そろそろレビューを。今回は短くいきたいですね。だからいっぺんに書いちゃいます。前作の時は、一曲ずつやってたら、終わらないわ、長いわで大変だったので。一応来週の火曜までは隠しときますね。ちなみにライブに関するネタバレを絡めた文は一切ないのでご安心を。さて、どれだけ短く書けるかな。
- アーティスト: B’z
- 出版社/メーカー: バーミリオンレコード
- 発売日: 2006/06/28
- メディア: CD
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遊び心と冒険心を兼ね備えたB'zの帰還と言った感じでしょうか。アルバムの中には、ポップ、ロック、ブルースなど様々な曲が散りばめられ、アルバムジャケット同様に派手な内容になってます。
ベスト以降のB'zは、一つのアルバムに一つのテーマがあって、割とアルバムのカラーというのが決まってたんです。変な例えだけど、最初に使う絵の具の色の系統を決めて、その色だけでどこまで色んなものが作れるのか、そんな風に挑戦してた感じですよね。けど、今回はそれを完全に取っ払いましたね。ベスト以降に極めてきた色を使って、ベスト以前の感じの曲を作ってみたり、ベスト以降の感じの曲をもうちょい派手にしてみたり。一枚のアルバムというキャンバスの中に、様々な色が並ぶわけですから、当然ごちゃごちゃした印象もあるんですけどね。
プレイボタンを押すと最初に聞こえてくるのが、何とも妖しげなイントロのALL-OUT ATTACK。B'zらしいアグレッシブなギターのリフで静寂が破られ、稲葉さんの早口なボーカルが乗っかるのは、ある種王道。そのままだと、かっこいいだけで特筆することのないOPナンバーになってしまうんですが、そこは定評あるB'zのOPナンバー。バラードのようなCメロで意表をつかれる。歌詞もこのCメロで、回想シーンに移るという感じで面白いですよね。ついでに、二番Bメロからいきなりギターソロに移ったりと展開も変則的。アイデア一つでノリはいつも通りでも面白くやれるんだよ、という見本。個人的にはPV撮影の野郎だけの熱い熱い立てノリをどうしても思い出してしまう曲。ちなみにALL-OUT ATTACKというのは造語だそうです。勝手に「総攻撃」とか訳してたけど、まぁ、あながち間違いでもないでしょう。
二曲目が間髪いれずに来るのはもう一種のお決まりごと。最新シングルのSPLASH!がここで登場。B'zにとって久しぶりなダンサンブルなノリを備えたこの曲、シングルの中でも異彩を放っていましたが、アルバム中でも派手に輝いてます。元がシングル向けの曲調ではないので、違和感はまるでなし。曲調、歌詞共に暑い夏を更に熱くしてくれること間違いなしの曲です。ただ、前のALL-OUT ATTACKとは随分カラーが違うので、THE CIRCLEのような1曲目から2曲目へ移るときの美しさは余りないですね。TVでサスペンス見てたら、いきなりバラエティ番組に変えられてしまった感じ。
もう一つシングル曲が続きます。ゆるぎないものひとつ。穏やかな曲調のバラードナンバーなので、アルバムの中で派手に輝くということはありませんが、何せ長い濃いアルバムです。こういう歌詞にじっくり耳を済ませる時間があってもいいんじゃないでしょうか。
レゲエってご存知でしょうか?そうそう、最近流行ってますよね。非常に軽い耳障りの良い音楽のことなんですが、余りB'zファンには関係ない話ですよね。・・・などと思ってたら時流どころかB'zにすら置いていかれます。恋のサマーセッション。このアルバムの奔放さを表す良い例です。軽いのはタイトルだけじゃなくて曲自体もです。久々のブラスとともに流れる、非常に軽いメロディーと演奏が実に新鮮で、どこか懐かしくもある曲です。大サビからいきなり始まって、何ともひょうきんなメロディーが続きます。Aメロの「CD・しょっ・ぱ」の部分、この曲の肝です。皆一度は真似したはずと、僕は頑なに信じています。ギターソロもきちっとレゲエ調でやってしまうあたりは流石といった所。最後は星降る夜に騒ごうを思い出す掛け声で賑やかに。学ばせろや、恋の夏期講習。
TVを見ながら誰もが思ったことある気持ちをユーモラスに歌詞にする稲葉さんは、間違いなくツッコミ役に向いてる。いや、芸人にそもそも向いていませんが。社会問題がテーマというほど重い感じにもならないコミカルな歌詞が特徴的なケムリの世界。イントロがどことなくTHE RACEっぽい。曲自体は極めて真っ当な作りなんですが、Bメロのコーラスの入り方や、ギターソロ後の証人喚問などがやはり印象的で、「面白い曲だな」とつい思ってしまうのですね。ちなみにギターソロは、TAK MATSUMOTO不朽の名作SAKURAから借用でございます。最後はシャウトしながらフェードアウトなのですが、これがちと早い。そりゃケムリはすぐに消えちゃいますけどね、こっちは煙に巻かれた気分です。恋のサマーセッションがジャケットの派手な色だとしたら、この曲やネテモサメテモは地の黒。地味だけど、かっこいい色でなきゃいけない存在。
