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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

DINOSAUR

DINOSAUR (初回限定盤)(Blu-ray付)

DINOSAUR (初回限定盤)(Blu-ray付)

EPIC DAYから実に2年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバムとなりました。C'monからEPIC DAYよりかは短いインターバルなのですが、B'z - EPやXXVを挟んでいたEPIC DAYに比べると、今回の方がB'zとしての潜伏期間は長かったように感じます。
EPIC DAYを振り替えると、ロックバンドとしてのB'zの立ち位置を再確認するようなアルバムだったように思います。10曲と言うレコードを念頭に置いた曲数に、オーソドックスなロックサウンドで纏め上げられた作風には、B'zの基本が込められているように感じました。
今回、アルバムにはDINOSAURという堂々たるタイトルを名づけられました。恐竜から転じて、古臭い、時代遅れという卑下した意味合いも持つ単語のため、BrotherhoodやELEVENのようにロックに振り切るのかな、と思ってたのですが、どちらかと言えばMAGIC寄りのアルバムでB'zの幅広さが表れたアルバムとなりました。
このアルバムの編曲を手がけたのは、YUKIHIDE "YT" TAKIYAMA。ACTIONから長らくB'zの編曲を手がけた寺地さんはStill Aliveのみの起用となりました。たまたまかもしれませんが、97年のSURVIVEでは徳永さん、2007年のACTIONでは寺地さん、そして2017年の本作ではYTと10年刻みでメインアレンジャーを変えてるんですね。節目の年の前に大きく変えるというのがB'zらしい。

1. Dinosaur
恐竜が咆哮しながら、大地を駆けずり回るような重厚なギターのイントロから始まるタイトル曲です。松本さんが冒頭からこういう形で弾き倒すスタイルではライブでは比較的よく見かける気がしますが、曲としては珍しい。重厚なイントロとは裏腹に、本編はLas Vegasのノリを思い出させるからっとしたロックナンバーに仕上がっています。バンドも2名体制なので、長尺のイントロと本編は別々で録ったものを繋げたのではないでしょうか。
付属の映像にも「THE ONLY SURVIVING HARD ROCK BAND IN JAPAN」と出てきますが、J-POPのシーンの中でいわゆる昔ながらのハードロックのスタイルでやってるのはもはやB'zだけというスタッフの話から膨れ上がった歌詞になってます。いろんな意味で恐竜とB'zを重ね合わせたのは上手い表現だなと思ってます。
今も第一線ではありますが、B'zが第一線で派手に活躍してたのは、やはり90年代です。「過去の覇者」「遺物」という自虐する意味合いで恐竜という意味に取れます。一方で恐竜と言えば、進化を続けながら、長い時代を生き抜いてきた生物です。これを音楽界に置き換えると、B'zにぴったりです。また、歌詞でも「誰もまだ俺の本当の色を知らない」といった具合に触れていますが、今なお姿かたちや声に諸説あり、未知の存在であるのが恐竜です。まだまだ掘り起こしていない新しいB'zがあるんだぞという力強い宣言にも聞こえてきます。
タイトルナンバーの系統としては、RUNやBrotherhoodのような語り掛けるような曲ではなく、SurviveやBIG MACHINE同様のB'z自身を歌った曲ですが、どことなく不敵な感じがしますね、この曲は。サビの「真似できんだろう」という歌詞から「やれるもんならやってみろ」という感じですし、「Call me a dinosaur」も「どうぞ時代遅れと呼んでください」と言ってるように聞こえてきます。
ライブの一曲目を飾るに相応しい曲かとも思いましたが、バボットを利用した演出の兼ね合いで、後半戦に登場しました。イントロでは松本さんがランダムスターを使って引き倒し、稲葉さんのシャウトで幕を開ける、まさにDinosaurという感じの演奏でした。もっとも、バボットは目を光らせ、煙を吐いたりで、恐竜というよりは怪獣になっていましたが。

