ゴールデン・アルバム

「ゴールデン・アルバム」 初回限定盤C

金爆、初めてのオリジナルアルバムです。それまでのアルバムは、シングルを集めたり、企画盤だったり、両方の組み合わせだったりということで、アクの強い曲がてんこもりのお祭りめいたアルバムという印象でした。オリジナルアルバムでは、それが変わるのかなという期待も持ちながら聞きました。
結果から言うと、彼らの楽しさは存分に発揮しながらも、見事に緩急のついたオリジナルアルバムが出来ているなという印象でした。
まずは、クラシカルなピアノの音とうめき声が少し不気味なインストゥルメンタル曲のパトス。この曲のおかげで、次のデスメンタルにすんなりと進むことができる。デスメンタル、曲はめちゃくちゃかっこいいシンフォニックなメタルです。ズコズコと刻むリフに、長尺のギターソロ、荘厳な音に導かれて、聞こえてくるオペラティックなコーラスと、それはもうかっこいいのですが、タイトルが示すように歌詞はデスメンタル（死んだ精神状態）。サビが「ヒイイイイイ！」で始まる曲は初めて聞きました。追い詰められて、極度の不信状態に陥った人間の歌詞ですが、どこか笑いを誘います。
続けての僕クエストは、思わず首を振りたくなるような激しいリフのイントロから始まる。これまた、落ちこぼれた学生の愚痴めいた歌詞から始まる。マイナー調のA、Bメロから、Cメロで一転して明るく転じて、サビでは歌詞もメロディーも気持ちのいい爽やかな展開になる。間奏の後に出てくるRPGの村のBGMのようなパートが面白い。僕クエスト、直訳すれば自分探しです。
夜汽車は僕自身はこれまでに聞いたことにないようなゴールデンボンバー。低音で鬱々と、そして切々と歌い上げられるこの曲はまるで昭和歌謡。ピアノをはじめとした様々な楽器が暗い雰囲気を盛り上げてくれる。暗い割にアレンジに凝ってるあたりが中島みゆきっぽいかな、何となく。前と後ろの激しい曲が食い合わないようにする配置。
アルバムの核ともなる酔わせてモヒート。ともすると歌詞やメロディーでふざけがちなゴールデンボンバーだけど、この曲に関しては、とにかくかっこよさに徹してる。最初の「いくぞおおおおお！」の掛け声から最期まで息をつかせる暇がない。それでいて、曲が終わった後にもう一度聞きたくなるような、そんな最高にかっこいい曲です。強いて言うならPVだけはいつものふざけてるゴールデンボンバーです。シングルから少しだけ歌い直しがされていて、最後のサビの「もっと僕を酔わせてよ」で声を思いっきり跳ねあげてる。個人的にはアルバムバージョンの方が好きです。
かっこよさの後は思いっきりふざけた曲がきます。なんちゃってチャイニーズ曲、成龙很酷。全てが漢字で記された歌詞ですが、全てが中国語っぽいでたらめの歌詞と言うお遊びソング。ちょっとチープなカンフー映画のBGMでいかにも流れそうな曲に仕上がってます。掛け声といい、四つ打ちのビートと言いノリやすい曲です。PVも似非カンフー映画仕立て。
元々は酔わせてモヒートのカップリングで壮大なバラードだったさよなら冬美に大胆にユーロビート風の打ち込み音を加えたアレンジとなっている。原曲よりもテンポも上げてるけど、元々の冬の切ないラブソングの雰囲気は崩していない。最後のサビ前のスキャットについては、こちらの方があっているという気さえする。こちらを聞いた後に、原曲を聴くとやたら原曲が遅く感じる。逆もまた然り。
ノイノリのダンスナンバーを思わせるタイトルの今夜はトゥナイト。ノリノリの始まりに身構えてると、意外と落ち着いたメロディーが流れてくる。サビは早回しなのかと疑うほど、スピーディー。意外とノリにくい。遊園地のような間奏が耳を引く。
さよなら冬美の代わりに、アルバムの中でしっとりとしたバラードの枠を獲得したのがもう会えなくなるなんて。シンプルなメロディーの繰り返すことで、二番の後に転調がドラマチックに響いてる。綺麗な曲ですが、個人的にはさよなら冬美の方が好きですね。
今夜も眠れない(病的な意味で)は、デスメンタルと女々しくてを足して割ったような楽曲。ふざけ気味のオペラティックなコーラスがあったかと思いきや、ほとんど叫ぶようなトーンで歌うパートがあって、それでいてサビはシンプルだったりと盛りだくさんな楽曲です。
代表曲の女々しくてをK-POPに仕立て上げ。カラオケでピッチを弄って女声に変える機能がありますがあれと同じです。打ち込み色を強くして、K-POP歌手にありがちな舌足らずな発音で歌ったのがこの曲です。気のせいか二番から歌い方が普段と同じになってる気がしますが、ひょっとしたら歌ってる人間が変わってるという設定なのかもしれません。
アルバムの中で唯一シンプルなバンド演奏を聴かせる愛なんていらねいよ。3分足らずの曲ですが、最初から終わりまでとても爽やかです。青春パンクという呼称がぴったりの曲で、別れの歌なのにじめじめした雰囲気がなく、むしろ清々しさが漂っています。アルバムの中では異色なのかもしれませんが個人的にはとても気に入っております。「もう二人はこの先の人生で交わらないようだ」の青空に叫ぶようなメロディーが大好きです。
最後を締めくくるのは真面目なミディアムナンバー。聞いていただければ分かるのですが、メロが完全に演歌。夜汽車同様に、どこか中島みゆきの影がよぎる楽曲。しとしとと降る雨のような湿ったメロから、光が差し込むようなサビの対比が美しい。締めくくりには相応しいどっしりとしたナンバーだけど、どこかゴールデンボンバーらしくない感じもする。
ロックあり、ダンスナンバーあり、C-POPもあればK-POPもあり、バラードもありと、そんなわけで盛りだくさんの13曲でした。どの曲もさらりと作られているようで非常にクオリティが高いです。ゴールデン・アルバムの名に恥じない素晴らしいアルバムです。