ここでまたシングルを。「MiX」という表記が新しい衝動 〜MONSTER MiX〜。ギターはアコギ以外総とっかえ、ボーカルにも多少変化ありというファンには嬉しいチェンジです。シングルに比べると、ギターの音が実にパワフル。シングルは、綺麗に納まっててBIG MACHINEと似たものを感じてたんですが、このバージョンは僕は凄く好きです。衝動という曲がかなり好きになりました。分かりやすい変更点は三つ。コーラスがoaコーラスです。これは意見色々ありますが、響いてくる感じがとてもお気に入りです。次、ギターソロ。例の鐘の音が歪んでます。こっちはむしろシングルの方が好きでしたね。最後、シャウト。難しいのはシングルのシャウトなのですが、テンション上がるのはこちらですね。
シングルの衝動の後には結晶という傑作バラードがあったんですが、アルバムでもやはりバラードが。無言のPromise。アコギとピアノが重なるややマイナー調のバラードなのですが、歌詞は別れちゃいけない人たちはいずれ会えるという割と力強い内容。どこか和風な感じが出てるんですが、個人的には紅い陽炎みたいにもっと王道的なロマンティシズムに走ってよかったんじゃないかなと思います。ただ、情景が浮かぶバラードです。何か大正時代っぽいイメージですけど。間奏には女性の声でタガログ語が。そういうのもあるし、「桜ほろほろ」という歌詞とかあるから、歌詞カード見てると凄いかっこいい曲ですよね。最後はギターを弾き倒してます。次はもっと弾き倒してくれるという無言のPromiseの存在を信じております。
後半戦はタイトルチューンからです。MONSTER。シンフォニックなイントロに「とうとうプログレかっ!?」という新境地を感じてしまいますが、それは大間違い。稲葉さんの歴代屈指とも言えるハイトーンのロングシャウトで、ヘビーな曲が姿を現します。本来はBIG MACHINE、BLACK AND WHITEといった重いけど地味な割とナンバーをストリングスで彩るセンスにはもう座布団二十枚くらいあげたい。モンスターといえば、僕が思い浮かべるのはそりゃバハムートとかさ、憎らしいはぐれメタルとかさ、愛らしいピカチュウですよ・・・というのは冗談でモンスターと言えば普通は対峙して退治するものですよね。でも、よく考えたらモンスターって敵としてだけじゃなくて、味方として使役したりもしますよね。基本的に凶暴で面倒なモンスターをどう使役するのかって言うのは、結構大きな課題です。稲葉さんのこの歌詞はそっちの視点。対峙する外敵ではなく、自分の中にある様々に変化していくものとどうやって向き合っていくのかっていうのがテーマ。そう、そういうテーマなんですが、基本的にかっこよさにそんなのどうでも良くなってしまいます。ストリングスを持ち込むだけでこうかっこよくなれるものか。RUNやBrotherhoodみたいな真面目なタイトルチューンとは違う意味でB'z史に残るタイトルチューン。個人的にはさ、間奏でストリングスが出てきて、二度目の「Hey!」の裏でのシェーンのドラムの叩き方が凄くツボなんですよね。あ、僕だけですか。
ブルースハープとLED ZEPPELINを強く意識させるブルージーなリフが良いですね、と言ったら今までだったら真っ先にBAD COMMUNICATION(000-18)が思い浮かんだのですが、もう一曲、このネテモサメテモと言う曲を追加してください。やはり、コミカルな歌詞が印象的なのですが、それ以上に弾けきった稲葉さんのボーカルが印象的。のっけから「ネテモサメテモ!」とシャウト寸前で元気一杯です。雨だれぶるーずとは対照的にキャッチーなブルースナンバーです。一番はそれほどでもないですが、二番の稲葉さんは弾けまくり。個人的に思い出すのはDo meとか、ライブバージョンのGIMME YOUR LOVEの「ほらほら涙で〜」のくだりとか、ソロなら眠れないのは誰のせいとか。共通点は97年。その、声の調子を一旦落としてから叫びだす展開が爽快極まりない。サビ後の奇妙な歌い方は何かサザンの桑田さんっぽい。何かあったよね、こんな感じで桑田さんが歌う曲。
