とある方のご好意で、en-ballの7日目に参加することができました。品川駅から徒歩5分もかからない、映画館やゲームセンターが並ぶ建物の中に品川ステラボールはあります。まずは、隣接するグッズ売り場へ。通常のテントでの売り場とは異なり、真ん中にグッズ見本を配置した売り場は、雰囲気もあるし、程よく空いており、良い動線だったかと思います。
生憎、整理番号は最後尾に近く、ドリンク売り場に近い位置で少し背伸びをしないと見れないような場所を陣取りました。enのロゴが浮き上がっている以外は極めて簡素な造りです。会場の規模が違うせいもありますが、enやen2に比べると、本当にシンプルなステージです。会場の照明が消え、すぐさまの開演です。
01.ジミーの朝
現れたのは、なんと稲葉さん一人。何ということのないリラックスした表情で、ステージ真ん中に来ると、観客が一気にステージに詰め寄ったため、最後方からかなり前の方に行くことができました(それでも、真ん中くらいですが)。アコギを持って、椅子に座り歌い始めたのはSinging Birdでも1曲目を飾ったジミーの朝。フルートもチェロもないアルバム以上にシンプルな演奏です。時折笑みを浮かべながら、気持ちよさそうに歌う稲葉さんが印象的でした。二番を歌い終えた後も、アコギを弾いているとバンドメンバーが続々と登場。チャンチャンといった具合で、アコギを弾き終えて、次の曲へ。
02.THE RACE
力強いリフが何の曲か一瞬分からなかったのですが、Peace Of MindからTHE RACE。原曲はかなりスマートなロックだったのですが、気合の入った演奏でかなり骨太な演奏になりました。サビでのJUONのハモりが綺麗にはまってました。ライブ向きの曲ではありますが、ソロライブを通して歌われたのはこれが初めてでした。最後には「とこしえのRACE」を何度も引っ張ってみせてくれました。
03.CHAIN
「NA NA NA〜」の歌声から始まったのはCHAIN。こちらはen以来の演奏です。これまた原曲は軽い感じのロックなのですが、随分と分厚い印象の演奏となりました。
04.AKATSUKI
ドラムの淡々としたリズムから、アコギのイントロが重なるのは前回のen2と同様です。en、en2の両方で歌われたシングル曲ですが、調べてみると、他の日ではWonderlandもしくは愛なき道がセットされており、en-ballでは初めての演奏だったようです。en2では大分スリムな印象を受けましたが、今回は全体的に荒々しい雰囲気を受けました。「RISE!!」で観客がステージに向かって拳を突き上げる風景は、スタンディングならではかと思います。
05.そのスイッチを押せ
マグマから意外な選曲です。今ツアーで初披露のこの曲、まずは稲葉さんが中央に出てきてスポットライトの下、原曲どおり、アカペラから歌いだしました。マグマの中でもかなり好きな部類に入る曲なので、個人的にはこれが聞けただけでもラッキーな気分でした。二番終わりのCメロの頭をかきむしるようなメロディがいいですよね。原曲でも最後にドラムだけが残りますが、このライブでもドラムが最後に観客を焦らすように叩いては止め、叩いては止めといった演奏でした。最後は「そのswitchを押してみたらどう?」を歌って終了。
06.Touch
今回、唯一、志庵から選曲された曲です。原曲ではギターが入らないジャズっぽいテイストでしたが、稲葉さんのしゃがれ気味の声とDuranのギターがあいまって、ブルージーな印象を受ける曲になっていました。片手を持ち上げて「Touch・・・」と囁くのは、enの頃から変わってませんが、声が当時よりも艶を増したように感じます。最後のアカペラと絶妙に被さる演奏がすごく上手いなと思いながら見ていました。
07.なにもないまち
アコギの奏でる不思議な、それでいて聞き覚えのあるメロディ。またしても、マグマからの選曲です。後方には、1日の何気ない風景が映し出され、原曲よりも少しゆったりとしたアレンジとファルセットが多めのボーカルが、お洒落な空間を演出しました。原曲はコミカルな感じでしたが、イメージをがらりと変えてきました。このアレンジは今回のセットリストの中でも群を抜いて良かったですね。最後のパートは大島さんが担当。原曲よりもワンフレーズくらい多く歌っていたかと思います。
08.横恋慕
ラテンチックなアレンジが異彩を放っていた、Peace Of Mindの横恋慕がCoreyの長めのベースソロの後に、登場。バンドの音が大きいため、原曲の持つわざとらしい安っぽさはほとんどありませんでしたが、そこは自分がカバーと言わんばかりに、汗を撒き散らしてみたり、いつも以上にねっとりと歌ってみせる稲葉さんが印象的でした。サビではコーラスを観客に歌うように両手を広げる稲葉さんですが、ファルセットのパートのため、大きな声にはならず、JUONのコーラスが良く聞こえていました。二番が終わると、バンドが自由に動き出し、短いジャムセッションが展開、ここで稲葉さんが最近では珍しく、「アウアウアー!!」というデイヴィッド・カヴァデールばりのシャウトを披露。観客のボルテージが早くも上がっていきます。SATOKOは途中までパーカッションですが、Duranがギターで転調パートを奏でている間にドラムへチェンジ。最後はJUONと二人のファルセットで「先よ」を連呼してました。
