1stのChronicleのリニューアルCD。1stはインスト楽曲ばかりで、そこに詩がブックレットについていただけらしいのですが、それに新たに曲を付け加えたりして出来上がったCDですね。ちなみにこれ以前のCDは同人なので、一般のCD店に行っても置いてありません。まぁ、このCDは再販されているのですぐに手に入りますが、Lost以前は廃盤でプレミアがついているので、まず手に入りませんね。・・・ちっ。
さて、語るが長いぞー。
歴史の全てが記述された黒の予言書と、その通りに世界を動かそうとする黒の教団。そこから逃げ出した少女ルキアの物語。といっても、ルキアや予言書クロニカが出てくる曲は少なく、アルバムの大半は予言書の中身について記されており、それを示すように曲の最初に「第○○巻、○○ページ」というナレーションが入る。
冒頭は黒の予言書で、上に書いたようなようなことが語られる歌。静かに語られるナレーションと典型的な悪役声を聞かせるじまんぐ。裏で鳴っているキーボード音が荘厳で雰囲気出してる。「Black Chronicle!」の鋭いコーラスから一気にメタリックな曲調へとなだれ込む。この展開が一番この曲でかっこいいかもしれない。ただ、サビがArkっぽい。いや、発売時期から考えて逆なんだけど。
詩人バラッドから聖戦と死神までは一つの大きな物語になっている。
舞台はブリタニア。圧制を敷く女王によって処刑された詩人バラッド。彼は一つの歌を残した。彼の想い人である盲目の詩人ルーナはその詩を見つけた時、彼の名を継ぎ、詩人ルーナ・バラッドとして後に名を馳せる。圧制を敷いた女王は倒れ、姪であるローザ・ギネ・アヴァロンが新たな女王となり、人々を解放した。
アルバレスという名の一人の少年がいた。彼はある丘で少女と約束を交わすが、間もなく彼の故郷、ベルーガはプロイツェンに滅ぼされ、彼は全てを失う。彼はただ故郷の解放と少女と約束した丘を取り戻すために、フランドルへ亡命し剣を取る。彼は負け知らずの英雄となった。ついた名は「アルベルジュ(Belgaの死神)」だが、同時に、黒の教団は予言書に則り、不穏な動きを見せていた。
ある戦いで彼は、抵抗できない娘を殺そうとした味方を止める。激昂した味方は「ゲッヘンバウアー(Belgaの死神の死神)」を名乗る。アルバレスは娘を抱えて、戦闘から離脱する。彼の行為は裏切り。どうにでもなれ、と助けた娘に今までの彼の罪を全てをぶちまけるが、逆に娘に諭される。娘の名はローザ・ギネ・アヴァロン。敵国の女王だった。彼はブリタニアに亡命し、新たな名「アーベルジュ(Belgaの暴れん坊)」を女王から貰う。
彼の亡命は各国に激震をもたらし、戦争を休戦に持ち込ませる。しかし、休戦会談の最中に黒の教団が差し向けた刺客に殺される。その刺客こそがゲッヘンバウアーだった。たとえ、間違いに気づき正しい道を歩もうとしても、黒の予言書にアルバレスの死が記されている以上、それからは逃げられない・・・。
長い話だなぁ・・・。しかし、実際の歌詞はもっと長いのです。ここのパートは力入れまくっているのはよく分かるのですが、物語に力が行き過ぎてしまっている印象が拭えない。要するに曲ありきじゃなくて、台詞ありきで、本当にミュージカルになっていしまっている。特に聖戦と死神はその印象が強い。ミュージカルを見ているかのように曲を仕上げるのと、ミュージカルそのものにしてしまうのとでは、やはり違うと思うのです。聖戦と死神のローザとアルバレスの会話は聞いてて楽しいけど、歌モノとしてどうかと少し思った。
さて、アルバレスをあざ笑うような悲しむような、クロニカ(書の意思の集合体)の言葉である書の囁きを間に挟んで、予言書は別の物語を我々に聞かせる。
昔、二人の歌姫がいた。派手な紅の歌姫と物静かな蒼の歌姫。彼女達は王妃の座を巡り、争い、最終的に紅の歌姫がその座を手にした。蒼の歌姫は彼女の手により、一族もろとも滅ぼされてしまう。しかし、紅の歌姫の栄光もつかの間、彼女もまた策略により殺されてしまう。
海に沈んだ、蒼の歌姫は権力争いに加わった自分を嘆き、自分はただ歌いたかったのだと気づく。しかし、彼女は既に、海に嵐を起こす化け物Sirenへと変わり果てていた。