賛否両論が生まれると言うのはある意味、その曲に何か引きつけるものがあるからなんだと思います。CIRCLE OF ROCKツアーで初披露され、会場中を笑顔にさせた曲Happy Birthdayが、ここでついにCD化です。ライブでは増田さんをフィーチャーした非常にシンプルな出来だったのですが、今回アルバム収録に当たって大幅にアレンジされてます。全体の印象としては綺麗に小さめにまとまっていて、ライブにおける元気一杯感は控えめでキラキラ感優先と言った感じ。個人的にBメロの裏で鳴るBメロや、新たに加わった「ラララ♪」の合唱や騒ぎ声は非常に良いアイデア。シンプルだけど小技がきいてる感じが聞き手の耳をくすぐります。マイナスポイントはまずはコーラス。oaが悪いと言うのではありませんが、もっと派手に元気にコーラス入れても良かったんじゃないかなと。後はピアノのイントロが消えてしまったのは頂けないですね。あれ凄く綺麗で好きだったんだけどなぁ。でも、この曲が誕生日に発売されたアルバム入ってるというのはとても嬉しいですね。
久々にシングル曲です。と言っても2nd Beatですが。上木彩矢さんカバーが話題になったピエロです。シングルの時はB'zらしさが貫かれたストレートなロックチューンということで、僕も絶賛したのですがこのカラフルなアルバムではそのストレートさが逆に仇になったのでしょうか。思ったほど目立たない。まぁ、後の曲があれでは基本どんな曲も霞みますが。それでも、コンパクトにB'zらしさをまとめたこの曲はやはり凄いし、多くの人に知ってもらいたいと思うから一応入れて正解・・・なのかな。
LED ZEPPELINが良くも悪くもB'zに多大な影響を与えているのは、紛れもない事実です。最近は、そういう古典的なものからは離れて、その時々で二人が好きなロックの影響が曲に出てたのですが、このアルバムで彼らはLED ZEPPELINへの深い愛情を露わにしてます。それは例えばMONSTERのイントロやネテモサメテモに現れてるのですが、ここにもう一つ彼らのZEP好きが顕著に出た曲が。雨だれぶるーず。MONSTERと並ぶアルバムの白眉と言って良いでしょう。Aメロは稲葉さんのフェイクで、彼のボーカルの凄さに圧倒されます。ネテモサメテモとは逆にマイナーなブルース。賛否両論は覚悟の上といった感じです。無論、ただの洋物ブルースではなく、昭和の下町の泥臭いブルースの香りもします。具体的に言うと桑田さんの東京と同じ香りです。主にそうさせているのはブラスですが。日本語でこういうかっこいいブルースが出来る彼らに乾杯。間奏はもうSince I've Been Lovin' Youです。ギターは勿論、ベースやドラムまでも。極めつけは「Baby, baby, babe, babe…」で、もう完全に遊んでる。好きだなぁ、その大真面目に遊ぶ感じ。遊ぶからにはやっぱ、真面目にやらないとね。
大分泥臭い流れを吹き飛ばす爽やかな風が明日また陽が昇るなら。一昔前のベタなかっこよさを地で行く曲。明るいイントロから一転して哀愁感のあるピアノで、Aメロにつなげる構成は時間をかけて作っただけのことはあると思わせる出来。基本的に眩しいサインと同じ系列の曲なんですけど、そのあたりが評価に大きな違いを与えてそう。泣けるのは、僕もやっぱり二番のAメロでしょうか。ギターの入り具合が絶妙です。歌詞にもあるけど、まさしく赤く染まる海って感じです。でも、一番好きなのはそこじゃなくて、最後のサビ後の雄たけび。歌詞にも「まるで馬鹿みたいに叫びたい」ってあるけど、その馬鹿みたいにただひたすら叫んだが故の爽快さがある。SEE YOU AGAINのコーラスも実に爽やか。最後をもう一度ピアノで締めるのが憎らしいぜ。
まだ、終わりませんよ!ヘッドフォンはそのままで、アルバムの余韻を楽しんでください。OCEAN 〜2006 MiX〜。シングルよりは大分激しいミックスになりましたが、ドラマで使用された時と同様、幕引きにぴったりな王道バラードなままです。アルバムの途中に持ってきたら、ベタに過ぎる地味なバラードとして埋もれてたでしょうが、最後に持ってきたことで、個性あふれる曲たちをまとめてくれてます。逆に、この曲を一曲目に持ってきたPleasure2のおかしさを再認識します。最後のコーラスは本当に引き潮みたいですよね。
総評としては、非常に優秀なポップアルバムだな、と。無論、重たい曲もあるんですが、それは一要素。一要素でしかないことがとてもポップで聴きやすくしてますよね。ロックアルバムとしては前作の方が抜群に良いですが、MONSTERとて完成度では引けをとりません。むしろ個々の完成度はこちらの方が上かもしれません。誕生日に発売されたことや楽器がたくさんある嬉しさが評価を少々上げてますがそこはご勘弁を。B'zの多様性、楽しさという面が良く出たアルバムです。このアルバムこそ入門編に相応しい気が僕はします。こんなMONSTER隠し持ってるB'zはやっぱすげえよ。