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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

自由への進撃

自由への進撃 (初回限定盤/CD+DVD)

自由への進撃 (初回限定盤/CD+DVD)

進撃の巨人のOPとして使用されている紅蓮の弓矢、後期のOPとして決定している自由の翼を含むLinked Horizonの二枚目のシングル。BDFFのタイアップは、王道ファンタジーの世界観にあわせて、Sound Horizonとの差を意識した明るく一般的なポップスに近しい楽曲を主として発表しましたが、進撃の巨人のダークな世界観は結果としてSound Horizon寄りの楽曲の製作につながったようです。
TVアニメサイズでは、ゴシック調のコーラスに勢いのある曲が、映像にばっちりとマッチしたアニソンになっていましたが、フルは本家よりの転調が際立つメタリックな仕上がりになってます。まずは、冥王や焔を思わせるアカペラの不吉なコーラスから始まり、お馴染みのイントロとドイツ語の語りかけへ。

Seid Ihr das Essen?Nein,wir sind der Jäger!
―お前らは餌か?否、我等は狩人だ!

その直後に、Saschaの語りが入るのに納得するか、違和感を覚えるかで意見が分かれそうです。僕は前者でした。
サビまではアニメと同じですが、サビ終わりからまたAメロに戻るのではなく、まるで違うメロディーが続いたまま間奏になだれ込みます。2番が普通に来ると思っていた人には肩透かしの展開かもしれませんね。以前からのファンにはお馴染みの展開というか、光と闇の童話とほぼ同じ構成なので、やはりそうきたかと頷く展開だと思うのですが。ギターソロからドイツ語の語りを挟み、歌に戻るあたりは既視感さえ覚えるほどです。
概ねエレンの心情を忠実に表した歌詞ですが、ちょくちょくサンホラでよく見かける言葉が登場します。サビ最後の「黄昏に緋」、「宵闇に紫」もその筆頭ですが、実は時間の経過も表してますね。また、途中の語りに<あの日の少年>、黒き剣というフレーズがドイツ語の語りにあるようですが、これはエレンもそうですが、サンホラでは復讐のキーワードですね。少年は剣を...はこの2つをキーワードとしたシングルでしたし、Moiraではエレフも握りました。
続く、自由の翼は凱旋をイメージさせる拍手と大仰なコーラスから始まる進撃の巨人後期のOPテーマ。コーラスから引き継ぐようにスタートするバンドの演奏がとてつもないスピードで、OPのアニメでもそうですが、立体起動装置の動きのスピード感がよく出てます。余りに早すぎて歌の入りが異様にスローに感じるほどです。エレンを意識した紅蓮の弓矢に対して、この曲は自由の翼を背にまとう調査兵団、特に後期からエレンに並んでメインを張るようになるリヴァイ兵長の視点からの歌詞になってます。
そのせいか、勢いはあれど暗い思考に傾いてる紅蓮の弓矢に対して、自由の翼は生き抜く・勝利といった意志の力を強く感じます。OPでは使われませんでしたが、1番の直後に出てくる「鳥は飛ぶために其の殻を破ってきた」からのくだりは、特に印象的で、壁の中の人類を鼓舞するような良いパートです。使われなかったのが残念です。
この曲でも相変わらず長尺の間奏がありますが、途中のベースソロがいい味出してます。Theme of Linked Horizonもそうでしたが、強いベースのフレーズで間奏の表情を変えるのが一つのパターンになってきてます。ただ、個人的には毎回、こんなに長い間奏を入れる必要はないのではないかなとも思います。バンドの見せ場ということでライブでは非常に盛り上がるのですが。
そして、戻ってくる紅蓮の弓矢のフレーズ。このフレーズは原作既読者には、非常に意味深なものになっています。隠された衝撃の真実とは?深層と表層に潜む巨人とは?様々な固定観念が後々崩れ去ることになります。コーラスを挟んで、再度、本来のサビへと戻す。リヴァイ⇒エレン⇒リヴァイという構成も原作の流れを忠実に表現してます。
個人的には、サビ終わりに刻まれる「自由の翼(Flügel der Freiheit)」のフレーズが気に入っています。紅蓮の弓矢ほど強いフレーズではないのですが、文字通り、宙を舞う羽根のような軽さと力強さを感じます。
シングルのラストを飾るのは、今回初起用の柳麻美さんが歌うもしこの壁の中が一軒の家だとしたら。岩をふさぐために巨人化するも自滅し、倒れたエレンに対してアルミンが語りかける話があります。エレンの深層世界は、まさに一軒の家、我が家の中に何もかも忘れて引きこもるという描写がなされていました。その部分とアルミンの「自由」についての説得で目覚めたエレンが人類の勝利に向けて進撃する「原始的欲求」という話をコンパクトにまとめたのがこの歌です。
ゆったりと語りかけるようなメロが、「全て偽者なんだぜ!」のフレーズで破られ、「炎の水」「氷の大地」「砂の雪原」へと足を伸ばせるような本当の自由を渇望する強い気持ちが、伸びやかな歌声で力強く歌われます。前の二曲に比べると、少々地味な感じは否めませんが、歌詞の内容としては、進撃の巨人では一番重要なことを述べているかと思います。「戦え」というフレーズがどこかにあるとよりよかったのですが。
数秒の間をおいて、再度、紅蓮の弓矢のイントロへ戻ります。この辺は、いつもの技法ですが、進撃の巨人の世界観にかかる考察等を考えると、意外と的を得た構成なのかもしれません。
以上、ざっくりと3曲の感想でした。いつもながらに自分の世界観と作品の世界観を、うまく刷り合わせるところに感心します。もちろん、世界観は選びますが、コラボする際に作品と曲がきちんとリンクするような作りになってるのが良いですね。このシングルの焦点はエレンとリヴァイに当てられていますが、せっかくキャラの多い進撃の巨人ですので、他のキャラについてもイメージアルバムのような感じでまとめてくれたらという期待も膨らみます。第104期訓練兵団のトップ面子だけでも、十分なテーマがありそうです。
とはいえ、本家のほうも忘れてほしくないのが、いちファンの意見でもあるのですが。