Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

「B’zファンによるB’zファンのための洋楽講座」第2回

予告通り今回はBON JOVIについてみていきましょう。
BON JOVIB’zの関わりというのはAEROSMITHに比べると皆無と言っていいです。唯一のつながりは彼らがJ-FRIENDSに提供したNEXT 100YEARSの歌詞を稲葉さんが日本語に訳してあげた、というものだけです。番組での共演といったものないです。しかし、音としてはRUNの時期のB’zに似た印象をやはり受けるのです。
まず彼らがどういうバンドなのかご紹介しましょう。彼らはニュージャージー出身のバンドで、80年代のMTVブームの数少ない生き残り組です。バンド名が語る通り、ボーカルのジョン・ボン・ジョヴィを中心に結成されたロックバンドです。ちなみにジョン自身はスティーブン・タイラーとも親交があり、彼の叔父はAEROSMITHのプロデューサーとして関わった事もあります。余談ですが、ジョンがAEROSMITHへの憧れを込めてこんな素敵(?)な言葉を言ったことがあります。
「彼らの半分でいいからかっこよくなりたいものだ」と。
いかにAEROSMITHアメリカのバンド達からかっこよく見え、憧れの的であったかを象徴するような言葉です(GUNS'N ROSESのスラッシュもAEROSMITHとの衝撃的な出会いを語った有名な話があるんですが、それは今度にしましょう)。
と、まぁ、それはともかく、ジョンはソロ活動の後にこのバンドを始めるわけですが、最初の1枚目はよくあるように泣かず飛ばずでした(というかメンバー構成すらはっきりしてませんでした)。2枚目は自分たちのできる限りのロックを詰め込み、そこそこの成功を収めます。日本では大いにうけて、彼らは日本で自身初めてのゴールド・ディスクを受け取ります(後にアメリカでも獲得します)。彼らの日本びいきはこれがきっかけと言っていいでしょう。伊藤政則さんの事も忘れてはいけません。松本さんも何度か彼のラジオ番組に出演していますが、何を隠そう伊藤政則さんは「世界で最も早くBON JOVIをプッシュした男」として有名で、度々、BON JOVIの独占インタビューを実現させてますし(BON JOVIの方からそれを望むくらいです!)、アルバムの解説も彼です。ともあれ、彼らは2枚目でどうにか成功の糸口をつかみ、3枚目で爆発します。彼らはブルース・フェアバーンというプロデューサーの才能に目をつけ、当時から売れっ子だった作曲家デズモンド・チャイルドをライターチームに引き入れ、それまでの2枚とは比べ物にならない完成度のロックアルバムSLIPPERLY WHEN WETをリリ−ス。アルバムは瞬く間に1位を獲得し、彼らは一躍トップバンドに。その力は衰えることなく次のアルバムNEW JERSEYにも注ぎ込まれこれまた大ヒット。しかし、過酷なツアーをさせられ続けた彼らは燃え尽き、人間関係がぎくしゃくし(メンバーいわく「メンバー全員と結婚しているようなものだった」)分離状態に陥り、解散説まで流れます(実際解散を考えたこともあるそう)。どうにか結束を取り戻し、バンドを再開させます。その後彼らはオリジナルアルバムを2枚、ベストアルバムを1枚リリースし、普通に考えて大成功の部類に入る成果を収めましたが、アメリカでの反応は本人たちにとってはイマイチだったようです。ところが2000年、IT'S MY LIFEがアルバムの先行シングルとしてリリースされると、彼らの人気は再び急上昇します。ジョンとしては、自分の俳優業も認めてくれよといった感じで書いた歌詞だったのだそうですが、我が道を行く闘志を表した歌詞が大いに共感を呼んだのです。当時ラジオで「イッツ マイ ラ〜イフ♪」というフレーズを聞いた方も多いのではないでしょうか?その後さらにライブアルバムを1枚、オリジナルアルバムを2枚、企画盤を何枚かリリースし、今もその人気は健在です。
以上が本当に大雑把なBON JOVIの歴史です。当然皆さんにまず聞いていただきたいのは最初に大ヒットした2枚SLIPPERLY WHEN WETとNEW JERSEYです。AEROSMITHに比べるとワイルドさに欠ける彼らですが、ちょっとアイドルっぽいメロディの甘さやサビでの強烈なコーラス、際立ったギターソロという意味ではAEROSMITHよりもB’zに近いかもしれません。どちらから聴こうとも損はないですが、できれば順番に聴いていただきたいところです。では、簡単なレビューをしましょう。
SLIPPERY WHEN WET

