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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

THE CIRCLE

THE CIRCLE

THE CIRCLE
オープニング曲にしてタイトルチューンである摩訶不思議な楽曲。アコースティックギターのざくざくとした音に導かれて、異国の風が聞き手の中で吹き始めます。中近東を彷彿とさせるメロディが静かに鳴り響く中、稲葉さんによる「Oh〜Oh〜♪」という声が重なる。個人的なイメージとしては、中近東というより、どこか山奥の原住民達が捧げる祈りの歌のようなものに近いです。PVの草原のイメージはまさにピッタリで、やや曇った空の下で、言葉にはならぬ祈りだけが風に乗せて伝わってくる、そんなイメージです。
一曲目は強力なロックナンバー、あるいは歌詞のない半分インストのような楽曲で次の曲を盛り上げることが多いB’zとしては、このような奇妙な穏やかさを持つ曲が一曲目に来るのは極めて珍しいといえるでしょう。
歌詞にある通り、「ゆらめく」ようなボーカルにのせて、ギラリと光る太陽が雲を裂いて現れます。この歌詞がまたきわめて珍しい。B’zのタイトルチューンというのは、基本的にアルバムに込められた意味みたいなものとのダブルミーニング的なものか、もしくはアルバムの中身を象徴するような小曲であることが多いです。例えば、前者はRUN、Brotherhood、STAY GREEN、BIG MACHINEなどが良い例だし、後者で言うならば、爆発寸前の危険な緊張感を表すRISKY、B’zの二人のみで演奏されるspirit looseがそれにあたる。
今回の場合は、THE CIRCLEのアルバムタイトルとしての意味は、輪廻、回帰といった感じなのですが、曲としてのTHE CIRCLEにはその意味は全くといって良いほど込められていない。仮タイトルのsuryaの時から変わらず、太陽の曲のまんまで、人と人の関係や、己の意気込みを伝えるような歌詞ではない。純粋に音にインスパイアされたもの。音から広がるイメージがあって、そのイメージをさらに深め、逃さないように固めるための歌詞。ある意味で、最も音に忠実な歌詞ですよね。
じゃあ、この曲がアルバムの象徴かというとそうでもない。確かにX、BLACK AND WHITEにみられるエスニックなテイストを顕著に表してはいるけど、それがTHE CIRCLEというアルバムの本質かというとそうでもない。敢えて言うならば、バンドとして戻ってきた時、それがたとえ同じ面子でも、様々な経験を経る前と後ではまるで違う、そんなアルバムのイメージには合ってるけど、ちょっと強引(笑)まぁ、色んな意味で異色な楽曲です。
この手の異国情緒を漂わせる楽曲っていうのはロック界ではそんなに珍しくなくて、結構色んな方がやってます。代表的なのはやはり、LED ZEPPELINKASHMIRとかペイジ・プラントの一連の作品。B’zファンにはAEROSMITHのNINE LIVESが馴染み深いでしょうか。私のようなQUEENファンならばMUSTAPHAなる曲を思い浮かべるでしょう。そういった先達の楽曲もそうですが、とにかく普通ならない、何ともいえない妖しいメロディがこの楽曲の魅力。
気が付いたら、曲のイメージの世界に迷い込み、共にこの祈りの歌を太陽の下で捧げてしまっている。そんな楽曲です。