父親の背中が大好きだった少女は、父と共に船に乗りSirenの嵐に巻き込まれ難破してしまう。彼女を拾った船はとても陽気な人々の船。彼女はそこで父親がまだ生きてることを知る。
悲劇臭の漂う前半と明るい後半の対比がお見事。沈んだ歌姫はあらまりと霜月はるかの共演。いかにも気の強い派手な紅の歌姫を演じるあらまりと穏やかな蒼の歌姫を演じる霜月はるか。あおあして二人の素晴らしき巻き舌がとてもかっこいい。碧い眼の海賊は、海賊と少女の掛け合いだけどほのぼのとしてるし、台詞が実に面白い。聞いてて笑える。
雷神の左腕と雷神の系譜は二つだけで、一つの物語。右腕を失くした英雄が左手のみで邪神と戦う。右腕なき英雄には辛い相手だった・・・が、幾千の人々が彼の代わりに右腕に槍を持ち、その手を掲げた。彼は邪神を封印し、雷神と呼ばれた。
時が経ち、雷神は自らが結界となり、町を作り、そこで死んだ。そこで、身分違いの少年と少女が恋をした。一方、黒の教団は歴史を変えるべく、再び邪神を解き放とうとする。雷神の血は薄まり、人々はもう小さな雷しか起こせない。そんな時、少年に雷神の声が聞こえる。雷神の力を呼び起こせば邪神は倒せるが、片腕、いや全身をなくすだろう。それでも、良いか、と雷神は問う。是と答えた少年に一つの手が重なる。それは少女の手・・・。
雷神の左腕はインストで、やや安っぽい感じがゲーム音楽っぽい。逆に雷神の系譜はとてもかっこいい作りになっている。うちの弟が「始まりがB'zっぽい」と言ってたけど、最初のじまんぐが語っている裏で鳴っているギターが確かに昔の松本さんっぽい感じがする。スピード感もあるし、ドラマチックで大変結構。あと、ギターソロがこの曲は秀逸。
幾つもの歴史を辿り、ルキア達は、再び黒の教団へと戻ってくる。養父との対峙。養父こそが、黒の予言書を書いた張本人、永遠を手に入れた魔術師ノアだった。書に刻まれし魔獣が現れたのだ。常に歴史の横にいた白鴉が魔獣には、向かっていた・・・。
まぁ、書の魔獣はそういう内容の曲で、黒の予言書の続編に近い曲(同じサビ、語りだし)なんだけど、うむ、見事なまでに最後のじまんぐの高笑いと声しか覚えていない!いや、ギターソロのピロピロは覚えてるけど、完全にじまんぐに呑まれた曲。
最後にブックレットには歌詞が記載されていない曲が二つ。<ハジマリ>のクロニクルと<空白>のクロニクル。後者はただのナレーションだけど、前者は素晴らしい。どうやら、ルキアから白鴉に向けられたメッセージのようだ。抜け落ちたページという語りがあるように、黒の予言書から抜け落ちた魔獣と戦う前のページ。
かつて白鴉とよく魔獣ごっこをしたルキア。彼女が、ノア打倒のために、世界を黒の予言書から解き放つために死を覚悟して、白鴉に別れを告げる曲。あるいは、逆に白鴉がルキアへ別れを告げる曲なのかもしれない。
何にしても、素晴らしきは曲。晴れ晴れとした別れの雰囲気が良く出てる。ブラスのあかるげな感じと、悲しいメロディーがな、ほらYOU & Iみたいで良い。途中のやや気の抜けた明るいソロから、悲しくもあかるげなストリングスの奏でる音への移り変わりも良い。サンホラっぽくないけど、好きだな、こういう曲は。サンホラの中でもかなり好きかも。
うへっ、凄い長さになった。何だ、これは。えーと、全体的な感想だ。途中でも言ったけど、やや物語りに引きずられ過ぎ。元々Chronicleにあった曲達(Black Chronicle、詩人バラッドの悲劇、アーベルジュの戦い、蒼と白の境界線、雷神の左腕、キミが生まれてくる世界)にオチをつけるために、付け足されたものだから仕方ないけどさ。明らかに長すぎる。一枚で通して聞くには、ややかったるい感じもする。どうせなら二枚組で、ここには未収録のChronicleの二曲にもオチをつけちゃえば良かったのに。ただ、個々のパートを見てみるとやはりクオリティが高い。個人的には後半の二つの方が好きだけど、前半の壮大なテーマの方がサンホラらしいね。っぽさっていう意味では一番それらしいアルバムなのかもしれないけど、いかんせん歌モノから外れすぎてるし、まとまっていない印象が拭えない。一見バラバラな一つのテーマを描いたElysionの方がやはり僕は良いと思うわけです。