2. CHAMP
久々に2曲目がアルバム曲となりました(ACTION以来でしょうか)。アルバム曲の中では最も早い段階でセブンイレブンのCM曲としてお披露目になり、今年のIn Your Townでも披露されていた楽曲です。ultra soulを多分に意識して書かれた楽曲で、イントロからAメロの哀愁感のあるメロディはもうモロにultra soulです。もっとも気弱な自分を鼓舞するultra soulに対して、CHAMPは最近の稲葉さんらしい自分を追い込んで高めていくタイプの楽曲です。のっけから「バックミラーはいらない」と過去を振り返ることを一切拒否します。2番では「呆れた眼差しでサヨナラするがいい」「寂寥感」「逆風感」といった具合で、孤独に立ち続ける姿を描きだしています。この辺はDinosaurからの曲が続いていることを強く感じます。
「ヒトニハワカルマイ」というブレイクを挟んで、思いっきり声を張り上げる強力なサビが登場します。ラストの「ぶっちぎる」という締めのフレーズにも重量を感じます。セブンイレブンを意識したとはいえ、B'zにしてはえらく挑戦的な歌詞ですが、やっぱり哀愁感を漂わせているのがB'zです。「I'm a champ」のフレーズも、自分はチャンピオンなのだぞ、圧倒的じゃなきゃ意味がないんだぞと言い聞かせることで自身を奮い立たせる、そんな歌詞なのではないでしょうか。
ライブでも2曲目を飾りました。Dinosaurとは逆に後半戦を飾る曲かと思ってたのですが、完全に読み違えてましたね。自分は東京ドームとさいたまスーパーアリーナの2日に参加しましたが、稲葉さんの声の調子は非常によく、最後のサビのフェイク含めて完璧に声が出ていました。もちろん、「ぶっちぎる」のフレーズは観客全員の合唱でした。

3. Still Alive
シングル曲ではありますが、アルバムのリード曲としてプロモーションで積極的に披露されている楽曲です。アルバムの中では唯一の寺地さんによるアレンジ。イントロのアカペラから、隙間を縫うようなシンセの音に至るまで、ACTIONから続く体制による安定感、王道感を感じることが出来ます。特典であるライブ映像にもアルバム中唯一収録されていますが、フェスならではの非常に高いテンションでの演奏を聞くことが出来ます。打ち込みのピアノに合わせたイントロも美しいですが、ライブでのギターの音にあわせた少しブルージーなイントロも甲乙付けがたい。
歌詞の内容はここにきてようやくのラブソングですが、Dinosaur、CHAMPと続くと、Still Aliveという曲名にも何か意図があるのではないかと思ってしまいます。実際には関係ないのでしょうが、曲順だけは狙っているかもしれません。
ツアーでは、フェスのアレンジをそのまま持ち込み、本編最後を飾るテンションの高い一曲となりました。一番のサビでテープが飛んだり、掛け声よりは手拍子がメインになるのが、フェスとの違いでしょうか。なんとなくですが、Pleasure2018でもこの曲だけは引き続き選曲されそうな気がします。

4. ハルカ
頭から3曲連続でテンションの高いロックナンバーが続きましたが、ここでがらりと雰囲気が変わります。徳永さんが演奏に参加したのかなと思わせるような、強いチョッパーベースのフレーズで幕を開けます。ベースの奏者はスティーブ・ビルマン。Electric Island, Acoustic Seaのメインベースとして起用され、ツアーも一緒に回ったベースマンです。
短いメロディーをたくさん詰め込んでる曲で、お洒落なイントロから始まり、立て板に水のごとく詰め込まれたAメロ、エコーのかかったBメロ、空高く舞い上がるようなキャッチーなサビメロと流れたかと思うと、最後にサビが転調して囁くようなフレーズが出てきます。ライブでは2番以降のBメロを思いっきりフェイクして語尾を伸ばしているのが印象的でした。
小まめに変わるメロディを裏で支えているのが、斎藤ノヴさんのパーカッションです。面白いことに斎藤さんも10年毎に参加していて、アルバムとしてはSURVIVE、ACTIONに続く3作目の参加です。とはいえ、SURVIVE、ACTION共に1曲ずつの参加だったのが、今作ではほぼ全面的に参加しています。レニー・カストロのパーカッション参加もありますので、パーカッションがないのはStill Aliveとルーフトップのみです。この辺はお互いに楽器を多用したコラボの影響がありそうですね。
最後の稲葉さんのシャウトはアルバムの中で一番切れのあるシャウトです。ライブではマラカス振りながらシャウトしてそうなイメージがありましたが、あいにくマラカスは振りませんでした。