09.Golden Road
短いMCを挟んで、ようやくSinging Birdから一曲。原曲よりも長いイントロを大島さんが奏でている間にステージ前面に薄いカーテンが引かれて、映し出されたのは銀杏の並木通りの映像。一旦上がったテンションを落ち着けるように、落ち着いた演奏でした。予想してはいましたが、サビ後半のコーラスの掛け合いは歌に対して観客が拳を振り上げながら「Oh yeah!」「Alright!」の声を返すという楽しいものでした。
10.眠れないのは誰のせい
11.正面衝突
稲葉さんのライブではお馴染みのロックな二曲です。独特の節回しが妙にツボにはまる、眠れないのは誰のせい。ダンプカーが突っ込んでくるかのような勢いを持つ正面衝突。どちらかといえば、ライブの後半戦で、観客のテンションを挙げる役割を果たすこの二曲が、中盤で出てきたため、「まさかもう終わりが近づいているのか」と勘違いをして、若干あせりました。正面衝突は、フェスやこういうステンディング形式だと特に映えますね。この曲では冒頭と途中で稲葉さんが力強いブルースハープを奏でてました。Bメロの前半は完全にJUONに歌わせるという構成。JUONのボーカルには今回かなり助けられているようです。
12.泣きながら
新しいアルバムからしっとりした曲を、ということで紹介された泣きながら。ここでは、SATOKOがピアノ(大島さんのキーボードとは別にステージ)を弾くというサプライズ。フルートこそありませんでしたが、代わりに大島さんによるキーボードで、原曲ほぼそのままのシンプルな演奏がヒートアップした会場を冷ましていきました。
13.遠くまで
Duranがギターソロを披露。en2では小野塚さんのピアノにあわせて歌う形式が取られましたが、今回はDuranの少し枯れ気味のギターに合わせて1番を歌いました。Touchもそうでしたが、この日の稲葉さんは中低音の出方が抜群でした。遠くまではいつも稲葉さんが伸び伸びと歌っている印象を受けますが、この日は特にそうでした。原曲はカルテットをバックに据えた美しい曲ですが、このアレンジは人間味のある暖かいアレンジになりました。記憶が曖昧ですが、曲の終わりのシャウトはほとんどせずに、稲葉さんが衣装チェンジしに行ったのがこの曲だったと思います。稲葉さん不在の間はDuranとJUONが二人で向かい合ってギターを大きくかき鳴らすという激しいはずなのに、どこか微笑ましい光景でした。
14.ルート53
ブルースハープをもった稲葉さんが掛け合いの後に奏で始めたのは、ふるさとのメロディ。会場から自然と歌声が沸き、短い時間でしたがふるさとの合唱をすることになりました。終わって稲葉さんが一言「すごい!」と漏らしてたのが印象的でした。バックには青空とROUTE53の看板が映し出され、ルート53が演奏されました。アルバムの中でも個人的にお気に入りの曲なので、こうして生で聞けたのが嬉しかったです。BメロのファルセットのコーラスはJUONとCoreyがしっかり担当。CDにはありませんが最後にもブルースハープを稲葉さんが吹いて終了。
15.Stay Free
案の定ではありますが、CD以上にライブ化けする曲でした。前の曲から、そのままアコギのイントロに突入し、余り大きくないステージをメンバーが動き回り、観客が「Stay Free!!」とレスポンスする。Bメロのクラップ音は会場全体で再現かなとも思ってたのですが、余りの盛り上がりにそれどころではありませんでした。ギターソロ前のパートで稲葉さんのシャウトが再び会場中に轟き、ライブ終盤に向けて再びテンションが上がっていきました。
16.念書
配信曲の第一弾です、という紹介と共に、再びステージに薄いカーテンが引かれて、映し出されたのはPVさながらの檻の映像。バンドが檻の中に閉じ込められたかのような演出で、中にはELEVENツアーの愛のprisonerの演出を思い出された方もいたかもしれません。歌詞自体はひどく前向きなのに、何故かくらい印象を受ける楽曲ですが、ライブでは他の曲同様に力強さが勝りました。最後はシャウトと共に両腕を肩まで上げた稲葉さんが逆光になり、檻の扉が開くという演出。
17.孤独のススメ