X
個人的に非常に大好きな一曲ですね。
前のTHE CIRCLEの最後に被さるようにして、ド派手なギターのイントロが鳴り響きます。歌詞から考えると、目覚ましのベルのような感じに思えなくもないです。いずれにせよ、どこか茫洋としたTHE CIRCLEの世界は破られ、シビアな現実世界へと一気に回帰させる曲です。
攻撃的なリフに導かれて、稲葉さんのちょっとひび割れたような迫力のあるシャウト、ファン泣かせ。このちょっとひび割れた感じが物凄くライブっぽいですよね。ただの倍音じゃないところが良い。
さて、いきなり、起こされても普通はすぐに覚醒はできないもの。その寝起きの曖昧な夢見心地の意識を表現するように、サウンドは再びエスニック調に。静かに覚醒を要求、そして先ほどまでの世界を邯鄲の夢とあっさり言い切ってしまいます。その表現に「別にこれからもエスニックでやるわけじゃなくて、今回はこうしてみたただけ。THE CIRCLEの世界は邯鄲の夢=一度きりのもの」という意味が込められてると思うのは私の深読みでしょう。
Aメロに続き、Bメロでも、まるで聞き手を叱責するかのように、自分の在る場所を淡々と告げていく歌詞。
そして、サビ。ここはいつも通りのB’zらしいサビなんだけれども、単純にノリノリでいこうっていう感じじゃない。稲葉さんのボーカルのせいかもしれませんが、Aメロ、Bメロで歌い上げたシビアな現実世界の中で、もがく様が凄く表れてると思います。
この感じ、どっかで聞いたことあるなぁ、とずっと思ったのですが、分かりました。Pleasure'91ですね。あの曲も変わり行く世界の中で、必死にもがく様を表した曲でしたね。そういえば歌詞も似てるじゃないですか。「来世はない 今だけがどこまでも続く 終わりまで味わい尽くせよ」「もし生まれ変わったらなんて目を輝かせて言ってたくない 止まれないこの世界で胸を張って生きるしかない」てな具合で。してみると最愛のものからの便りっていうのはやっぱり、アイツからの電話なのかな、と思ってみたりします(それはちょっと強引でしょうか)。
いつもの開き直り系の歌ではないですね。ポップさがないので、真剣に生きる様だけがひしひしと伝わってくる、そんな曲です。稲葉さんのいつも以上に、真面目な歌詞がそれを後押ししてますね。いつもなら、稲葉さん流のお茶目な歌詞が入って、雰囲気を和らげるんですけど、今回はむしろ逆でひたすらシビアな視線。
それでも最後は、「無限の可能性 未知の未来 神さえ予測不能 己が今を変える 何もかもがX」と、何も定まっていないことを逆に、ポジティブに変えるのが稲葉節。最後に繰り返される「さぁ 目覚めるがいい」の響きが、最初に聞いたものとはまるで違って聞こえるのは僕だけじゃないはず。


パルス
煌びやかなギターのイントロに導かれて始まるB’zメロスピB’zはどちらかというと、曲調が遅くても速くても、楽器の無骨な面を押し出すタイプのロックが多いし、そうでなければ、ややポップ(というかキャッチーかな?)なアレンジにすることが多いので、この曲のように、速くて鋭く流れる感じの曲は意外と新鮮。
最初のギターだけでかなりかっこいいんだけれど、更にそこに早鐘のように打つ鼓動のようなドラム、稲葉さんの「Hey!」の掛け声で曲がはじける。
ボーカルへの歌詞の乗せ方はそんな詰め込んでないし速くない。むしろ、いつもの稲葉さんより言葉が少なめなくらいな気がします。
歌詞。Xで目覚めたは良いものの、「部屋は静まり返り」と言うくらいだから部屋はまだ静かなまま、即ち、まだ日が昇ったか昇ってないかくらいで、部屋の中は結構暗い。それって、「何にも見えない闇に捕まえられ」て、部屋の「黒い壁」に囲まれた状態なんじゃないでしょうか、と無理やり繋げるつもりだったのですが、もたもたしてる内に、新潟地震で被害に遭われた少年のことと、稲葉さんにインタビューでバラされてしまいました。う〜ん、残念。
まぁ、そうだと聞くと、確かにそういう歌詞ですよね。あんまり捻ってない。ていうか一番の歌詞はまんまそのことを歌ってますね。二番で「あなた」という人物を登場させることで、震災の話だけにとどまらない普遍的な感じに歌詞を拡げてますけど。
この曲の個人的なツボである「I'm here」の声の後に、何もかんも吹っ切ったようなサビ。何せ、「どっこいどっこい」です。韻を踏むためとはいえ、簡単にサビに持ってこれる言葉じゃありません。Xと比べてみても、稲葉節全開といった感じで、歌詞面における前二曲の神秘さは消えてなくなってますね。この当たり、やっぱり「目覚めた後のリアル」を意識してるのではないか、と僕は勝手に解釈して悦に入ります。
間奏の最中にはお馴染みの掛け声だけど、これは割と王道的な入れ方だから、気にしてる人は少ないですね。むしろ、ないとB’zっぽくない。
「Don't let it go!」の声(英語は間違ってるかもしれないので悪しからず。itかmeだと思う)の後のギターソロでもスピードを緩めずに突き進む。サビメロディをなぞる、追ういつものパターンからいかにもメタルっぽいソロが曲にメチャクチャハマってる。器用な人です。
あっという間に最後のサビ。「黒い壁が崩れていく」と表現した後も、その興奮はおさまることなく、加速していく。経験ありますよね。もう終わったことなのに、妙にテンションが上がって、しばらくテンションが上昇する一方な状態。きっと、演奏してる三人もそんな状態なのでしょう。ま、そんな状態は長続きしないというのが、これまた「リアル」でありまして、最後は倒れこむようにブツ切り。


