Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

SENSE

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直前まで収録曲を発表せず、CDシングルの収録もなしという、異例の形態でリリースされた本作。冒険的な売り出し方の割には、中身は意外とミスチルらしいミスチルが詰まっている。
前作では過剰なアレンジの詰め込みでギラギラしたポップスを、前々作は90年代初期に立ちかえったじっくりと聴けるおとなしめのポップスを作り上げたが、今回はその中間地点。強いて言うなら、明るめのシフクノオトといった感じ。
アルバムはざっくりとしたアコギで幕を開けるI。高いというよりは甲高い、わざと少し耳触りの悪い声で容赦のない自分責めの歌詞が歌われている。この曲だけ聞いたなら、アルバムのジャケットのイメージも相まって、深海のダークさの再来かと疑ってしまう。
苦しげな前の曲のシャウトを振り払うように、アコギとピアノの音が通り抜けて行く擬態。前の曲とは対照的にわざと少し低めの声で、明るいメロディーが歌われていく。PADDLEの2010年バージョンといってもいいくらい、気持ちのいいポップナンバー。個人的にアルバムの中で最も気に入ってるナンバー。転調のパートの歌詞の詰め込み方も秀逸。「目じゃないとこ 耳じゃないどこかを使って見聞きしなければ見落としてしまう」という歌詞が耳に残る。あと、「どこか」の歌い方がいかにも桜井さんらしい歌い方で好きだなぁ。
シーソーゲーム!!と思わず叫びたくなるようなHOWL。わざと乱暴に吐き捨てるような歌い方がまさにシーソーゲームの桜井さんそのもの。声自体はあの頃と大分変ってしまったけど、懐かしさが漂うのは間違いない。乱暴な歌い方の割に曲は、バンド中心のポップスというのがまた懐かしい。無気力さが際立つAメロの歌詞と対照的に「繰り返し叩き続ける扉」「振り返りながらも目指す未来」とHOWLする様が美しい。二晩の「宝物には変わりない 違いない」という歌詞が印象的。「違いない」と頷いてみせるのが凄く優しくて力強い。
I'm talking about lovin'はHOMEに入っていそうな爽やかさが売りの楽曲。やわらかい風と同じ系統の楽曲だと思う。爽やかさに相応しい、クサい甘い歌詞。どんだけ惚気てるんだというぐらい甘ったるい。最後のサビ前のブレイクの鐘の音とかわざとだろうか。幸せなクリスマスを迎える人にはお薦めの楽曲です。
同じ甘ったるいラブソングなら、バラードの方がやっぱり映える。ライブでは随分前から演奏されて映像化の方が先行していた365日。君が好きやしるしの流れをくむ2000年代のミスチルの王道バラード。ゆっくりと語りかけるように響くボーカルが気持いい。Bメロで一瞬、終わりなき旅に移行しそうになるのはきっと気のせい。365日のラブレターにに君を書き連ねる、という表現が好きですね。サビの中の盛り上がりを「フーッと」というファルセットで吹き消す構成や、最後のサビで盛り上がりが最高潮になった瞬間にボーカルが消えるのもお見事。こういうまっすぐなバラードは前作ではなかったし、あってもここまで映えなかっただろうなぁ。
その余韻をぶち壊すように不穏なデジタルサウンドが、淡々としたドラムに乗って流れてくる。ロックンロールは生きている。ニシエヒガシエ、フェイクの流れをくむ尖ったミスチルの登場である。HOMEの時のフェイクもそうだったが、柔らかなポップから、こういうロックな方向にいきなり変わる瞬間が凄くかっこいい。フェイクみたいに過激な歌詞ではなく、ひたすら韻を踏むことに徹したこの歌詞は口ずさむと飴玉でも舐めてるようにコロコロと口の中を転がって行く。怪しげ雰囲気の漂う「ライラライラ…」というコーラスや語りと唄の間を行き来する早口なCメロなど、一曲の中に目一杯かっよさを詰め込んでいる。それだけに最後の歌詞が「レボリューション」「エボリューション」の連呼で終わるのが少し物足りない。
さくらの頃のサザンがやりそうだなぁという印象のゆったりとした、でも重苦しさのあるミドルナンバー、ロザリータ。具体的にはマイ フェラ レディっぽい。「君の名は伏せるよ 匿名を使って」という歌詞が光りはするが、如何せん歌詞のエロチックな雰囲気に曲やボーカルがついていってないのが残念である。下世話さがなくて、少し美しすぎる。
「静かに 静かに」という歌詞の通り、静かなピアノバラードである蒼。これは印象が余りに薄い。途中の口笛くらいしか印象に残らない。ライブなんかでしっとりと聞かされたら印象が変わるのかもしれないけど。
心機一転。配信シングルであるfanfare。ワンピースの映画のタイアップ曲でもあるこの曲はまさに、帆を張り上げるような清々しいボーカルで錨を上げる。今までのミスチルにはちょっとないようなはっちゃけたポップナンバー。Aメロのはっちゃけ方が好きだなぁ。ここまで無責任に明るい曲って実はミスチルはほとんどない。ホーンやストリングスを盛大に取り入れたパワーポップという意味ではエソラとまったく同じなんだけど、こっちの方にはギラギラした感じがせず、歌詞も曲も演奏もひたすらにまっすぐだからかな。CDシングルだったら買ったレベル。
ハルもアルバムの中のイメージとしては蒼と同じで、凄く印象が薄い。もっとも、蒼にくらべるとドラマチックな作りだし、系統としては365日と同じだから、fanfareとPreludeの間という位置づけが悪いのかもしれない。転調部分の大きな広がりが最後まで保てずにサビで収縮してしまうのが残念ポイント。
「英雄」「光りの射す方へ」「その向こうへ」と色んな過去の楽曲を思わせる単語が散りばめられたPrelude。7分近い大作ではあるが、その長さを感じさせないテンポの良い展開で魅せる楽曲。個人的に擬態に並ぶアルバムのベストナンバー。Anyと同じ、内省的な部分と、前向きな部分が共存してる楽曲で、曲自体もホーンが効果的に鳴っていて、Anyと被る部分が多い。もっともAnyに比べると曲自体にボリュームがある。その重量感はどちらかといえば、終わりなき旅のそれに近い。歌詞にもあるけど、列車が一気に駆け抜けて行くような爽快感がある。
Preludeで終わった方が、個人的にはかっこいいと思うのだけど、最後にひんやりとしたバラード、Foreverでアルバムは締められる。死別を思わせる喪失感のある歌詞に対して、Aメロの作った声が嘘くさいのが個人的にちょっと受け付けない。あと内容に対して、歌詞に小難しさとクサさが半端に混ざってしまってるのもなんとも。HEROやあんまり覚えてないやみたいなエンディングが個人的には理想。
色々、書きましたが、結論だけ述べると結構好きなアルバムです。ポップアルバムとして優秀なバランスだし、過去のミスチルと今のミスチルが程良くブレンドされてる。I Love U以降、いろんな方向に突っ走ってたミスチルがようやくあるべきバランスに戻ってきた。