Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

ルクセンダルク小紀行、ルクセンダルク大紀行

Linked Horizonのアルバムが先日、発売になりました。Sound Horizonでも、過去にタイアップを行ったことはありますが、独自の物語を構築するSound Horizonというのはタイアップは中々しづらいみたいで、それならばタイアップ専用のプロジェクトを、ということで立ち上げられたのがLinked Horizonとのこと。まぁ、BDFFという比較的大型なタイアップをもらったというのも大きいでしょう。✝Revoのように一回限りのプロジェクトとならなければよいのですが。
Sound Horizonとの違いは明確で、まず語りがほとんど入らないこと(今回、一部お馴染みのIkeが英語での語りを少しだけ行ってます)と、オリジナルの物語を紡ぐ歌詞ではなく、タイアップに寄り添った歌詞であるということです。
また、BDFFのサントラ用に書き下ろした楽曲を、歌モノにしたり、アレンジしてみたりという構成ですが、今後もこういう形なのかは不明です。

ルクセンダルク小紀行 (初回限定盤)

ルクセンダルク小紀行 (初回限定盤)

まずはご紹介しそこなったシングルから。彼の者の名は・・・をリードチューンとした、このシングルの名前はルクセンダルク小紀行と言います。暁光の唄を思い出させる草を踏む音とピアノの静かなイントロで始まりますが、煌びやかなギターの音でその印象はあっさりと裏切られます。メタル・ポップスとでもいいましょうか、演奏自体は非常にアグレッシブなのですが、Revoの歌うメロディーラインはむしろキャッチーです。スピーディーな演奏に急かされるように、詰め込まれた歌詞とメロディーがころころと転がっていきます。Bメロの歌い方に冥王を感じて、ニヤリとする暇もないほど、あっという間に歌が流れていってしまうのは少しもったいない気がします。
宵闇の唄というSound Horizonの芝居っ気とかっこよさを凝縮したような楽曲に比べると、いささかパンチが弱い曲とは言わざるを得ませんが、サビのキャッチーさは流石と言えると思います。タイトルから連想されるほど、歌詞に捻りがないのも残念なところ。朝と夜の物語〜冥王〜光と闇の童話〜宵闇の唄(〜海を渡った征服者達)に続くRevoによるアッパーな楽曲としては、いまいちかな、というのが正直な感想です。
戦いの果てにと風が吹いた日はインストゥルメンタルとなります。前者はプログレッシブな構成が光る曲です。劇的なイントロが象徴するように、Chronicle 2ndあたりに入っていてもおかしくないような「戦闘曲」です。Revo特有のめくるめく展開が好きな人間にはたまらない一曲ですが、本家のように主題となるメロディーがはっきりしないので、少し全容は掴みづらいかもしれません。一方、風が吹いた日はピアノとSEのみの静かな楽曲です。Piano Solo Versionということなので、原曲はもう少しいろんな楽器が鳴るのかもしれませんが、ピアノのみでも切々としたメロディーが感情に訴えかけてきます。
希望へ向う譚詩曲については後述します。
ルクセンダルク大紀行 (初回限定盤)(特殊パッケージ仕様)

ルクセンダルク大紀行 (初回限定盤)(特殊パッケージ仕様)

続いてアルバムであるルクセンダルク大紀行。かつて、まだRevoが無名に近かった時代にリヴァイアサンとPoca felicitaというイメージアルバムを作成したことがありますが、路線としてはよく似ています。世界観を表す曲を頭に置き、本家よりもポップよりで、店長は少なめの楽曲を歌い手を変えて聞かせる、というものです。もっとも、前述の二作品はセリフをそのまま語りや歌詞に取り込むという手法をとっていますが、今作については(恐らくは)その方法論を踏襲せず、Revo自身の言葉のみで歌を構成しています。
アルバムの冒頭を飾るのはTheme of the Linked Horizon短い小曲を予想していたのだが、びっくりするくらいに良い曲でした。朝と夜の物語と黒の予言書の中間のような楽曲といえば分かるでしょうか。雄大な大地を想起させる印象のイントロから、ストリングスがリフを刻んだ瞬間から、鳥肌が立ちました。「Linked Horizon...」というコーラスの後にくるRevoの声は非常に優しげで安定しています。Revoの歌声は基本的に低音〜中低音くらいが一番安定していて、綺麗に聞こえますね。結構高い声も出る人なのですが、高くなればなるほど、独特の癖がでるのと声が細くなってしまうので、聞く人を制限してしまう気がします。長尺のギターソロ後の「君が見上げてるその星空と〜」からのフレーズはMoira、Roman、Chronicle 2ndを思い出させる「繋がり」の仕掛けです。そして、CDでは久々のIkeによる「Linked Horizon」のヴォイス。曲は一転して、ベースを主体としたモダンな曲調に転じます。ここの転調は痺れますね。何よりもベースが最高にイカしてます。再びIkeによる英語の語りが入り、歌へと戻ってくる。非常にドラマチックな構成の一曲です。