愛のバクダン
壁が崩れたら、当然風が吹き込みます。そんなわけで春の新風のようなこの楽曲の登場。アコギの爽やかなイントロからB’zらしいポップさ全開。アルバム中では余りにポップ過ぎて浮いてる印象がありますけど、アルバム曲同様爆音で聞きたい一曲です。
ある意味では次のFly The Flagへの橋渡し的楽曲。最初3曲の得意のロック調からちょっと変わりますよ、という信号を発しているのでしょう、多分。
シングルでは底抜けに明るいけど、アルバムの中だとちょっとサビの歌詞が切実な感じがするのは僕だけでしょうか?最近は色んな問題が世界中で起きてますけど、本当に愛のバクダンみたいなものが落ちてきたら良いですよね。個人的に愛のバクダンをピンポイントで投下したい国が一つか二つあります(笑
最後のシャウトが高音シャウトに差し替えられてないのがちょっと残念な一曲。


Fly The Flag
ちょっと変わったギターのイントロから始まるゆったりめの楽曲。どちらかといえば、稲葉さんのソロっぽい「間」を重視した曲ですね。激しい曲調というわけでもないのに、結構体の奥まで響いてくる感じ。
Aメロは歌詞の合間を縫うように、ギターがズンズン鳴っているんですけど、これが結構気持ちよいですね。歌詞と一緒に体の中に、曲そのものが染み込んでいく感じがします。でも、この歌詞はちょっと暗めですよ。「思いっきり泣いてみても誰も振り向かない」って、どんな環境で泣いてるんでしょうか。でも、本人は気にしてないようなので、まぁ、良しとしましょう。
「世界は僕を待ってる」と、やや自信過剰、もとい、自信満々な歌詞を受けるようにしてBメロは加速。ここのメロディは中々かっこよい。というか、サビが引き立つ。
Fly The Flag」という掛け声で、ゆったりとしたメロディのサビに突入。サビはゆっくり過ぎる気もするけど、僕は好きです。何か大きな旗を一人で振ってるような光景が思い浮かぶんですよね、このサビ。稲葉さんには珍しく、駄目な僕を責める歌詞じゃなくて、駄目な僕が頑張ってる事を訴えかける歌詞。僕は努力は人知れずってのが好きだから、歌詞だけ見たらそんなに好きじゃなかったろうけど、幸いANNで歌詞より先に曲のイメージの方が先行して、旗を振るイメージが鮮明に頭の中に描かれたので、うん、好きですよ、この曲。
具体的なイメージの思い浮かぶ曲っていうのは好き。それも単純な風景描写で、イメージさせるんじゃなくて、いくつかのフレーズと曲だけでイメージが浮かび上がるような曲は特に。
ま、それはさておき、個人的にやっぱりこの曲の「イイ!」ところは間奏以降ですね。2番のサビが終わったところで、一回クールダウンして、そこに今にもぼやけそうな声で「見えるよ あの空はいつもそこに」と天に向かって旗を振ってる男ならではの、「空」への想いが告げられると、ギターソロで加速。
BAD COMMUNICATIONを彷彿とさせるソロなのですが、最近にはあまりなかったパターンのソロだから物凄くワクワクする。「この先はどうなるの!?」って感じで。曲の変化は本当に好きな人間なので(笑)
まぁ、サビに戻るんですけどね。でも戻り方がかっこいい。歌詞の通り、何かが「ぶっ壊れそう」で「破れてしまいそう」なスピーディーでギリギリな感じから、一気に大きなメロディに戻る。
ギリギリchopはもちろんのこと、Thinking of youでもあったけど、稲葉さんはギリギリの所で踏みとどまる感覚が好きみたいですね。完全に落ちるわけでもなく、でもすぐ側に危険のある感覚。・・・Mだな(爆
最後はまた加速するのかな、と思わせておいて、またしても「Fly The Flag」の囁き声で引き戻されて(こうしてみると警告の声みたいに聞こえますね)、アクアブルーへ。彼女は見てなくても、アクアブルーは彼の涙を見てるんじゃないですかね?