5. それでもやっぱり
出会った頃とすっかり変わってしまった恋人について、恐らくは女性目線で歌った曲です。歌詞から察するにそれなりに大人の目線のはずなのですが、「仲良しな時代」という幼いフレーズが入るのがEPIC DAYにはなかったピアノを基調としたバラードなのですが、何となくサビ頭のメロディ運びが君を気にしない日などに似ているような気がします。同じ二人を君を気にしない日などを男性目線、それでもやっぱりを女性目線で歌ったと考えると、ちょっと面白いかもしれません。
この手のタイプの曲は松本さんは表に出ずに、ギターソロもゆったりと弾くというのが最近のパターンなのですが、2番のバッキングで割りと大き目の音でギターが入り始め、しっかりとしたギターソロを聞かせてくれます。冒頭のピアノによる静かな雰囲気はなんのそのといった具合です。ライブでは増田さんの短いソロを頭に加えての演奏でした(最近のバラード演奏にはお馴染みのパターンですね)。

6. 声明 
Still Aliveと両A面で発売されたシングル曲です。ライブのエンディングのような演奏から始まるイントロが非常に印象的な一曲です。70年代ハードロックというアルバムのコンセプトに一番沿っているのは、この曲かなと思います。シングルリリース当初はやや地味な印象も受けましたが、時間がたつと癖になって聞き耽ることが多い一曲です。
ライブではIn Your Town、LIVE DINOSAURともに1曲目を飾りました。LIVE DINOSAURでは、十字のライトを背に松本さんが登場したかと思うと、ステージ中央の高い位置で稲葉さんが演説台を模したセット上で歌うという演出でした。声明というタイトルにかけたシンプルな演出ですが、軍服を彷彿とさせるロングコートを羽織って、台の上で一人で歌う稲葉さんは中々新鮮でした。タイトなロックナンバーですが、キーはそこまで高くないため、2曲目のCHAMPへ繋げるための助走としても優れたナンバーです。

7. Queen Of The Night
個人的なイメージではこの曲からが後半戦です。EPIC DAYで言うところのB面はこの曲からじゃないでしょうか。ベースの艶やかな演奏から始まるちょっと異質な楽曲です。松本さんもラジオでこの曲をアルバムの中でも異質と評していましたね。
和訳すれば夜の女王という仰々しいタイトルですが、実は月下美人という花の英名からとられたタイトルであることを稲葉さんがラジオで明かしています。和名の場合にはゲッカビジンと片仮名で表記しても良いようですが、なんとなくそっちの方が稲葉さんっぽいですね。漢字でもなく英語にしているのはKing Of The Streetとの対比を意識したからでしょうか。
花言葉の「艶やかな美人」という言葉がしっくりくる曲調に加えて、夜から朝にかけて咲く花をモチーフに、人知れず頑張る強い女性を歌い上げます。
物憂げなメロとは裏腹に、サビがとてもキャッチーでアルバムの中でもCHAMPに並んで頭に残るサビです。「月夜に開く白い花びら」というフレーズもメロディとぴったり重なっています。聞きなれてくると、裏でポコポコ鳴っているパーカッションが不思議なグルーヴ感をもたらしてるのに気づきます。
最後は「You are the queen of the night」のコーラス。YTと稲葉さんによるコーラスですが、これが女性コーラスだったら完全にThe 7th Bluesのノリですね。
アルバムの中でも際立つ出来のように思いますが、アルバムでは唯一ライブでの披露はありませんでした。夢の中で逢いましょうやToo Youngもそうですが、歌謡曲テイストの楽曲は演奏されないことが多いように感じます(全てではありませんが)。歌謡曲テイストというわけではありませんが、デッドエンドのようにPleasureでいきなり披露される可能性もありますが・・・。