ほぼ間髪いれずに曲がスタートする、ルクセンダルク紀行。タイトルの通り、ルクセンダルクの国々のイメージを綴った小曲を一曲にまとめ上げてしまったRevoならではの大作。今作の女性ボーカルが一人一国ずつリードボーカルを担当しています。Moiraの神話の中で奴隷市場や死と嘆きと風の都を一編にやってしまった曲といった感じです。
まずは最初の国、カルディスラを担当するのはmao。始まりの国に相応しい海に続く国の情景を描きます。歌詞にもありますが、決して明るい国ではないようですね。
続くは砂漠の国、ラクリーカをMarchenでお馴染みとなったCeuiが担当。魔法使いサラバントや奴隷市場を経て慣れてきた感すらある、中東の灼熱の風が漂ってきそうな曲をCeuiが思いっきりビブラートをきかせて歌いあげます。
艶花の都、フラウェルに潜む仄暗さを歌うのは、実に久しぶりのタッグとなるRIKKIRIKKI自身、FF10での主題歌を担当していたりもしましたね。「キミは首を傾げた」のフレーズが何故か非常に印象的です。
曲はグランシップの海原の雄大さを描く穏やかなものに移り変わります。ここでは、もはやRevoの曲には欠かせない感が出てきたJoelleが安定の歌声を響かせます。
そして、軍靴の音がすぐそこまで聞こえてきそうなラッパの音とともに、内戦状態の国、エイゼンベルクが登場。この曲を担当するのはDaisy×DaisyのMiKA。水樹奈々実妹らしいですが、なるほど、「平和を守る為に〜」からの勇壮なフレーズの力強さやファルセットには、お姉さんの影が見え隠れします。
勇壮さからは一転、物悲しさ、悲劇性を前面に押し出した寒い国、エタルニア。小湊美和の叫ぶような切々とした歌声の後に、全員でそれまでの旅路を希望へ向う譚詩曲のフレーズに乗せて締めます。
実に11分というSound Horizonでもお目にかかれないような大作でした。聞きごたえは抜群です。冒頭の二曲だけでアルバムを買った甲斐があったと確信しました。

ルクセンダルク紀行でお披露目になったボーカルが次から一人一曲ずつ歌いあげます。まずはRIKKIが先陣を切ります。虚ろな月の下で。アコギを主体とした穏やかなテンポの楽曲です。非常に短くシンプルな曲なのですが、そこはかとなくRIKKIが初めてSound Horizonでボーカルを担当した神々が愛した楽園が頭をよぎる瞬間があります。恐らくはゲームの始まりを描いた楽曲。

君は僕の希望はmaoが担当。穏やかな出だしとは対照的に、ゲーム音楽らしいリフが耳を弾く楽曲です。歌詞、曲共にアルバム中、もっともポップな楽曲で、サビだけ聞いてもRevo作曲ということは分かりづらいかもしれません。間奏のアコギソロからピアノへの移り変わりがそれっぽいですかね。間奏後のCメロが非常にベタですが好きです。最後のサビだけ「僕は君の希望さ」になるあたりも非常にベタですが好きな展開です。

CeuiSound Horizonでは生と死を別つ境界の古井戸という非常にアッパーな楽曲を担当したため、元気な印象が強いですが元々は静かな曲の方が特異な方です。彼女の担当する風の行方は、先の曲は真逆でスピーディーなイントロとは裏腹に非常に繊細な印象の楽曲です。アクの強い曲が多い中では、清涼剤的な役割を果たしている曲ですが、地味な曲ではあります。微かにMoiraのフレーズが聞こえますが、これは手癖の範疇でしょうね。

続く雛鳥は小湊美和がルクセンダルク紀行でも聞かせてくれた高音を惜しみなく披露してくれます。これまた君は僕の希望に負けないくらいポップな楽曲です。サビ頭が「Black or White?」なのですが、まさかRevo曲ですが、サビ頭が英語といういわゆるJ-POPにありがちな構成を目にすることがあるとは!この曲は明るいギターソロからサックスのソロまで入るというどこまでもポップな楽曲です。転調からサビを重ねて終わりかと思いきや、サビの後にもう一つフレーズにはっとさせられます。

ここでもう一曲Revoが登場。古くもクサい甘いメロディーに乗せて、程よい中低音を聞かせます。愛の放浪者。何でしょうねぇ、この曲は。ポップはポップなんですが、この低音中心のクサい展開は、どちらかというと70〜80年代の歌謡曲といった方がしっくりくる曲調です。「L」で始まる単語を【】でくくるのはエルの肖像でもやりましたが、それを意識しているのか「Linked」を意識しているのかは分かりませんがにやりとします。零れ落ちるような素早いアコギのソロからピアノソロ、その後に続くのはなんと、Revo自身によるアコーディオンのソロ。奏者として音源に参加するのは久しぶりですね。続く「大切な何かを〜」のフレーズは宵闇の唄の「誰かにかつて〜」のフレーズを歌詞、メロディー共に思い出させます。哀愁と明るさを行き来する複雑なメロディーは流石です。口ずさんでみれば分かりますが、さらりとしているようで結構難しいメロディーです。ちょっとライブが不安になるくらいには。