アクアブルー
アルバムの中では比較的ポップな一曲。様々なメロディが出てくるけど、構成としては熱き鼓動の果てに近い。ただ、いわゆるポップと呼ぶには、メロディがいわゆる売れ線どころから外れてる気がするなぁ、と僕は思わないでもないんだけど。
イントロなしで、ギターをバックに「アクアブルーが静かに〜」と稲葉さんのボーカルが入るんですが、ここの時点では「アクアブルー?光る?何?」って感じですが、まぁ、焦らずに。おいおい分かりますよ(笑)
で、いきなり女性視点に切り替わって、痛烈な質問が浴びせかけられます。そこまで言うか、というくらい厳しい歌詞ですよ。そんなこと言われたら、黙ってうつむいてしまいそうな勢いです。
個人的にBメロの所が好きですね。歌詞も印象的だし、メロディもスピード感があって。
で、サビ。ここでようやく、分かる人にはアクアブルーが携帯電話の着信の際に光るライトだって分かるわけです。
状況としては彼から電話がきているのだが、意図的にかそれとも目の前の誰かに夢中で気づかないのか分からないけど(多分前者)、取らないでアクアブルー色のライトだけが静かに部屋の中で点滅している、と。ドラマで出てきそうですよね。非常に想像しやすくて、良いのですが・・・・これって浮気ですよね?しかも、冒頭のあの質問・・・女の人は恐い強いですな。
二個目のサビ、つまりは冒頭のメロディで、再び主人公の女性に警告するようにアクアブルーが全て見ていると歌う稲葉さん。
んー、割と書くことがない曲ですね。アルバムの中では割と歌詞も具体的で分かりやすいし、ギターソロもサビメロをなぞるパターン、と結構王道なんであんまり言うことがないんですよね。B’zファンなら特にためらいなく聞ける楽曲。
最後のほうで歌詞の世界がちょっと広がりますね。「知らないことばかりで この星はまわってる どうしようもないわけで だれもが泣いている」の部分で、単純な男女関係だけじゃなくて、それこそ愛のバクダンの「裏切り抜け駆け」っていうのを世界レベルで見てる感じ。要は、どんなに理屈をこねて誰かを裏切ってもきっと誰かが見てるぞ、と。小さい頃に親に「悪いことをしても神様は見てるぞ」と脅されましたけどそれと同じですね。
最後は久々に「ラララ〜♪」で締めてます。これは、さしずめ着メロの音といったところでしょうか。「着メロまで鳴り始めたんだし、そろそろちゃんと向き合ってもいいんじゃない?」というメッセージに取るのは深読みしすぎかな。


睡蓮
アルバム中では数少ない、もとい、二曲しかないバラードの内の一曲。BIG MACHINEのバラード二曲も決して王道パターンではなかったけど、今回のこの曲も王道ではないですね。Bメロからサビはともかく、Aメロが。
さて、そのAメロは華における松本さんの楽曲を髣髴とさせるオリエンタル、もっと踏み込んで言うならば琉球的メロディ。この手のメロディはかつて夜よ明けないでのサビにあったくらいで、非常に珍しい。今回は稲葉さんも、その琉球の空気に存分に影響されたみたいで、タイトルはもちろんのこと、ファルセットをまじえた歌い方やAメロに乗せる歌詞も非常に「和」の方向に幻想的。ここでも、やはり諸行無常の響きが表れてる。もっとも、こちらは「酔っ払う」というよりかは「酔いしれる」といった感じですが。
Bメロからはうってかわって、王道的なカッコよさ。稲葉さんの歌詞も幻想的な方向から離れていく。カッコいいけど、寂しさの漂う感じ。この雰囲気は、次の曲Sanctuaryにも引き継がれますね。
「ひそかに静かに〜♪」の歌詞通り、サビはひっそりと雲が流れていくイメージ。流れゆく日々のただ、雲の動きを映しただけのPVがあったけど、個人的にはあの映像を思い出しましたね。あと、アルバムのジャケットもこのイメージに近い。後ろの空の色がそういう風に思わせる。
雲で月が翳るようなギターの後にくるギターソロ。久々に作りこんであるなぁ、という気がしたのは僕だけでしょうか。ROOTSにギターソロも良かったけど、これは個人的にそれよりも素晴らしい。こんな感じでくるんだろうな、と思ってはいても、実際にそれをやられるとマジで感動します。変則的なのと同じくらい王道が大好きな人間なのです。
そして、「月が出る」、「歩き出す」といった歌詞がちょっと月光っぽい気がしなくもない最後のサビ。最後のサビはそれまでに比べて、コーラスが結構、前に出てる気がするんですけど気のせいですかね?まぁ、僕としては聞き所は、サビ直前の稲葉さんの声ですね。あの泣き出す直前のような寂しげな声の有無で大分曲への思い入れが変わったと思うんです、僕は。この辺がやっぱ、昔とは違うな、と思いましたね。
問題は歩き出したのに、あっさりと次の曲で自分だけの聖域にたどり着かんとするあたりなのですが、まぁ、そういう関係すらも振り切ってたどり着かんとする辺りが、Sanctuaryのかっこ良さなのかな、と思ってみたり。