続く孤独のススメは、Singing Birdの中でも人気が高いのではないでしょうか。今後もライブの常連曲になりそうな予感がするくらいの盛り上がりだったと記憶しています。サビの掛け声はもちろん、二番冒頭でJUONと思いっきりがなり立てた後で、「悪いのはアイツだ!?」と稲葉さんが問いかけ、JUONと共に悪い奴を探し始め、Duranのほうを向くと「悪いのはアイツだ!」「やっぱりアイツだ!!」と決め付けた後に、歌を再開という気のきいた小芝居がありました。間奏では稲葉さんが、「ステラボール!!」と呼びかけ、観客による合唱と足踏みを促すと、観客から見てステージ左手にダッシュ。全く気づきませんでしたが、ステージ横にも短い花道を用意してあり、これには端にいた観客が大歓声。小さいステージに見えて、実は意外と横長なステージでした。
18.Bicycle Girl
自転車のベルを執拗に鳴らす稲葉さんに、イントロで「Bicycle Girl!Bicycle Girl!」を連呼するJUONから、この曲は始まりました。前の曲に比べると、若干勢いは落ちたように感じますが、Singing Birdで一番の変態的な曲ということで観客の盛り上がりは上々。バンドによる最後のコーラスが、たまっていた汗を吹き飛ばすような爽やかさでした。
19.マイミライ
Okayのカップリングではありますが、en2でも歌われており、稲葉さんが気に入っていることが伺える楽曲です。女性提供曲とは思えないほど、歌い回しが独特な骨太なロックでして、en2ではまさにそのハードな面が浮き彫りになってました。今回はJUONのギターソロからスタートし、そのまま歌いだし、「ここらへんでSTOP」でJUONの肩に手を置き、演奏を止めさせました。「嫌いじゃないけれど・・・全然嫌いじゃないけれど」と歌った後にアカペラで歌い始め「若干疲れるかも」でバンドが演奏を再開。ハードさよりも、歌詞の持つ楽しさを前に押し出した演奏となりました。もちろん「どういうこっちゃ!!」は会場全体で声を上げました。転調パートでは、なんとSATOKOがボーカルを取り、稲葉さんがコーラスを歌うという珍しいスタイルでした。
20.oh my love
皆に捧げますという声で、oh my loveが本編ラストとして演奏。Singing Birdのメインの曲はやはりこの曲なんでしょうね。聞き入るタイプの曲かなとも思っていたのですが、「my love, my love, my love」のパートで、稲葉さんと会場が何の合図もなく綺麗に合唱しているのを見て、ライブって凄いなと改めて思った次第です。最後の転調は、一気にテンポアップし、稲葉さんが再びステージ横に走り出し、「フッフー!!」のコーラスを煽る煽る。終わるのが勿体無いなぁと思いながらも、やがて稲葉さんが「Thank You!!」と叫び、元のテンポに戻り、本編終了です。
21.Soul Station
ステンディングであることを考慮したのか、さほど待たせることなくメンバーが再登場。大島さんの静かなキーボードから奏でられるのはenツアーのハイライトでもあったSoul Station。アンコールで歌うには中々にパワーのいる曲ですが、ライブ中度々「無理をするのが得意です」と笑顔で言っていた稲葉さんの言葉通り、血管が浮き出そうなくらい力強い声を聞かせてくれました。最後のシャウトはいつ聞いても迫力があります。
22.Okay
簡単なバンド紹介をここで挟みました。何故か可愛いコールが起こり、大島さんにぼそっと「可愛いよ」と稲葉さんが言ったり、JUONに対して「君に対しては何も言うことはありません」と笑い混じりで言った後に「やめましょう、いい年して可愛いとか可愛くないとか気にするのは!・・・あ、君、まだ若いのか」と年長者っぽい発言がでる一幕がありました。最後は「こんな癖の強いメンバーでやってまーす!」
オーラスを飾るのはOkayでした。昨年は稲葉さんがギターを持ち、ややシリアスな調子で演奏されましたが、今回はより前向きなイメージでした。後方に映し出された青空やバンドメンバーのセピア色の写真のおかげかもしれません。時には「Okay」の声を観客に任せながら、笑顔で迎えたラストソングでした。この曲、本当にいい曲ですよね。間奏で、会場にスタンドを向けて「Okay!」のコーラスを歌わせる部分が妙に感動的でした。最後も「Okay!」の連呼が歌詞の通り、感動的に響きました。
手をつないで全員でお辞儀をすると稲葉さんは握手したり、軽くハグしたり、SATOKOの頭をくしゃくしゃと撫でたりしながらバンドを見送り、最後に観客に向かって頭を下げ「また会いましょう!」の声と共に退場。
Singing Birdとマグマを中心とした曲構成で、en2の完璧なバンド像とは異なり、少し内向きのアレンジや小さいハコならでの熱気がうまく伝わる構成でした。曲構成、ボリュームも中々のもので、個人的にはいけて本当に良かったなと思えるライブでした。今日はこれから、ライブビューイングということでもう一回だけ、en-ballをenjoyしたいと思います。