SLIPPERLY WHEN WET
86年にリリースされるや否や、一気にチャートを駆け上り1位を獲得。当時LED ZEPPELINの持っていた記録を抜き8週連続1位というとんでもない偉業を成し遂げたアルバムです。LAメタルの鋭さとメロディの甘さが共存していて、ポップ好き、ロック好き両方の耳にしっくりくると思います。シングル化されたYOU GIVE LOVE A BAD NAME、LIVIN' ON A PRAYER、WANTED DEAD OR ALIVEは全米1位と7位に輝き、今なお、BON JOVIの代表曲です。前者二つはサビにおける強烈なコーラスがRUNの時期のB’zを思い出させますし、後者は往年のLED ZEPPELIN、はたまたThe 7th Bluesあたりのラフで力強い感じを彷彿とさせてくれます。(画像はアメリカ版で日本版はもう少しセクシーなジャケットです。)

NEW JERSEY

NEW JERSEY
こちらも全米4週連続1位を記録したモンスターアルバムです。前作以上にLAメタルの鋭いBON JOVIらしさが際立ち、曲はタイトなものになってます。ただ、あまりに強烈な曲があるせいで、何曲かでクオリティが落ちているのではないか、と感じさせるものがあるのも事実です(実際に個々で聴くとそんなことはないのですが)。しかし、全体的には前作以上のまとまりを感じさせるすごいアルバム。BAD MEDICINEやI'LL BE THERE FOR YOUやBORN TO BE MY BABYはBON JOVI流美学の頂点と言えるでしょう(前者二つは全米1位。)。LOVE FOR SALEなんかのラフさにBAD COMMUNICATION(000-18)を思い出す人もいるのではないでしょうか?

この2枚を聴いて、「おぉ、BON JOVIいいねぇ!」と思った方は当然次のアルバムへ・・・と行きたいのですが、お金に余裕がなく順番通り買うのは無理だなぁ、と思ったら、とりあえず次の2枚は飛ばし、アメリカでの人気を再発させBON JOVIの復活アルバムCRUSHへ行きましょう。その間の2枚が悪いわけじゃありませんが、SLIPPERLY WHEN WETやNEW JERSEYの色は大分薄れているし、結構暗めのアルバムなのです。SLIPPERLY WHEN WETのような明るいノリを期待するのならCRUSHに進むべきでしょう。
Crush Plus Bonus CD

CRUSH
実に前作から5年のインターバルを置いて出た作品で、その間メンバー達はソロをやったりと様々なことをしてます。(ギターのリッチー・サンボラが反町隆さんと共演したのもその時期です。)そういったBON JOVIとしての活動ではないことを気の済むまでやったのがリフレッシュになったのか、非常に快活なアルバムです。先行のIT'S MY LIFEはもちろんのこと、アルバム曲も非常に明るいノリで進んでいきます。ただ、かつての大ヒット2作におけるLAメタルの雰囲気は完全に消え、コーラスも必要以上に多いということはありません。いわゆる、アップテンポのノリのいいロックナンバーが揃っています。無論、それだけじゃなく、時には壮大なバラード、アコースティックの豊かな感じの曲もありバリエーション的には過去最大です。LOOSEやGREENの感じが好きな方には気に入ってもらえることと思います。

CRUSHを聞き終えたら、時系列に沿って聞くもよし、他バンドにいくもよしですが個人的にはNEW JERSEY以降の残った3枚の方も聞いていただきたい。
Keep the Faith

KEEP THE FAITH
解散の危機を乗り越えた末にできたアルバムだけあって、非常に重々しくタイトなロックナンバーが多いです。タイトルのKEEP THE FAITH(信念を貫け)という言葉はただの看板じゃないということを感じさせます。歌詞もどちらかといえばダークで、曲はジョンの色が強く出ているように思えます。80年代後半の煌びやかな印象のBON JOVIとは完全にかけ離れています。しかし、タイトル曲を含め、IN THESE ARMS、BED OF ROSESといった名曲も持つ捨ててはおけぬ名盤です。ちなみにアルバムは1位は取れませんでしたが最高位4位と健闘しました(当時はNIRVANAPEARL JAMMETALLICAが一世を風靡してた頃で80年代後半のMTVブームに乗ったバンドには風当たりが強かったのです。当時それを意にも介さず80年代後半のノリを続けて大成功していたのはAEROSMITHくらいのものです。)。B’zで言えば、The 7th BluesやELEVENの売れ線に自ら背を向けたようなナンバーが好きという方にオススメです。