Sanctuary
稲葉さんのソロ楽曲のAKATSUKIを思い出させるアコギのイントロにエレキが被さります。このギターの響きがどことなく宇宙的響きがすると思うのですが、余り賛同は得られないようです。どこが宇宙なのかと言われても、勝手にそういうイメージが頭の中で再生されてしまっただけなので、説明しがたいのですが。
イントロはそんなに長くはなく、すぐに稲葉さんのボーカルが入ってきます。この稲葉さんの声の深みはソロツアーを経た後だからこそのものだと思います。ソロ前の稲葉さんの声が悪いというわけではないのですか、BIG MACHINEの頃の稲葉さんの声は、良くも悪くも滑らかすぎて、このような曲には向いてなかったのではないかな、と。
それはさておき、このAメロは奇妙な静寂さを持ってますよね。言葉では表現しにくいのですが、破られることを承知の上での静寂さとでも言ったら良いのでしょうか。一番のAメロの歌詞から受けるイメージも多いのだと思います。
Bメロではほとんど唐突に近い具合でその静寂さが破られ、沸騰寸前のボーカルとバンドの演奏が否が応でも、我々の心を揺さぶり、興奮の坩堝に叩き込む。
次からのサビは堰を切ったように言葉と演奏があふれ出てくる。この部分にはもともとストリングスがシンセで入っており、プレスにはそちらが配布されたそうなのですが、CDではギターに差し替えられています。ストリングスの入ったバージョンも聞いてはみたいのですが、生でないならこちらのCDの方がきっと良いのだろうな、と思い極めております。ストリングスを生で導入ということなら、これは諸手を挙げて歓迎するのですが、生憎現在のB’zはシンプルな構造を試みている模様。少し残念。ライブにおける増田氏のキーボードでそのパートが復活することを期待することにしましょう。
歌詞の方は、自分の中で真に求めるものに動き出せという内容。しかし、Sanctuary=聖域というタイトルから、僕はこのサビの部分をつい「啓示」のように感じてしまいます。実際には自分のために自分が自分の要請に従って動き出すから意味があるんであって、人から受けた啓示では余り説得力は持たないのですが。特に、今回の場合は「やわかい指」の持ち主を置いてでも、たどり着かんとする意志なだけに。普段の稲葉さんの歌詞だったら「強い君」からの啓示と言う事も出来るのですが、今回は珍しく例外のようです。
以前、この怒涛のサビの試聴部分のみを聞いたときは「コブシヲニギレをよりシャープにスピーディーに」といった感想を書いたのですが、それは撤回させていただきましょう。受けるイメージが全然違いますから。コブシヲニギレは一敗地にまみれた後の、つまりは悲しみの後に反動のようにくる反骨精神(怒りといっても差し支えはありますまい)に火をつける曲。対するSanctuaryは何もかもそろってる所から、去らなければならない悲しみのこもった歌。同じELEVENの楽曲ならRaging Riverの方が雰囲気的には、似ている。個人的に、一番似ていると思うのはSurviveですけど。
話をSanctuaryだけに戻しましょう。個人的にサビにおける「Hello」という言葉のセンスは絶妙だと思います。「Hello」でも「こんにちわ」でも良いのですが、こういう挨拶の言葉って、物凄く普通だけど、時に物凄く芝居がかって聞こえる。下手な場面で使うと馬鹿っぽいだけだけど、この曲には良くあってるな、と。
二番のサビが終わると、アコギがサビの持つ高揚感を崩すことなく、エレキに橋渡し。これもやはり、宇宙的響きのソロだと思うのですが、何度も繰り返しても仕様がないので、宇宙的云々の話は省きましょう。
そうすると、最後にサビに一気に来てしまいますね。いつもなら、もう少し、間奏が派手に長く彩られそうな気もするのですが、イメージしてたよりはギターソロは短めに終わって、またサビへ。最後は「たどり着けるよ」でダメ押しなのですが、この語尾をもう少し長くした方がしっくり来る気がするのは僕だけでしょうか。
曲の終わり方はとても王道的。サビの後、曲の勢いを引き継いだまま演奏が続き、最後は静けさの残る終わり方。最後の音の響きが和と哀愁を感じさせます。
結局のところ、曲の感想はすばらしいの一言に尽きます。聞いても聞いても、またもう一度聞きたくなる。飽きが来ないとは違うんですよ。何か聞き逃した、受け取り損ねた部分があるような気がしてもう一度聞きたくなるんです。特に2番のAメロ「わかってる僕は 選ばれし者じゃない」からのくだりを。


Fever
Sanctuaryがひたむきな少年漫画の如きノリとすれば、こちらは差し詰め成人漫画でしょうか。無駄のないシンプルな構成には大人の余裕めいたものすら感じられます。
哀愁を漂わせる前曲のエンディングの空気を吹き飛ばすロックナンバー。松本さんが雑誌におけるコメントでKISSの名を出してましたが、確かにKISSに近い雰囲気はあります。具体的にどの曲かと言われたら、DEUCEととりあえず回答させていただきましょう。そういえば、96年のSHOWCASEでは正しくこのDEUCEをカバーしてましたっけ。
全体的にシェーンのドラムがしっくりハマってるのが印象的な曲。シェーンも大分B’zの音に馴染んできて、次の参加作品が楽しみだな、と思うのですが、そういう時に限ってバンドを一新するのがB’zでもあるので、この曲をしっかり心に刻んでおきましょう。


