発売から1週間ほどが経ったのだけれど、INABA/SALAS、Maximum Huavoの簡単な感想です。
Mujo Parade ~無情のパレード~。歯切れのいいギターのリズムに、硬めのドラム音、どことなく人を不安にさせるシンセが響く1曲目です。稲葉さんのボーカルも投げやりな調子のAメロから、少し荒っぽいBメロ、感情的なサビとメリハリをつけています。世の中への不満と自身への皮肉であふれた歌詞で、「愛情は給料何か月分?」のフレーズが強烈。試聴部分だけではなく、ギターソロの後に飛び出る意外なほどに冷静な転調パート含めて聞くと納得の曲展開。
U。アルバムのキラーチューン。スリリングなイントロから、オペラチックな仰々しいボーカルで幕を開ける。1曲目に引き続きブライアン・ティッシーの奏でる力強いドラムに導かれて、メロディが流れ出てくる。スピーディーな展開の中に絡んでくるコーラスが気持ちいい一曲。個人的には「人類の謎にキリはなし」のフレーズも歌い方もツボです。歌詞はU=Youでしょうか、届かないような相手を賛美するタイプに楽曲。
KYONETSU ~狂熱の子~。MVの時点から分かっていましたが、Uと双璧をなす楽曲です。一心不乱の歌詞にライブの熱気をつけ足したような熱い歌詞が曲を盛り上げる。サビの高揚感と観客を意識したリズミカルな「その気になれよ」のパートは音源で聞いていても楽しい一曲。
Violent Jungle。一番最初にサラスが稲葉さんに送ったという楽曲。世の中の色んな怒りを押し込めた歌詞で、Mujo Parade ~無情のパレード~と同じような雰囲気が漂う。サビ頭で「電光石火」って歌ってかっこ良いメロディってあんまりないんじゃないかな。ギターソロから終盤にかけての展開がやたらドラマチック。かっこいいけど意外とライブでは乗りにくいタイプの楽曲かもしれない。
Boku No Yume Wa。バラードというわけじゃないのだけど少し箸休め的な楽曲。ボーカルへのエコーのかけ方のせいか、どことなく90年代頭あたりの空気があって、ノスタルジックな気持ちになる楽曲。「Wait」「Hey」の可愛らしい感じの声がなぜか癖になって残る楽曲。ギターソロの代わりに稲葉さんの「オーオー」という声とシンセで間奏をつなぐので、ある意味ではずっとボーカルの楽曲。
Demolition Girl。ブンブン振り回すようなベースラインに陽気なメロディが乗る。MVが作られただけあってアルバムの中ではポップな仕上がりになっている。Demolitionは解体、破壊という意味がありますが、要は色々な状況を愛で打破していく人というくらいの意味かと。中間で語りが入るのだけど、珍しく語りが歌詞カードに記載されている。
IRODORI。先日、サラスと稲葉さんがアコースティックなオンラインセッションをしてYouTubeに公開したことで、株が急浮上した楽曲。「家」にかかる歌詞を少しだけ変えて昨今の状況にぴったりの歌に仕上げていたのは流石。「ああどんな辛い試練も~」「絵になるように生きてみよう」といった歌詞とメロディが染みる一曲。オンラインセッションの素朴な演奏の方が曲の良さが伝わった気もするけれど。音源でも思わず手拍子したくなる。
INABA / SALAS “IRODORI” session
You Got Me So Wrong。気分的にはこの曲から後半戦。前作でいうところのMARIEみたいな立ち位置で非常にシンプルなロックンロール。変化球気味の曲が多い中で、ストレートな展開がとてもありがたい。シンプル過ぎたという自覚はあるのか、間奏だけはちょっとLED ZEPPELIN的にこねくり回した感じ。
Bloodline。これも前作のWABISABIとNISHI-HIGASHIを組み合わせたような楽曲。内に内に反響し続けていくようなメロから、耳なじみの良いメロディに移行していく。歌詞はちょっと面白い。親から子への思うところを汲む意思と外に出てみたい自由な気持ちを歌う。最後はどことなく大団円的なムードの合唱になるのが、映画のワンシーンのよう。
Take On Your Love。これも比較的シンプルなアレンジの楽曲だけど、サラスの短いギターソロが冴えわたる楽曲。アルバムの中では一番短い曲なんだけど、なんおなくセッションの中から出来上がったようなラフな印象を受ける楽曲。
CELICA。トヨタセリカ。これも歌詞から曲からノスタルジックな空気が強い楽曲です。70年代とか80年代のイメージです。エコーの強くかかったメロから、少し泣きたくなるような感じのサビへ。惜しむらくはサビが進むにつれてメロディが手放されてしまうこと。
CELEBRATION ~歓喜の使者~。TROPHYもそうだけど、一曲くらいは生々しくて喧しい楽曲を作りたくなるんでしょうか。野性的な印象の強い楽曲ですが、同時に攻撃的な歌詞が多いアルバムを友との祝杯というポジティブな内容できれいに締める楽曲でもある。頭から聞こえるカチャカチャした音が聞いていて結構楽しい。
以上、12曲。各所のインタビューでも触れてるけれど、前作よりもずっとアグレッシブなアルバムに仕上がっている。本作を聞いてから前作を聞くと、前作が凄くバラエティ豊かな内容に聞こえてくる。シンセと独特のコーラスを多用したアレンジが随所で出てきて、INABA/SALAS節のようなものが確立されている。
一方でアクが強いなぁと感じるのも確かで、いわゆるバラードに類する曲やストレートなポップもないので、3曲目くらいで無理という人がいても不思議ではないアルバム。曲もそうだけど歌詞も中々にキツい言葉遣いが多いイメージ。前作に足りなかったアグレッシブな曲ばかりなので、多分ライブでやったらかなり盛り上がったんじゃないかなと思う。
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- アーティスト:INABA/SALAS
- 発売日: 2020/04/15
- メディア: CD