Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

DOMINO EFFECT

ドミノ・エフェクト

ドミノ・エフェクト

スイス発のBON JOVIなんて呼ばれるGOTTHARDだけど、実は彼らのデビューは80年代ではなく1992年。日本で言えばMr.Childrenと同期な訳ですよ。僕も、80年代かと思ってましたけどね。元々はバリバリのハードロックバンドとしてデビューしたものの(代表作G.ではZEPのカバーをしてるくらいだし)アコースティックライブのD-FROSTEDの成功を受けて、次第にバラード中心のキャッチーな音作りへ移行していったわけです。スイス発のBON JOVIという呼び名は多分、その辺のバラード得意な方向性からでしょうねぇ。HOMERUNやHUMAN ZOOはそんな感じ。男らしいボーカルと良質のメロディーをお届けしますみたいな。DEF LEPPARDあたりにも近いかな。まぁ、でも、明らかにボーカルのスティーブ・リー(髭イケメンマッチョ)がもったいなさ過ぎた。この人、凄くいい声してるんですよ。しゃがれてるのに、高音までしっかり出て、力強い。本人たちにもそういう考えがあったのかどうかは知らないけど、前作LIPSERVICEから、再びハードロック路線に転向。どこかハードな方向に馴染みきれてなかったLIPSERVICEから、さらに一転、重量感のあるハードロックを作ることに成功したのが、このDOMINO EFFECTというわけだ。現状、G.と並ぶ最高傑作。
アルバムはブルージーな感じすらするギターの音から幕を開ける。ドラムをきっかけにテンポアップして、キャッチーな曲が姿を現す。キャッチーでもライブ感を失わないのはさすが。そんなMASTER OF ILLUSION。キーボードがしっかり絡んでいくあたりがキャッチーさの秘密だろうか。
GONE TOO FARはエキゾチックなリフが映える一曲。ストレートなロックのようでAメロ→Bメロ→Cメロ→サビという割とメロディーの多い曲。個人的にはBメロが一番好きかな。サビ後に「アアア」とリフに乗せて叫ぶスティーブの声が印象的。
タイトルチューンであるDOMINO EFFECTも重量感のある割にキャッチーさを失わない楽曲。どことなく80年代っぽい音作りが目立つ。重量感はあれど泥臭さよりも、メロディーのキレを優先してるからだろうねぇ。叫ぶでもなく、淡々としてるでもない「Domino Effect」というコーラスが好きだなぁ。最後、フェードアウトかと思わせてきっちりオチを付ける構成も素晴らしい。
FALLINGはピアノとストリングスの音が光るバラード。情熱的なAメロが実に良いのだけど、サビが弱いかな。サビがBメロっぽい。もう一つドデカいメロディーが来るかなと思ってたら、またAメロに戻ってしまってる感じ。ただ、転調部分の美しさと激しさはさすがだなと思う。
シングルカットされたTHE CALLもバラード。シングルにされただけあって、完成度はFALLINGより高い。哀愁の漂うギターのイントロからグッとくる。スティーブの最初は投げやりな印象の歌い方から、次第に熱がこもっていく歌い方も、伊達にバラード続けてないなと思う。そしてこういうアルバムの中だから、こういう壮大なバラードが映えると思うのですよ、私。
ストリングスがリフを刻むTHE OSCER GOES TO…は90年代初頭のJ-POPっぽいなぁ。いや、バンドの演奏はまるで違うアプローチなんだけど、メロディーの構成の仕方とかが日本っぽい気がした。ストリングスがシンセで軽い感じで演奏して日本人に歌わせたら、多分違和感ない。OSCERとはもちろんアカデミー賞のオスカーのこと。
THE CRUISER(JUDGEMENT DAY)はそれまでの曲に比べてキャッチーさを減退させて、スティーブが荒々しく歌う美しさを優先したようにも思える…と言いつつ、途中のキーボードや打ち込みが地味にとっつきやすさを生んでるわけですが。この部分抜きでもっとただハードに攻めてもよかったのではなかったと思う次第。でも、それは次の曲があるからやめたと思われる。
イントロのリフだけで、昔のハードなノリを取り戻したことがうかがえるHEAL ME。ところどころ印象的なメロディーはあるもののキャッチーさをかなぐりすてて、メンバーの風貌に相応しい(?)ハードさを見せてくれてる。Aメロで叫ぶ寸前で歌うスティーブを、私は大変愛しております。
LETTER TO A FRIEND。「HELLO MY FRIEND」といういかにも手紙らしい出だしが印象的なミディアムナンバー。古いタイプのミディアムナンバーと思ってたら、いきなり楽曲がパワフルに変わる。そして、暗いAメロが何故か男らしくなって再登場。ストリングスが刻みを入れてるし、最初の鬱々とした雰囲気は何処へ。個人的にはずっと鬱々と語るほうがよかったなぁ。
TOMORROW'S JUST BEGUNは80年代のアメリカのロック。カラリとした明るさに滲ませた切ないメロディーがどう聞いても80年代のアメリカ。ほら、HERE I GO AGAINのシングルバージョンとか思い浮かべてくれればいい。歌い方もどことなくカヴァデールっぽいし。これは好きな人が多そうですね。
ドラムにベースが絡むスリリングなイントロから始まるCOME ALIVE。ベースがこの曲の要。少しダンスっぽいかな?まぁ、でも基本的にはTHE OSCER GOES TO…と同じ系統の楽曲である。アレンジの部分で大分差があるけど。
高らかシャウトで幕を開けるBAD TO THE BONEはタイトルといい、曲といいモトリーとか意識してるに違いない。TOMORROW'S JUST BEGUNとは別の意味で80年代。Cメロの最後とかRAG DOLLっぽい。ついでにトーキング・モジュレーターを使ってるし。こういう曲がもっと聞きたいぞ。もっとスティーブに叫ばせるんだ。
アルバム序盤のスピーディーな展開を持つNOW。一曲目のMASTER OF ILLUSIONと同じタイプの楽曲。オープニングではないためか最初からテンポが早い。前曲との起伏が上手いなと思う。サビが少々物足りない気もするかな。
締めはバラードで一つ。WHERE IS LOVE WHEN IT'S GONE。系統が全部違うバラードを入れられるのは凄いなと思う。Aメロでドラムの主張の強いという変わった曲なのだけど、スティーブがゆったりと感情を込めれば関係ない。サビでのコーラスワークがややアイドルっぽいけど、秀逸。
ボーナストラック。スーパーマン。間違った、SUPERMAN。これまたキレのあるハードロック。イントロだけ聞くとDEEP PURPLEっぽい曲でもやるのかと思うけど、全然違った。どちらかといえばLIPSERVICE路線で、重量感よりもラウドさが強調された元気のある曲。クオリティーは高いが、確かにタイトな重量感でまとまってたアルバムの流れにはあわないな、と思う。しかし、こういう曲でもやや開放感よりもすっきりとした印象を受けるのは北欧の血のなせるわざか。