白い火花
前年のTMGにおけるMy Alibiを強く連想させる楽曲。実際にはMy AlibiはB’zの気配の強い楽曲だったので、この曲も非常にB’zらしいと言ってよいはずなのだが、どうしてもTMGと結びつけてしまいたくなる。そもそも、最近のB’zでここまでストラト臭の強い楽曲はやってない(はず)なので、かつてのB’zより、最近のTMGに関連性を求めてしまうのは仕方のないことなのです。
TMG抜きで考えれば、アルバムの中ではもっとも今までのB’zらしい軽快でノリのよいロックナンバー。新鮮さはあまり感じられないけど、安定した曲なので気軽に安心して聞けます。他の曲が危険というわけではありませんが、特に嫌われることのなさそうな楽曲はこの曲かな、という意味で。
そういう楽曲なだけに稲葉さんのボーカルも非常に安定しています。ライブで歌うのであっても、CDと寸分変わらないコンディションで歌ってくれるのではないでしょうか。そうそう、この曲には小刻みなシャウトがところどころ顔を覗かせているのですが、このシャウトの響き方が非常にライブっぽいなぁ、と個人的に感じる。特に最初の「HEY!」の掛け声が強くライブを思わせるのです。
間奏の部分はちょっと新しいですね。最初ドラムだけになって、ベースソロ、そして稲葉さんの掛け声でギターソロへ。今まで掛け合いめいたものはあったけど、こうやって順繰りに鳴らすパターンはなかった気がする。ギターソロもジャズっぽい感じで中々ない。いや、こういうロックな曲にジャズっぽいソロを入れるのがないという意味です。単純にジャズっぽい楽曲ならBIG MACHINEのブルージーな朝で経験済み。このギターソロもそうですけど、今回はギターソロのパターンが多彩ですよね。楽器やらない人間にも明確に曲ごとに違うことやってるなというのが分かります。
歌詞。この曲の歌詞といったらやはりサビでしょうか。「全開でGO」よろしければ改めて、この部分を30秒ほど凝視してください。・・・見れば見るほど普通ではありえない歌詞ですよね。こんなのを受け入れられるのも一重に「無礼講なLOVE」の洗礼を受けているからと言えましょう。
まぁ、稲葉さんのこの手の言葉のセンスについては今更な感じもありますし、誉めるべきかあきれるべきか少々迷いどころでもあるので、論じるのはやめておきましょう。ただ、メロディにはいつも通りはまり過ぎるくらい、はまっております。
しかし、この「全開でGO」という言葉以外には滅茶苦茶新しいタイプの歌詞ということはないのですね。極端な話「銀の翼で飛べ」と言ってる内容は同じです。不満があるんだったら一回最初からやり直せ、学びなおせ、と。「錆びない風景」も「自分を待つ人」もすぐ側にいるのにいるんだ、と。えぇ、そんな内容です。
なぜ「白い」火花なのか?そんなのは「銀色」がなぜ勇気の色なのか、と同じくらいどうでもよい話です。きっと、リーダーが白のTシャツでも着だしたのではないでしょうかね?
曲は後半、稲葉さんの「Oh yeah」の掛け声の後に、まさしく火花が迸るように大きな盛り上がりを見せてから、アルバムの中でも一際実験色の強い異色作、イカロスへとバトンタッチして終わりを告げます。


