吐き捨てるように歌う2番の頭が個人的にはものすごく耳に残りますね。サラスのシンプルながらも色っぽいギターソロも光る楽曲。本曲がストレートなかっこよさを放っている分、次の「ONLY HELLO part1」のしんみりした楽曲が際立つ気がします。
ONLY HELLO part1
ファンク色が強いINABA/SALASですが、本曲はアコギとストリングスを従えたシンプルな構成の楽曲。
イントロなしで、稲葉さんのボーカルが流れ出し、過ぎ去った時間といなくなった人を偲ぶような歌詞を紡ぎます。バックにはサラスのアコギとルー・ポマンティのストリングスのみのシンプルな構成ですが、歌が進むごとに感情が乗るボーカルとメロディにはぴったりだと思います。派手さはないのですが、切々としたメロディがアルバム、ひいてはINABA/SALAS全作品の中でも際立つ楽曲となっています。サラスによる静かなコーラスもいい味を出してます。
本曲はフルMVが公開されています。穏やかな日差しのなかで、稲葉さんとサラスが演奏するだけのシンプルな絵ですが、2番からはINABA/SALASのレコーディング風景やライブの模様がモノクロで流れて、「永遠の青春」「あなたとすれ違った」といったフレーズとシンクロ。最後は「TROPHY」で参加したテイラー・ホーキンズ、ツアーに参加したアンプ・フィドラーへのRIPの文字。二人のために書いた曲というわけではないと思うのですが、二人の映像を見ながら歌を聴くと感情を揺さぶられます。
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ONLY HELLO part2
同じ曲名にパートをつけると何となくPink Floydの「Shine on You Crazy Diamond」を思い出してプログレッシブな感じがするのですが、part1を聞いても分かる通りプログレッシブとはまるで縁のない楽曲です。「ONLY HELLO」というキーワードで異なる曲が二つ出来たため、敢えてタイトルは変えずにこのような形にしたということでしょうか。切々と訴えかけるようなボーカルが際立った前曲とは裏腹に本曲では大団円のムードが漂います。さよならは言わないと歌っていますが、曲全体でフィナーレを主張しているような不思議な楽曲です。
意図的なのかどうかは分かりませんがサビのメロディはジョン・レノンの「Happy Xmas (War Is Over)」とほぼ同じ。
聖歌のようなキーボードにエコーの深いボーカルで「There is no good-bye There is only hello」というフレーズを繰り返すシンプルな楽曲。part1が追悼だとすると、part2には感謝や希望が込められているように聞こえます。最後はサム・ポマンティやサラスが合唱する中で、稲葉さんがフェイクしながら歌うという王道的なラストソング。
Nishi Meets Higashi Jam
モノクロの予告映像が公開されていますが、全編がモノクロで収録されています。
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階段を稲葉さんとサラスが降りてきて、スタジオの一室と思しきところで、歌詞カードとギターを片手に三枚のアルバムの曲を気ままにジャムするという映像。サラスも発言している通り、「CHUBBY GROOVE」は2017年のツアー以来演奏していないため、忘れている曲も多く、稲葉さんが「Do you remeber this?」と聞くと即座に「No」と返して稲葉さんを苦笑させて言います。とは言え、思い出したらサクサクと弾きだしてコーラスや合いの手もつけていくのはさすが。稲葉さんもしっかり歌うというよりは思い出しながら声を出すといった具合で、時にはハモりの方の歌を歌ったりと自由な演奏。
途中では、サムがいるはずとサムを呼んで、キーボードとコーラスで参加してもらい、少し賑やかな演奏に。サムが流ちょうな日本語で喋り、稲葉さんが英語で喋ると、ちょっとよく分からない言語空間になっているのもまた面白い。「Maximum Huavo」について熱く語るサラスと、「タイトルはインタビューで意味を聴かれても答えられなかった」と笑う稲葉さんが対照的。
最後は本作から少しだけ演奏してますが、冒頭で稲葉さんがまだこの時点ではできてないと言っています。先日出ていたインタビューにもありますが、元々は1曲くらいの予定がいざ始めてみたら膨らんでしまってかなりバタバタした製作だったようです。
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INABA/SALASらしい曲を縫うように、今まで以上にメロディアスなミディアムテンポの楽曲が増えたように感じます。先に書いたようにかなり突貫の製作だったようなので、これまで以上に稲葉さんも作曲に貢献しているのかもしれません(クレジットもINABA/SALASになってますし)。
本作を引っ提げて、INABA/SALASは3月10日から20日ばかりの短い全国ツアーに出ます。各種SNSでちょっと愉快なCMのような動画も流れているほか、本日グッズも公開されました。「CHUBBY GROOVE」「Maximum Huavo」も聞き返しながらツアーに備えたいと思います。
bz-vermillion.com
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