Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Presence/In Through the Out Door/Coda

昨年からスタートしたLED ZEPPELINのリマスターシリーズのリリースがついに終了した。最後を飾るのはPresence、In Through the Out Door、Codaの3作。ライブアルバムであるThe Song Remains the Sameは見送られた形である(もっとも、こちらは2007年にもリマスタリングされているが)。

未発表音源を収録したコンパニオンディスクが売りだった今回のシリーズ。一枚目のアルバムにライブ音源を気前良く収録したものだから、その先どんなレアな音源があるのだろうと期待していたのだが、この面では大いに期待外れといわざるを得なかった。同ディスクに収録された音源のほとんどは原曲とほとんど変わらない、ミックス違いの音源がほとんどであった。マニアックに聞き比べをするならば、微妙な違いが曲に与える印象の違いを捉えることが出来るが、曲が出来ていく過程を楽しめるような類のものではなかったのが残念だ。ジミー・ペイジは半端なものを聞かせるよりもこうした完成に近いものの方が意味があるとコメントしているけれど、需要があるのは間違いないから、また思い出したようにそういった音源を掘り出してくれるのではないかなと期待している。

さて、肝心の3作品だが、実を言うとあんまり聞かない3作品である。楽曲毎のぶれは多少あるにせよ、それまでLED ZEPPELINはブルースと若干のカントリー要素を軸としたアルバムを提供してきたバンドである。これががらりと変わるのがPresenceである。プラントの事故等のハンデを負いながら作成したこのアルバムは、非常に硬質な作りのアルバムとなった。渋谷陽一氏の絶賛のせいか、日本国内では最高傑作と呼ばれることの多いアルバムだ。主導権はジミー・ペイジが握り、演奏は4ピースのバンドのみ、鋭いギターの重ね録りが前に出ている。

アルバムのハイライトは冒頭のAchilles Last Stand、中盤のNobody's Fault but Mineの2曲である。ジミー・ペイジの着想の豊かさを感じさせるドラマチックなAchilles Last Standは聞いていてわくわくするような出来だ。幻想的な歌詞に、ギターの重ね録りとくれば、これはもう同時期に派手に活動していたQueenを思い出すのだけれど、そこはLED ZEPPELINQueenのような耽美なイメージとは程遠い硬派な仕上がりとなっている。Nobody's Fault but Mineは前作の流れを汲むヘビーな出来。古いブルースを彼らなりにアレンジした、LED ZEPPELINらしい楽曲で「アアーアアー」というコーラスが耳に粘りつく。

Presenceについては、この2曲が異彩を放ちすぎていて他が霞んでいるというのが個人的な意見である。ラストを飾るTea for Oneなんかは雰囲気のあるブルースではあるが、もう一つパンチ力が足りない。他ももう一つと思っていたら、2007年のO2アリーナで現役時代は一度も演奏されなかったFor Your Lifeが登場した。この様子は同ライブを収録したCelebration Dayで確認できるが、In My Time of Dying、Trampled Under FootというPhysical Graffitiを代表する2曲に挟まれながら、中々の存在感である。やはり、LED ZEPPELINの曲はライブ版を聞いてなんぼなのだろう。

時間に余裕のないアルバムであったため、コンパニオンディスクの曲数は少ないが、10 Ribs & All/Carrot Pod Pod (Pod)という未発表のインストゥルメンタルを収めている。ジョンジーの美しいピアノにギターが徐々に絡んでいく聞き応えのある楽曲である。

In Through The Out Door [2Cd Deluxe]

In Through The Out Door [2Cd Deluxe]

In Through the Out Doorは、打って変わってジョンジーとプラントが主導権を握ったアルバムだ。Presenceの硬派な雰囲気は鳴りを潜め、キーボードやシンセサイザーを多用したサウンドを聴くことが出来る。セールス的にはPresenceを大きく超えるビッグヒットとなったアルバムだけれど、LED ZEPPELINのアルバムとしてはどうしても疑問符がついてしまう。

クオリティは確かに高い。80年代の音を先取りしたようなシンセサウンドを他ならぬLED ZEPPELINがいち早く取り入れたというのが凄い。この柔軟さ、まさにLED ZEPPELINだが、やっぱり彼らの演奏にはシンセサウンド前回の楽曲はもう一つ似合わない。これが生の弦楽器ならイメージもまるで変わってくるのかも知れないが。

そんなわけで、冒頭のIn the Eveningを除けば、このアルバムの楽曲はランダム再生で聞く程度だった。リマスター版を改めて聞いてみると、やはり興味深い。Carouselambraのユニークな曲進行は聞いていると、新しい発見がある。ただし、どうしても興味深いの域を出ないのが本音である。

契約の関係上、LED ZEPPELINジョン・ボーナム亡き後ももう一枚アルバムを出す必要があったという。その消化のために作成されたのが、Codaである。タイトルのセンスは中々に秀逸だが、中身はアウトテイク集である。古くは1969年からのものを引っ張ってきているため、同じくアウトテイクを多数収録したPhysical Graffitiに比べるとまとまりに欠けている。

A面に1969年〜1972年までの比較的古い音源を配している。We're Gonna GrooveやI Can't Quit You Babyなどの締まりの良い楽曲が耳を引く。どちらも彼らのオリジナルではないが、初期の彼らの勢いと演奏の確かさを感じさせるものである。特にI Can't Quit You Babyは個人的にも好きな曲だ。Codaのバージョンもよいし、1stはもちろんのこと、BBCライブのバージョンも実に良い。

B面にはIn Through the Out Doorからのアウトテイクを3曲収録している。In Through the Out Doorの曲とは思えないほどタイトかつヘビーな演奏となっている。In Through the Out Doorの路線を継続しようとしたわけではなく、次作は今一度ハードな路線にしようとしていたことが伺える曲だ。わけても、Wearing and Tearingの切れ味の鋭さは傾聴に値する。この曲から始まるアルバムなんていうのもできれば聞いてみたかった。ジョン・ボーナムへの追悼の意味をこめてBonzo's Montreuxという、ドラムソロ曲が収録されている。迫力は十分だが、これならMoby Dickのライブ音源を入れるのでも差し支えないのではないだろうか。

コンパニオンディスクは豪華にも二枚組となった。Codaのミックス違いに加えて、今までに収まりきらなかったミックス違いとボックスセット発売時に付属したレア音源を収録(1stのコンパニオンディスクに収録されたWhite Summer/Black Mountain Sideを除く)している。Sugar Mama、St. Tristan's Swordという初出し曲や、FriendsとFour Sticksのオーケストラ音源を収録し、ようやく未発表音源らしいディスクになっている。Immigrant SongのB面だったHey Hey What Can I Doが牧歌的な良い雰囲気を出している。後半では彼らには珍しく優しげコーラスが登場し、その横でプラントがシャウトを繰り返す佳曲だ。