These Days

THESE DAYS
発売当初のメンバーのコメントはハッピーなアルバムだったのが後に歌詞が自分たちでも気づかない内にダークなものになっていたというアルバム。時代が時代なだけにアメリカではほとんど反応なしに近い状態でした(ちなみにこの前にベーシストのアレック・ジョン・サッチが抜けてます。以後はヒューイ・マクドナルドが準メンバーとなってます)。ジョン自身後にこのアルバムでは強力なロックナンバーが作れなかったと反省していることから分かるように、ロックアルバムの激しい起伏に欠け、ミドルチューンが曲のほとんどです。しかし、だからといって馬鹿にするなかれ。もともとバラードに定評のあるBON JOVI。その有能なメロディメイカーぶりが遺憾なく発揮されています。その手のメロディに弱いのが日本人とイギリス人(QUEENを考えれば分かりますね)。日本でオリコン初登場1位、イギリスでもマイケル・ジャクソンをおさえて1位を獲得しています。

Bounce

BOUNCE
CRUSHからほとんど間をおかずリリースされたアルバムで、9.11事件におおいに影響を受けて作られました。とはいえ、最初の2曲以外は特にその事を大げさに問題にするような感じではありません。むしろそういう世を少しでも明るく生きようとポジティブな感じです。全体としてはCRUSHが個々の曲が主張しまくっていたのに対し、ストリングスが効果的に使われ、統一感が出ています。ただ、その分、曲からは鋭さが和らぎ、どの曲にも暖かみのようなものを感じます。良くも悪くもまったりと中性的なアルバムです。B’zで言えばBIG MACHINEに近いものがあり、個人的にはベストの出来なのですが、一般の反応はCRUSHに比べて今ひとつだったようです。ちなみにアルバムは全米2位と久々にTOP3入りを果たしています。

他にも企画盤があるのですがさらっといきましょう。最初のベストCROSS ROADはKEEP THE FAITHまでのベスト曲を収録し、日本でもミリオンセールスを記録した大ヒットアルバムですが、曲数の関係で結構重要そうな曲が削られているので個人的に最初にこれだけを聞けばよいというようなオススメはしません。ただ、秀逸な新曲が2曲入ってますので、聞き逃したくない一枚ではあります(アメリカ盤にはLIVIN' ON A PRAYERの採録が収録)。二枚目のベストはロックベスト。ONE WILD NIGHTのNEW VERSIONや8cm BONUS LIVE CDがついてますがまぁ、よほどのファンでない限りは必要ないでしょう。3枚目のTHIS LEFT FEELS RIGHTは全曲採録という気合の入ったベスト。代表曲をアコースティックな方向で(完全なアコースティックではない)アレンジしてます。ただし、アレンジについては賛否両論で僕自身何曲か「う〜ん?」と首を捻るものがあります。ライブアルバムは少し微妙かな。ロックな曲のみの構成で、彼らのライブのベストな部分(それでも、所々音を下げてますが、まぁ皆が皆稲葉さんやスティーブン・タイラーじゃないのです)を切り取っているため、一曲一曲はブツ切りで、ライブの臨場感はないです。全体的に原曲のゴージャスな部分が切り取られ、曲のシンプルな良さで勝負しています。ONE WILD NIGHTのNEW VERSION付き。他バンドの有名なライブアルバムと比べるとかなり見劣りはします。しかも、ビデオやシングル収録のライブ音源とかぶってたりします。
スタジオ盤の最初の2枚はそれからでも遅くはありますまい。後の成功作への伏線は感じられますが、必聴とはちょっと言いがたいです。
BON JOVIを聴く上で最後に忠告を。BON JOVIのCDを買おうと思ったら、ちょっと待ってください。それは、アルバムのみではありませんか?BON JOVIにはライブCDを収録した2枚組がいくつかあります。少し、高いですが、ライブアルバムにはないバラードのライブテイクを聴きたいという方は、是非注意して探してみてください(案外中古で安く売ってるもんですし)。あぁ、ただし、ライブアルバムの方とダブる音源もありますのでご注意を。
BON JOVIについてはこのくらいでしょうか。それでは第3回でまた会いましょう。第3回はちなみにVAN HALENやその他のRUN〜The 7th Bluesの頃のB’zと似た方向性のアルバムを紹介するつもり。