イカロス
アルバムの中でも一際、実験色の濃い楽曲です。去年の二枚のシングル、BANZAIARIGATOもかなり変わった曲構成でしたけど、ここまで豪快に、そして頻繁にリズムチェンジする楽曲はないですな。
ドラムの音から始まる、イントロは非常に王道的なバラードの雰囲気が漂ってます。まぁ、バラードといってもRINGみたいに綺麗な感じの曲とか、GOLDみたいに壮大な感じの曲ではなくて、いかにもアルバム向けな素朴な感じの奴ですね。個人的にはThinking of youあたりのイメージでしょうか。
憂いを帯びたメロディにのせて、稲葉さんがブルーな歌詞を悩ましげに歌い上げます。このAメロは歌詞メロディともに、赤い河を個人的に彷彿とさせるのですがいかがでしょう?もっとも、あれはバラードじゃないのですが、メロディとか、稲葉さんの歌い方が似てる気がします。
しかし、この物憂げなバラードの佇まいは、サビで一気に姿を変えてしまいます。「せっかくのバラードだったのに・・・」と惜しむ暇もありません。別の何かが迫ってくるようなドラムの音に導かれて、何かが吹っ切れたようなサビが押し寄せてきます。実際、キレてしまっているんでしょうね、曲の中で。この際、この時の曲変化がThe BeatlesのI ME MINEに似てるということは置いておきましょう。
「とんでみせろ」と自分に向けて命令しているのが非常に面白い。そして、ボーカルの後には、近年では珍しい後追いコーラス。差し詰め、こちらHELP!でしょうか。それはちょっと強引に過ぎますね。何度も繰り返し自分に向けられた声、という意味ではSanctuaryで聞こえてくる声と同じものなのかもしれません。
ただ、Sancturayは自ら全てを投げ出す勇気なのに対して、こちらは、「もうどうしようもないし、アテもないけど、とりあえずやってやろうじゃないか」という開き直りというか無謀さみたいなものが垣間見られるのも確かです。まぁ、タイトルがそもそも、蝋で固めた羽で飛ぼうとしたイカロスですから、無謀な歌詞というのは当たり前なのですが。そうせざるをえなかった主人公の悲哀みたいなものを裏に感じ取ってあげましょう。
ただし、イカロスと同じように飛ぶのに夢中になりすぎて、太陽に近づきすぎたなんてことにならなければよいのですが。何となく、エンディングの寂しげな感じがそういうバッドエンドになってしまったのではないか、という不安を煽り立てますね。


BLACK AND WHITE
THE CIRCLEの中でもっともヘビーな一曲。そのヘビーさから、想像するものはやはりTMGのRED, WHITE AND BULLET BLUESなんですけど、実はこの曲はBIG MACHINE時のデッドストックで、こちらの方が先にできていたそうです。これを聞けば、いかにBIG MACHINEというアルバムはB’zという機械をセーブして作られた作品だったのかということが分かるでしょう。
そういうわけで、ここではドラムにブライアン・ティッシーが登場。彼のドラムが曲のヘビーさに一役も二役も買っているのは言うまでもないことです。
最初の「Ah〜ah〜ah」という叫び声が、なんともエスニックな感じでかなりかっこいいです。この声で、リスナーは再び冒頭のエスニックな雰囲気に引き戻されるわけですね。これぞまさしく輪廻。
ボーカルがいつになく、ねちっこいです。GO★FIGHT★WINもかなりねちっこかったけど、後ろのギターの音もあいまって、もっとねちっこいです。稲葉さんのこういう歌い方は時に艶かしさも匂わすのですが、ここまでしつこいくらい、ねちっこいとやたら嫌味っぽく聞こえてきますね。実際、こういう曲では歌詞も嫌味ったらしいのが多いです。
コブシヲニギレなんかが良い例でしょうか。あの曲も歌詞共々相当しつこくねちっこいですよね。こちらでは、Aメロから誰に腹を立てているのか「つかまえてごらんよ」「知りたいんだろ」と、挑発に近い形で歌詞が進んでいって、Bメロで「それは時として不幸」とばっさり。疑問形で投げかけて、最後にばっさり相手を切り捨てる。口論の基本ですね。
そして「」で括られたサビ。相手方の主張ですね。二者択一、all or nothing。非常にはっきりした物事を好むのが相手みたいです。二番で分かりますが、相手は正義感の持ち主でもあり、はっきりと物事を分けることで全部上手くまとめようとする人みたいですね。
それは、悪いことじゃないけれど、行き過ぎればただの杓子定規な人。そこに欠けるのは差し詰め、想像力、臨機応変さといったものでしょう。
ところで、口喧嘩をしたことがある人なら分かると思いますが、喧嘩では言葉がなかなか通じないことが多々あります。向こうが、妥協というものを知らず、己の正しさのみをひたすらに信じている場合には、こちらの言葉というのは届かないものです。何せ、向こうが文字通り聞く耳を持たないわけですから。
この曲でも相手はそういう人のようで、最後のサビの一行には主人公による憐れみの念すらこもってます。「勝手に言ってろよ」といった感じでしょうかね。
二番のサビが終わると、主人公は相手からふと、目をそらして、リスナーに向かって「アナタハナニイロ?」と問いかけてきます。ひたすら正義を求める白か、その真逆である黒か、はたまた清濁併せ持つ灰色か。
そこで、ギターソロがくるわけですが、これまた混沌という形容が相応しいようなギターソロ。慣れてしまうと妙に癖になって、頭から離れないギターソロでもあるわけです。
再び、相手の主張が一言一句違えずに繰り返されて、主人公から出た言葉はもはや諦めといった感じが強い。「永遠に続く憂いの理由は 自分自身だと最期まで気づかないまま」簡単に言ってしまえば「馬鹿は死ぬまで治らないな」とのこと。
向こうに根負けした形で、議論放棄。最後の言葉を放った気分は、さぞかしガリレオの気分に近かったでしょうね。最後の怒りの咆哮めいたものをあげて、曲が終了。
個人的に久々にヘビーで、歌詞も面白いし、シャウトもあるしで好きな楽曲です。特に「空に穴をあけるのは〜」の一節が好き。そりゃ、そんなこと考えてたら眠くもなりますわな。