8. SKYROCKET
クラップ音にざっくりとしたギターのリフ、リバーブのかかったボーカルとくれば、DAREKAを思い出します。明るいメロディに乗せてさらりと寂しい歌詞を歌っていたDAREKAですが、SKYROCKETは明るいメロディに乗せて明るい歌詞が歌われております。
SKYROCKETは直訳すれば打ち上げ花火となります。歌詞にも「祭典の日」とあるように、お祭りの日に花火が打ち上げられている時の平和な風景を歌い上げています。「ここはひとつ譲り合いましょう」というフレーズはいかにも稲葉さんなのですが、個人的にはちょっと珍しく思える歌詞で、物語性や主体性が希薄だなと勝手に感じています。花火をモチーフにした絵を見ながら歌っているような不思議な錯覚を覚えます。
ブラスが入ってどんどん派手になるDAREKAとは違って、タイトなリズムとメロディをキープし続ける今のB'zらしいサウンドです。サウンドのイメージとしては実はアマリニモの方が近いかもしれません。音の隙間を縫うように「Shalala・・・Skyrocket」とコーラスが入ってきます。今回、サビでのハモりは少ないのですが、結構印象的なコーラスワークが多いですね。
このコーラスは観客全員でハモりましたが、少し高めのファルセットになるため、大合唱というには少しボリュームが足りなかったかもしれません(ハピネスを演奏した時もそんな感じでした)。この曲でステージの左右に人手で架け橋が渡され(最初はひっくり返った車のセットが置いてあるのです)、B'zの二人が端っこの方までやってくるようになりました。東京ドーム、さいたまスーパーアリーナ共に下手の端の方にすわっていた身としてはありがたかったですね。

9. ルーフトップ
シリアスなギターのリフが印象的なミドルテンポの楽曲です。曲調はピルグリムに近いものがあるでしょうか。Aメロ、Bメロが頭でインパクトをつけてるのに対して、サビは少しずつ階段を上っていくようなメロディです。ラジオでもIN THE LIFEを聞いた時の印象を思い出したとDJの方に言われていましたが、どこか90年代的な雰囲気のする楽曲です。「wow wow」という男くさい低いコーラスが今作ならではです。ライブでも1番終わり、最後のコーラスは稲葉さん自らしっかりと歌い上げました。
映画で見た屋上ではしゃぐ男の子と女の子のシーンを思い出して書かれたというだけあって、歌詞はドラマ・映画的なものを感じます。色鮮やかな思い出をたどるAメロに対して、サビでは色褪せた一人の屋上を描いています。この辺の歌詞の構成はClassmateも同じで稲葉さんが得意とするパターンですね。ライブでは街の夜景が映し出され、サビではミラーボールが点滅する演出でした。個人的には学校の屋上のイメージがあるので、ちょっとライブの演出はイメージとずれてるかなという感じです。分厚いギターについては、いつも通り松本さん、大賀さんの二人で目でタイミングを図りながらきっちり演奏しました。

10. 弱い男
ACTIONで言えばわるいゆめ。MAGICで言えば誰にも言えねぇ。C'monで言えばボス。そんな立ち位置の楽曲です。頭から強いリフに「弱ーい」のファルセットが重なり、くすりと笑わされます。「情けない、弱い男を描いた曲を力強く歌いたいと思います!」という稲葉さんのMCのとおり、何をするにも煮え切らない男の様を描きつつも、ボーカル含め演奏は非常にパワフルです。「怒りを忘れて〜」という出だしなのに、怒りを含んでそうなビリビリとした声が響きます。
本来は非常にファンクな曲調だと思うのですが、テンションで強引にロックに振り切っています。間奏ではジャズの明るいノリを反映させたギターソロから、グレッグ・ヴェイルによるサックスソロが炸裂します。この間奏だけNew Horizonの世界に切り替わってます。enigmaでもグレッグは起用され、サックスソロを吹いていますから、松本さんが本当に彼のサックスを気に入ってることがうかがえます。サックスソロの裏では緩やかに音階を上げていくコーラスがいい味出しています。
ライブでは間奏をフィーチャーした形で、バンドメンバーが長めの演奏を披露。この間、スクリーンにはステージ下の映像が映し出されていましたが、恐竜の着ぐるみの人がいたりとちょっと変わった映像を映し出していました(ステージ裏は異世界とでも言うような演出でしょうか)。曲を始める前には、リフを抜き出して稲葉さんが遊んで笑いを誘いました。稲葉さんが両手を抱え込むようにしゃがみ込むと、バンドが「ダダッ!」と頭のリフを刻むというものですが、さいたまでは危うく曲を始めそうだったシェーンが慌ててドラムを止めるシーンが映っていたのを覚えています。
サビのフレーズではアリーナの「弱い男」達を映し出し、気づいた男性諸氏が良いリアクションしてました。サックスソロは再現できないので、増田さんの気合の入ったキーボードソロに差し替えられました。間違いなくライブで一番化けた一曲でしょう。

