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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

LED ZEPPELIN4

Led Zeppelin IV [DELUXE EDITION 2CD]

Led Zeppelin IV [DELUXE EDITION 2CD]

ちょっと前になってしまうのだが、LED ZEPPELINリマスター版の第二弾がリリースされた。
全米チャートこそ2位止まりながら、2,300万枚を売り上げた4枚目のこのアルバムは便宜上、?やFour Symbols等の名称で呼ばれるが、正式なアルバムタイトルは存在しない、などというのは今更語るまでもないような話である。
これまでの3枚同様に、オープニングは一際強烈なロックナンバーが据えられている。バンドの演奏と、ボーカルのソロが交互に登場するBlack Dog。高い声を引き絞って歌うプラントのスタイルが良く出た一曲だが、フェイクしやすく、観客を煽る事が出来る構成も手伝って、喉を壊してからもレパートリー入りしており、再結成の際も、先の来日の際にもセットリストに組み込まれている。Out On The Tilesのイントロを拝借して演奏するパターンが多く、個人的にもそちらの方が馴染み深いが、音源では気の抜けたギターの音から始まる。
強烈なドラムの音で始まるRock and Roll。ドラムの抜けや反響がリマスタリングの際のわかりやすい違いになるが、MOTHERSHIPに収録されたバージョンと聞き比べると、響き方が違うなというのは誰でもわかるんじゃないだろうか。MOTHERSHIPは鋭くキレのある音である反面、幾分聞こえなくなっている音が存在する。一方の今回のリマスター版は全部の音が細かく聞こえる。その分、一番高い音の力強さはどうしても失われてしまう。ライブ感や勢い重視ならば前者、音を聞き込むなら後者といったところだろうか。The Beatlesの後期音源のようにライブ感よりも作りこみが重視される音源では、迷うことなく後者なのだが、LED ZEPPELINのようなバンドだとどっちが正解ともいい難いところだ。
3の頃から芽生えたフォークロック的な要素をJethro Tull風の中世的な雰囲気に仕立て上げたのがThe Battle Of Evermoreだ。プラント以外の女性ボーカルが入ることで有名なこの曲は、後のプラントのソロの方向性に近しいものを感じる。マンドリンの音が美しく響く楽曲ではあるが、強烈なRock and Rollの後ではいささか地味に聞こえるし、次曲への橋渡し的な楽曲ととられても仕方のない感じはする。
この4枚目のアルバムを最高傑作にのしあげているのは、Stairway To Heavenの存在に負うところが大きい。LED ZEPPELINのスローナンバーといえば、ブルースを基調とした重々しいナンバーが目立ったが、この曲はそういった泥臭さを排除し、バンドには珍しいくらいメロディアスな仕上がりとなっている。プラントの消え入りそうなボーカルとアコギ、フルートという前曲同様に中世的なムードで曲は始まる。徐々に盛り上がっていくという構想の通りに、次第にバンドが加わり、プラントのボーカルも明朗なものへと変わっていく。ファンファーレのような音に導かれて、始まるギターソロは凄まじく、大体の人はそれ以前の曲調との落差に驚きつつも、その音に引き込まれていくことだろう。非常に長尺ながら、美しいメロディラインのこのギターソロは誰の耳にも深く刻まれるものだろう。プラントの高音ボーカルが最後の最後で炸裂し、曲を更なる高みへと導いていく。
2012年にLED ZEPPELINケネディ・センター名誉賞を受賞した際にHeartがこの曲の短縮版を演奏している。最後には数十名のコーラス隊が登場して、高音パートを盛り上げていたが、それだけの人数を動員してようやく原曲の盛り上がりと同じレベルに達するのだと考えると、改めてLED ZEPPELINの音の重厚さに驚かされる次第である。
レコードならばB面の1曲目にあたるMisty Mountain Hopだが、CDだと前曲の余韻さめやらぬ内にエレピの暢気なイントロが聞こえてずっこけてしまうかもしれない。イントロからしてジョンジー主導であることが分かる一曲で、次作の作風を先取りした一曲でもある。派手なソロがある楽曲ではないが(あるいはそれ故に)、解散後も取り上げられることの多い楽曲である。些か古びたアレンジの楽曲なのだが、2007年の再結成ライブでも取り上げられ、今の音で演奏された。
収録曲の中では群を抜いて地味である。それでいて耳を傾けてみると、意外とハードな楽曲。そんな損な楽曲がFour Sticksだ。例えば前作に収録されたのならば、中々に存在感のあるロックナンバーとなったのだろうが、個人的にはアルバム中、もっとも印象の薄い楽曲だった。このアルバムを聞くときは通しで聞くことが多いのだが、それまでどのような感想を抱いていたのかも思い出せないくらいである。そういった曲にも改めて耳を傾けるという意味では、このリマスター、大成功である。
ギターとマンドリンが美しく絡み合うGoing to Californiaは、先だってのプラントの来日時も変わることなく美しい音色で演奏されたことをお伝えしたかと思う。既発のライブ音源(BBC Sessions、How the West Was Won)の印象からStairway To Heavenの次曲という印象が強い。コンパニオンディスクにはインスト版が収められているが、インストとしても十分に成立する美しい曲である。ギターのアルペジオを活かした情緒豊かな作りは、Over the Hills and Far Awayへ継承される。
アルバムの中で唯一ヘビーなブルースを聞かせてくれるのが、When The Levee Breaks。洗練された曲が並んでいるアルバムの最後をこうした泥臭いナンバーが蓋をする。こうした何でもありなアルバムにも関わらず、アルバムがばらけることなく、むしろ統一感を感じるのがこのアルバムのすごいところである。ボンゾならではのずっしりとしたドラム(Wikipediaによるならば、「究極のドラムサウンド」)に咽び泣くようなハーモニカの音色が絡み合い、重々しいサウンドを刻んでいく。2ndのラストナンバー、Bring It on Homeに並ぶ素晴らしいラストナンバーである。ただ、残念ながらこうしたヘビーなブルースは以降、スタジオ音源では聞けなくなっていく。
今作のコンパニオンディスクだが、基本的にはほぼ最終形寸前の別ミックスが採用されている。聞き込んだ人でなければ、これがスタジオ版だよといえば頷いてしまいそうなものばかりである。ラフなテイク等が存在しないのかもしれないが、例えばThe BeatlesのAnthologyに比べると実に面白みに欠ける出来である(3作計6枚分のマテリアルを発表できるThe Beatlesが異常でもあるのだが)。
そのなかで、個人的に興味深いと思ったのはやはりStairway To Heavenである。最終版に比べると、楽器の音がはっきりと分離したテイクで、些か神秘さが薄らいでいるミックスだ(not to rollのくだりから滑り込んでくるギターの音が大きくてびっくりする)。最後のプラントのシャウトが左右から聞こえてくるのも、聞きなれた耳からすると、くすぐったい。
本作と同時にHouse of the Holyも発売されており、当然ながらそちらも購入しているのだが、如何せん本作の感想が長くなりすぎてしまったので、そちらは次の機会に回したい。