Brighter Day
アルバムのラストを飾るナンバー。曲調としてはバラードと呼ぶべきか、ミディアムチューンと呼ぶべきか微妙なところ。メロウな楽曲とでもしておきましょう。久々の英詞の楽曲ですね。何気にメロウな楽曲の英詞というのは初めてですね。消えない虹の英語バージョンがBUZZ!! THE MOVIEに入っていた程度で、CDでは初めてのはずです。
「Ah,a-ah」という稲葉さんの寂しげな響きのするコーラスが全編を通して非常に特徴的な曲なんですが、それ以外の部分については、英詞であることを除けば至ってまっとうなナンバー。日本語詞だったら、B’zの過去のどのアルバムに入ってもそんなに違和感はないんじゃないでしょうか。
しかし、それ故に変わり種揃いのこのアルバムの中では、他とは違う感じを醸し出してます。とはいえ、前作BIG MACHINEのラストを飾ったROOTS程の輝きは個人的にないですけどね。
Aメロは軽やかな感じで、英詞がするすると紡ぎ出だされていきます。歌詞の方もわかり易い単語で、簡単に情景を思い浮かべさせてくれる。ある意味、日本語早口歌詞よりよっぽど聞き取りやすいです。英語が聞き取れない方でも、今回は歌詞カードの横に日本語訳が書いてあるので一安心ですね。
個人的に二番の出だし、「Music in the street on Saturday night〜」って部分が好きなんです。ちょっとビリー・ジョエルPIANO MANみたいでムーディーじゃないですか。実際に、聞こえてくる音楽や周りの笑い声が何となく悲しい気分にさせてしまうことってありますよね。深刻な悲しみじゃないんだけど、何となく憂鬱な気分。BON JOVIが確か、土曜の夜は人生の絶頂と例えたのですが、他人は今、人生の絶頂なのにひきかえ自分は・・・なんていう風に肩を心なしか落としている風景が思い浮かぶようです。
サビでは、誰かに語りかけるように救いを求めます。太い声で「Oh〜」と歌えるのは今の稲葉さんだからこそ。ちょっと前だったら、この太さは表現できなかったでしょうね。
しかし、曲の展開が余りに王道的で余り書くことがないんですよね。歌詞の方はシェーンに協力を仰いだためか、割と野性のENERGYに似た雰囲気をもってますし。
激しいサビの後にやってくる、静かなギターソロはなかなか良い。ギターソロのイメージは何故か柱時計。柱時計の振り子が右に左に動いてるイメージがするのです。何故と言われても非常の困るので、聞かないでください。
さて、普通をさっきから連発してますが、僕はこの曲好きなんですよ。最後のサビの歌詞のおかげで。最後の歌詞では「今僕は 輝ける日々へと続く道を見つけたよ」と明確なハッピー・エンドが描かれている。今までの歌詞だったら、野性のENERGYでも何でも良いのですが、この手の歌詞の曲って、一歩を踏み出すところまでは描かれていても、それがどんな道の上にあるのかまでは分からなかったんですよね。それはそれで、リスナーの想像を膨らませるのですが、こういう明確な形で描かれていると個人的には嬉しい。
僕は、ハッピー・エンドが好きなのです。歌詞でも小説でも、文章に流れのあるものなら(つまり、刹那の悲しみの感情を歌ったものは話が別ってこと)どんなにベタで馬鹿らしくても、ハッピー・エンドの方が好き。悲劇にも美しさがあるんですけど、悲劇にしかなりえない構造というのが好きじゃない。だから、もう一度キスしたかったみたいなパターンの歌詞はそんなに好きじゃないですね。
余りに陳腐で馬鹿らしくて、笑ってしまうのも、笑いにはやっぱり変わりないですし、悲しみをたたえた寂しすぎるエンディングよりかは、やっぱ笑ってたほうが良いと思うのです。
そういう意味ではこのラストは最高ですね。アルバムの流れからしたら、BLACK AND WHITEで終わった方が締まるだろうし、あるいはARIGATOをこの曲の後に置くとぴったりな感じなんでしょうけど、それでも、これで良かったなと思います。