Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

偽典セクサリス

紹介しても、興味持つ人がいるのかどうか甚だ疑問ではあるけど、せっかくなので。
Sound Horizonの影響が強いことがよく分かるアルバムでして、一枚を通して一つの物語になるように作られたコンセプトアルバム。しかも、語りもある。Sound Horizonプログレ、メタル、民族音楽に弦楽器を配したのに対して、こちらは弦楽器とボーカルがメインなので必然的に音色はSound Horizonより幾分優しい調子。
星謡の詩人から始まるこの物語は、セクサリスという少女が夢見る悲劇に彩られた世界の幻想。どことなくタナトスとかクロニカを思い出させる設定ですね。
星謡の詩人はバイオリンから始まるアルバム全体を象徴する曲。ストリングスの悲しげな音色から始まり、スピーディーな展開に持ち込むのはこの手の音楽の王道ですよね。個人的には曲の激しい部分よりも、最初のメロディーや転調後の音の方が好きなのですが。最後に声優陣の声が重なり合うあたりが朝と夜の物語っぽいなぁ。ちょっと重なり方が弱いというか、バックの演奏と乖離している感が否めないのが残念。
終わりの先の音節。とても複雑なAメロが素敵過ぎる。メロディーと喋りの中間点にあるようなメロディーなのですが滅茶苦茶謡うのが難しそう。Bメロからはっきりとしたキレのあるメロディーになるし、結構好きな楽曲。Sound Horizonで言えばArkみたいな曲かな。でも、まずあらまりさんと聞き間違いそうな語りが気になってしょうがない。佐々木加奈さんという人なのですが、ちょっと聞いただけでは絶対聞き間違える。アクセントのつけ方がよく似ているんだと思う。このナレーションがかなり雰囲気を作ってる。途中の平和を象徴する鳥が落ちていくシーンや叫び声がかなりキてる。
蒼を受け継ぎし者は蒼と白の境界線じゃありません。誰よりも蒼を愛したライザが堕ちていく物語。比較的、バンド色が濃い曲で語りさえなければ普通のアニソンとしてありそうな気がしなくもない。歌から語りへ入る瞬間がかっこいいけど、曲自体は佳曲。
angelaっぽい、つまりコブシをきかせた歌い方から入る空想白夜。歌詞が他に比べるとややありきたりだろうか。全体的には綺麗な印象の曲。
死の黒鍵、生の白鍵はLico、Mitsukiの二人で歌うアルバムの中核を担うと思われる曲。ただ、Mitsukiの声が強すぎてLicoがコーラスめいた感じになっているのが残念。あと、タイトルから連想されるイメージとは裏腹に優しげなバラード。僕の中では霜月さんと片霧さんの螺旋みたいな多少寒々しいイメージの曲だったのだけど。
続く白亜の檻が一番悲劇的だと個人的には思う。無知な状態から真実を知り、絶望し、救済があり、その救済が崩れるストーリー構成がよく出来ていると思う。佐々木さんの声が淡々としていて、感情を押し殺した曲によくあっている。Sacrificeと同じだね。だから、この曲が好きなんだ、きっと。
flyの最後の歌詞に俯瞰風景(ex.空の境界)と檻の中の花を思い出してしまう。逆を言うとそのイメージが強すぎて他を思い出せない。最初や途中のパイプオルガンめいた音色がとても素敵なのだけど、曲の本編はキャッチーなもの。蒼を受け継ぎし者とややかぶるかな。曲単位で聞けば良いのだけど、白亜の檻の後だからね。曲に躍動感がありすぎて「堕ちる」というイメージがわきにくいのが問題か。
鳥籠から紡ぐ物語。fly〜鳥籠から紡ぐ物語〜Karma〜Aingealは一つの続いた話になっていて、flyは「天使の末裔」ラフィルの歌声を聞いてしまった少年少女の物語・事件、そして、民族音楽的なパーカッションの使い方な耳に残る鳥籠から紡ぐ物語は天使語で歌わされるラフィルの嘆き。Karmaはラフィルの従者にして共犯者がラフィルに嘘をつく物語。Aingealがラフィルが紡ぐ天使語の歌そのもの。天使語ですから歌詞はなし。全部造語なんだそうです。響きから察するに英語をベースにおいてはいるようだけど。天使に相応しい優しく暖かい曲調なのだけど、それまでの展開を知っていると悲しげな旋律に聞こえるから不思議ですね。この曲は純粋にメロディーが好きだな。何も知らずに聞けば子守唄のようにも聞こえるけど。最後がアレですが。
セクサリス。星謡の詩人のメロディーが途中で再び出てきて、物語は閉幕。全テハ少女ノ幻想…とか書くと凄くThanatosっぽくなる。実際物語のアルバムの構図は似ているのだけど。いや、最後の語りはChronicle 2ndっぽいのか。
一つの物語を軸にいくつもの話を展開していく方法論はSound Horizonと同じだけど、きちんとそれを踏襲したところは評価したい。中々ないんですよね、物語音楽と銘打っていってもアルバムを通してそれをやっているのは。曲の幅がもう少し広がれば、もっと良いと思う。物語に曲の幅がついていけていない。語りは思った以上に良かったですね。じまんぐを擁するSound Horizonのようなアクの強さはないけど、入るタイミングとか凄く上手かったと思う。
ただ、音質が今ひとつ。形態が形態だから仕方ないけど、結構音割れてる気がする。そこが残念かな。