11. 愛しき幽霊
曲のアイデア自体は2013年の正月にハワイで出来ていたという楽曲。冒頭から聞こえる甘いギターの音がハワイの空気を運んできます。英語に訳せばLOVE PHATNOMとなる曲ですが、当然何のつながりもありません。いなくなった人を想うというモチーフは同じですが、未練たらたらのLOVE PHATNOMに対して、こちらは愛すべき人がいないことへの深い諦念と、再会へわずかな希望を抱いている落ち着いたトーンのバラードです。
この曲調には珍しく、最後に転調があり、ファルセット主体の全く異なったメロディが降ってきます。MOTELのようなドラマチックさがあるわけではなく、部屋に残った甘い香り、熱を捉えたようなパートです。桑田佳祐さんのソロ楽曲に愛しいミーナという楽曲がありますが、最後のパートや全体の雰囲気はよく似たものを感じます。もっとも、桑田さんの場合にはハワイではなく、やはり湘南の海の匂いがしてきますが。
ドーム公演では、稲葉さんが各ドームのゆるキャラを抱えたり、ホームチームの帽子をかぶるなどしながら歌われました。ステージの左右端に松本さん、稲葉さんが腰かけてゆったりとした雰囲気で演奏されました。この演出を受けて、福井県では恐竜のゆるキャラであるラプト君がTwitter等でぜひライブ演出に使ってもらいたいとアピールしていましたが、サンドーム福井は名前こそドームを冠していますが、実際にはアリーナクラスのため、この演出はカットされてしまうというエピソードもありました。ただし、ラプト君のぬいぐるみ自体はアピールの甲斐あってよく売れたそうです。

12. King Of The Street
Queen Of The Nightと対になるようなタイトルですが、全くの偶然とのこと。トミー・クルフェトスによるタイトなドラミングに、ゲーム音楽のようなギターリフが重なります。街角に暮らす浮浪者の視点で街の風景を描くという面白い試みです。「教えてくれ知事」のフレーズの後の「ちじっ!」と呟くのが印象的です。オーソドックスなハードロックのスタイルを貫いていますが、ハルカ同様にサビでは意外にキャッチーなメロディが飛び出します。
『真・三國無双8』のタイアップがついていますが、ノリが良いということ以外は特段タイアップとの関連性がありません。
ライブでも後半に登場し、ギリギリchopばりにタオル回しを煽りました。今回の紫タオルはこの影響でよく売れたのではないでしょうか。

