Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Elysion 〜楽園への前奏曲〜

Elysion?楽園への前奏曲?

Elysion?楽園への前奏曲?

このアルバムがどういう経緯で発売されたのかは知らないのです。ただ、一応メジャーデビューのアルバムです。手に入れにくい同人CD時代の人気曲と後に出るElysion 〜楽園幻想物語組曲〜(以下エリ組)から先行して二曲が収められいる。まぁ、そういうアルバムなので、こればっかはアルバムを通しての物語だとか統一性は感じられない(少なくとも僕には)。Chronicle 2ndとThanatos、Lostは借りているので、そこには入ってない楽曲について少しばかり書くことにする。
Arkはエリ組で、歌詞について触れたけど、じゃあ、まぁここでは曲について。水泡が浮かぶような音と共に、Aramaryの透明感のある声が響く。といっても、美しい感じじゃなくて、水泡のSEの効果もあって堕ちるとか沈んでいく感じ。Aメロとかの方はスピード感があって良いのだが、無機質な感じにボーカルが徹しすぎてる気がする。面白いのは、間奏になった途端にバリバリ主張を始めるRevo氏のギター。これは中々印象に残る。後は、ナレーション。これは冷たい感じが良く出てて良いし、後ろのコーラスがやたら雰囲気を盛り上げる。
澪音の世界と書いて、「レインの世界」と読みます。バイオリンの早弾きがやたらかっこよく印象的な曲。そこだけ、何かのゲーム音楽みたいだ。じまんぐ氏の語りはまぁ、普通かな。余り胡散臭さが出てないから仕方がない。迫り来る死の感覚を、雨に降られてるように例えてる曲なんだけど、む、この曲の歌詞は分かりづらい。少女と犬と男の関係が分からない。しかし、その三つのキーワードから察するに、どうやらRomanにおける星屑の革紐と関係があるようですね。ていうか、聞き返したら、星屑の革紐の最後で同じメロディーを早弾きしてるし!これを聞いてむしろ、星屑の革紐がますます好きになりました。
檻の中の花。エマニュエル夫人みたいなムーディーな曲なのに、語られるのはMichele Malebrancheによる凄惨な三つの殺人事件の概要と舞台裏。それこそがSound Horizonクオリティ。歌詞さえ気にしなければ、BGMとして聞いてて気持ちの良い類の曲ですね。注目すべきは最後のじまんぐ氏による語り。この胡散臭さ!最高!そして、何よりもこの語り手の名前にも注目。Cristophe Jean−Jacques Saint-Laurent氏である。Romanにおける黄昏の賢者の最後で聞こえる「探したぞ、Cristophe」という台詞と、あの曲の語り手である賢者の物言いが、きわめてこのCristophe Jean−Jacques Saint-Laurentと近いことを考えると、まず二人は同一人物と考えてよいだろう。おまけに曲中に出てくる折り重なった13人の死体というのは、屋根裏ロマンと合致する内容である(ていうか、屋根裏ロマンにも同じメロディが使われてるし)。どうやら、檻の中の花と、澪音の世界がRomanの解釈には欠かせないようだ。Romanの世界は悲劇性が薄いと思っていたけど、その裏では案外エグいことが行われていたのかもしれない。解釈が出来たら、また整理して書きます。
Yieldもエリ組からの先行曲。実は、結構好きな曲なんですが、どうせ書くならこっちでと思って、エリ組では歌詞に触れるのみに留めました。小鳥の囀りと共に、牧歌的な印象のイントロが聞こえてきます。青い空と収穫真っ盛りの田畑が見えてきそうな、とても気持ちの良いイントロです。歌も田舎っぽさが良い意味で出てる。「不毛な行為と君は笑うだろうか? それなら君は幸せなんだろうな」の歌詞がセンスあるなぁ、と思ったり。エリ組の先行曲にして、Sound Horizonの曲ですから、田舎の淡い恋心の話では終わりません。後半に3という数字の不安定さを論じる不吉なナレーションが入ると同時に、曲は切々としたものになってくる。最後に二つ目のサビが出てくるのですが、ここのメロディが狂おしくも美しい。「恋心 甘い果実 真っ赤な果実(Sweets Lala sweets 真っ赤なfruitsと読む)」の読ませ方や生首を真っ赤な果実と比喩するセンスに脱帽。そして、それが綺麗にメロディにはまってるのだから素晴らしい。


エリ組からの曲はもちろん他の曲も比較的分かりやすく人殺し曲だったり、悲劇だったり、メタル調の曲だったりとSound Horizon入門にはうってつけな気がします。もっとも、このアルバムでは歌詞を解釈する楽しみは少ないのですが。ただ、檻の中の花や澪音の世界が元々収録されてたCDは、まぁ、現状ではまず手に入らないので、それを聞くために買うのもありですな。