- アーティスト: 茅原実里
- 出版社/メーカー: SMD
- 発売日: 2010/02/17
- メディア: CD
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Contactの流れを汲む打ち込みを駆使した覚醒フィラメント。サビ以上に「走る 走る 走るよ」の単純なフレーズが一番心に残る。
シングル曲のTomorrow's chanceは王道的なポップナンバー。キラキラと輝くイントロからストリングスが絡んで、テンポの良い楽曲が幕を開ける。もちろん、歌もいいのだけど、それ以上に間奏のストリングスのスピード感が半端ではない。打ち込みパートからストリングスの入った瞬間の力強さがたまらない。あと、最後の「wow wow chance」の入りもかっこいいね。
アルバム一番のお気に入りは、書きかけのDestiny。驚くほど力強いバンドサウンドにまず耳を奪われる。奇妙な浮遊感を持つBメロから、ベタベタなサビへ。意外とこういうシンプルなかっこよさを持つ曲はなかった気がする。「完全な円を目指しながら」という一節が好き。メロディーにはまってるし、詩的にも美しい。
孤独の結晶と雨音のベールは少し時代が違う。80年代の歌謡曲の要素を持っている。前者はやや暗めのケバケバしさのあるサビがなんとも昭和チック。後者はイントロとBメロを聴くと、なんかありもしない少し安っぽい昔のPVを想像してしまう。というか、このBメロ、綺麗なんだけど何かに似ている。サビはELTっぽい。どっちも水樹奈々が歌うとはまったんじゃないかな。
サクラピアス。タイトルはポップ感ばりばりなんだけど、その実態はたおやかという表現がよく似合う楽曲。桜の花弁が舞う様が歌詞にも曲にも目一杯織り込んである。打楽器主体の間奏への切り替わり方はちょっと意外。
Falling heaven's nowは同人音楽っぽさがある。少し多めのメロディーと、少しファンタジー臭のする歌詞って同人音楽のお家芸。もっとも、同人音楽にしちゃ演奏はしっかりしすぎてるし、サビの茅原さんの伸びやかな歌声は出来すぎているんだけど。
Flameで再び王道的なアップテンポな楽曲に戻る。FlameはParadise Lostとよく似た楽曲。ライブで歌ったら映えそう。Perfect energyは珍しくストリングスの入らない軽快なロックナンバー。空色デイズの爽快感を思い出した。朝のアニメに似合いそうな爽やかな楽曲。
アルバムは茅原さん作詞のしんみりとしたどっバラードsing for youで締めくくられる。いやいや、なかなかどうして素晴らしいアルバムじゃありませんか。アップテンポ、実験色、バラードとふんだんにそろえて飽きさせない。Paradeも好きだったけど、このアルバムは前作以上に全曲通して聴きたいアルバムになってると思う。
付属のDVDは野外ライブをおさめたもの。さすがにBLOWIN'は入ってないか…。詩人の旅、Paradise Lost、蒼い孤島の三曲が異常にかっこいい。涼宮ハルヒの消失はご覧になっただろうか。原作を少しでも面白いと感じたことがあるのなら観に行った方がいい。少々長丁場だが、原作の良さを原作以上に引き出した素晴らしい出来だった。
さて、その消失のラストを飾るのがこの優しい忘却。驚いたことに全曲が優しい忘却で、すべてアレンジ違い。一曲目が通常のバージョン、二曲目は映画で使用されて度肝を抜いたアカペラバージョン、三曲目はピアノとストリングスをメインとしたバージョン、最後はインストである。緩急はあるが全部通して聴くのは少し辛い。
アルバムの激しさからは想像もつかないような穏やかなバラードである。長門有希をモチーフにしている以上、その静かさは当然なのだが、最初聞いた印象はとにかく地味。メロディーの起伏が異様に少ないのだ。もうちょっと仰々しくしてもいい気がするのだが、長門有希の平たんさをイメージすると不思議としっくりくる。むしろ、心地よくすら感じる。
歌詞は原作者の谷川流が原案を。仕事してくださいマジで、などと思ってたら原作も再開の雰囲気で一安心。「消える世界にも私の場所がある」のワンフレーズが映画とシンクロして耳に残る。