13. Purple Pink Orange
可愛らしさを感じさせるタイトルとは裏腹にドラマチックな大作がラストを飾ります。歌詞の冒頭にもありますが、少しずつ色を変えていく空の色を表していますが、稲葉さん曰く最悪な気分の時に見た空の色だそう。壮大な空の色を見据えながら、後悔と希望を重ねている歌詞ですが、歌詞自体は極めて抽象的で、空の色以外は具体的なイメージがわきづらい内容です。
この曲については、主役はやはり松本さんでしょう。歌詞であれこれ書くよりも、音を聞いてそれぞれのイメージを膨らませてくれという稲葉さんの無言のメッセージなのかもしれません。イントロのストリングスと混然一体となって聞こえてくる音色やドラマチックなギターソロと、これでもかと言わんばかりに松本さんの音色が溢れています。壮大さや構成から、光芒が頭にちらつきます。光芒といえば、やはりラストの感動的な転調です。この曲も最後にAメロに戻り、いざ転調か?と思わせたところで唐突に曲が途切れます。映画が突然ブラックアウトして終わるような演出ですが、初聴時は多くの方が「え?終わり?」となったのではないでしょうか。
ライブでは、タイトルにそって紫を基調とした照明の中で、淡々と歌われました。光芒のように歌詞含めてアルバムのハイライトのような楽曲ですと、ライブでもハイライトを飾りますが、Purple Pink Orangeや命名のようにアルバムとは関係のないところで壮大な楽曲はライブでは取り残されてしまうことが多いですね。一方でIn Your Townでは同系統の世界はあなたの色になるがハイライトを飾ったとのことなので、テーマが明確なアルバムツアーよりもIn Your Townのような構成の中で、曲単体の方が映える楽曲かもしれません。

全13曲のボリューム感のあるアルバムでした。時代遅れなサウンドをやっているロックバンドであるということを飲み込んだ上で、それでも変われる部分はないのか、新しい音はないのかということを模索した結果、出来上がったアルバムだと思います。そんなアルバムですが、素敵な特典がついています。2017年8月に開催された野外ロックフェスティバル『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』に出演した際のライブ映像がそれです。これまで何度かフェスに出演したことはありますが、映像を丸ごと公式に発表するのはこれが初めてです。

1.さまよえる蒼い弾丸
2.Liar! Liar!
3.さよなら傷だらけの日々よ
4.有頂天
5.裸足の女神
6.イチブトゼンブ
7.Still Alive
8.衝動
9.juice
10.ギリギリchop
11.ultra soul

個々の曲については省きますが、シンプルながらも非常に見ごたえのあるライブです。単純ですが、6万人が一堂に会しているだけでも大した迫力です。日産スタジアムは7万人以上を収容しますが、平地ではありません。渚園も5万人と言われていますので、その人数の多さが知れます。通常のLIVE-GYMならば、そこには堂々たるステージセットや演出がついてきますが、与えられているのはシンプルなステージと照明のみ。あとはバンドの身一つで勝負といった具合です。
「THE ONLY SURVIVING HARD ROCK BAND IN JAPAN」という文字が荒く映像に出てくると、ドラムの打ち込み音に乗せてバンドが登場するシーンから始まります。フェスのオープニング仕様にアレンジされたさまよえる蒼い弾丸が始まるや否や観客の大きな歓声が爆発します。当然B'zのLIVE-GYMでも観客はありますが、やはりフェスとなると少し毛色が違っていて、歓声だけではなく野太い掛け声が曲のいたるところで聞こえてきます。一番顕著なのがLiar!Liar!の冒頭で、長めのイントロが響く中、どこからともなく大きな掛け声が湧き上がるのですが、個人的にこのシーンがこのライブの中で一番好きですね。
裸足の女神、イチブトゼンブ、ultra soulを除けば、飛びぬけたヒットソングや知名度のある曲で構成されたセットリストではないのですが、関係なしにテンションを上げていく観客、それにあわせて更にバンドの演奏が気迫を増すものですから、画面から伝わる熱量が本当に凄いです。今回はやりませんでしたが、まさにSUPER LOVE SONGの「相乗効果で良くなろう」そのものです。会報で稲葉さんは早々に疲れてしまっていたと告白してましたが、のっけからステージを右へ左へ走り回りながら歌う稲葉さんを見ればそれも納得です。
Still AliveはLIVE DINOSAURでも同じアレンジが施され、クライマックスに配置されましたが、やはりこのフェスの熱量とはちょっと違うように感じましたね。ひょっとしたら、RISING SUN ROCK FESTIVALで演奏した際には同じ熱量があったのかもしれません。
一度再生したら最後、アンコールのultra soulまで一気見してしまう魅力がこのライブにはあります。