今回、最大の問題作、純愛♡十字砲火。Long Versionということはゲーム中でも短い尺で流れるのでしょうか。歓声のSEから、MiKAのゆったりとした歌声が流れた後は、ご丁寧にPPPHの手拍子も掛け声も入った電波系のアニソンへとなだれ込みます。まぁ、ぴこまりをやったRevoではあるのです、ここまで堂々としたアニソン寄りの曲をやるとは思いませんでした。しかし、インパクトは間違いなく抜群です。「十字砲火」「焔の接吻(Kiss of fire)」という中々にイカレた感じのサビを始めとした言葉のセンスや、「砲火(Fire!!)」の掛け声、それでいてしっかりとしたメロディーやギターソロなど、Revoは実に電波ソングのなんたるかを分かってるようです。本気でやるから電波系のアニソンは楽しいです。ライブと言えば、座る方が多いSHのファンがPPPHをする姿は中々に面白そうです。

お口直しというわけではないが、Joelleによる切々としたバラード花が散る世界が続きます。ピアノとストリングス、そして雨のSEを主体としたシンプルなバラードですが、Joelleの訴えかけるようなバラードは序盤から胸を打つものがあります。バンドが入ってからのメロディー、歌詞は全曲の中でも美しく印象的ですね。非常に強い訴えかけなのに、「少し疲れているのです」の言葉で締めるあたりに、美しさと底知れぬ諦観の念を感じます。「止めどなく雨が降る」のフレーズで始まり、同じフレーズで終わるのですが、一瞬燃え上がった感情が雨によって流されてしまう、無情さを感じます。

巫女の祈りはストリングスによるインストゥルメンタルです。イドへ至る森へ至るイドでも似たような雰囲気のインストをやりましたが、この曲が案外一番本家Sound Horizonを感じさせるかもしれませんね。仰々しいまでに感情に訴えかけてくるし、転調も激しいです。まぁ、次に続く希望へ向う譚詩曲のインスト版なのですが。

事実上のラストを飾るのが希望へ向う譚詩曲。譚詩曲でバラード、もしくはバラッドと読みます。シングルでもラストを飾りました。まぁ、長い紀行の最後の曲と言うことでしょう。1分以上の長いイントロはBDFFのテーマとなっているフレーズでもあるみたいで、公式サイトでもこの曲が流れます。そこにファンファーレが鳴り響き、再びJoelleが花が散る世界とはまた違った穏やかなボーカルを聞かせます。「満ち足りなかったわけじゃなかったんだ」の「わけじゃなかったんだ」の歌声が、個人的にJoelleの一番好きな歌声なんですが分かっていただけるでしょうか。一番の終わりには、Ikeによる「Dream Port...」とか「Belle Isle...」の声が空耳で聞こえてきそうな間があります。二番でようやく少し悲しげなサビが登場し、Joelleの歌声とRevoの歌声がシンクロします。間奏の後に、時計を思わせるSEをバックにJoelleが切々とサビを聞かせると、Revoによる転調のメロディーが刻まれます。力強いギターソロの後に現れる大サビは、希望に満ちており、光へ向かう様子がよく現れております。この辺の構成もDream Portっぽいですね。オルゴールの音ににやりとする間もなく、曲が剣の音とファンファーレで畳まれます。

Braverly No Titleという様々なSEや逆回転の組み合わせの短い音を挟んで、ピコピコ戦闘曲メドレーがボーナストラックとして始まります。希望へ向う譚詩曲や戦いの果てに、彼の者の名は・・・といった聞き覚えのあるものもあれば、ちょっと聞き覚えのないものまで、昔懐かしのファミコン調のピコピコ音で戦闘曲が紡がれます。昔からピコピコアレンジが好きな方ですから、今回は特にゲーム音楽ということで音源に加えたといったところでしょう。最後に本を畳むような音とIkeの「Linked Horizon...」の声で締めるあたりは、いかにもといった感じですね。

以上、ルクセンダルク紀行でした。視聴の時には「ん?」と首をかしげるものもありましtがトータルで聞けば、いつも変わらぬ素晴らしい出来栄えでした。特定のフレーズを複数曲で奏でるという手法がないのは、ゲーム音楽だし、先のイメージアルバムでもなかったから仕方ありませんが、語りがほとんど無しというのは新鮮でもあり、戸惑うことでもありました。曲の隙間隙間に語りの間を見つけてしまって、そこに語りがないのが不思議な感じなんですよね。ひょっとしたらネタバレを避けるためなのかもしれませんが、ゲームの台詞なんかをそのまま使用してた方が印象的なものになったのではないかなと思う次第。

これを聞いてサントラはもちろん、ゲームも欲しくなりました。3DSはもってるしやってもいいかなと思う一方で、あんまりゲームのシステムには弾かれないので迷っているところではありますが、このアルバム、ゲームをしないと分からない部分も多いんだろうなという気もしています。