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たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

STARS

「声明/Still Alive」以来、7年ぶりとなるCDシングル「STARS」が本日リリースとなりました。
別に7年間、新曲が出なかったわけでもないのですが、日本の音楽事情がどんどん変わっていって、それに合わせたのかB'zもシングルを出さなくなっていたので、何となく感慨深いものがあります。

表題曲「STARS」は35周年を記念する楽曲。Pleasureのツアータイトル曲は気合を入れた楽曲が多いですが、良い意味で気の抜けたからりとした楽曲に仕上がっています。公式の紹介文ではこれまでのファンや楽曲が全て「STARS」であり、何やら荘厳な曲になってそうな気配がありますが、実際には歌詞も肩の力が抜けています。ジャケットやアーティスト写真の雰囲気はむしろ「Dark Rainbow」「ペインキラー」「君の中で踊りたい 2023」の方が相応しい。
イントロなしでクラップ音と共に「We're all stars」のコーラスが始まり、陽気な楽曲が展開。ブラス混じりのアレンジはもちろんYT。ベースもYTでドラムは玉田さん、キーボードは川村さん、そして最近すっかりお馴染みのパーカッションはもちろん斉藤さんです。「ペインキラー」以外はすべてこの布陣でレコーディング。
稲葉さん独特の表現で日常の上手くいかないことをぼやきつつも、サビでは「We're all stars」という希望的観測とも楽観的ともいえる歌詞を展開。「荒ぶる風にまた吹かれよう」のさりげないフレーズがいかにも稲葉さんらしくて個人的には好き。あんまり暗くならないようにするためか、突っ込みのようなコーラスが入ってくるのも面白い。
1番が終わるとピアノの音と共に転調して、Cメロが登場して、ブルージーなギターソロが登場して2番になだれ込む変則的な構成。2番が終わると、再びコーラスパートに移って終わるので、曲自体は短め。
特典のBlu-rayでは3曲目に登場。TOKYO FM HALLでのスタジオライブは、川村さん・玉田さんは音源と共通ですが、ベースは亀田さん、ギターに大賀さんを迎える特別編成。かなり安定感のある面子を揃えてる感じがします。稲葉さんのボーカルが好調過ぎて分からないけど、当然CD音源とは別です。
「STARS」はPresent X当選者200名を招いてのライブで、頭でクラップの練習をしてからスタート。その他の2曲とは異なり、明るい日が差すしているようなセットの中で演奏され、星というよりは太陽のような陽気な雰囲気で演奏されます。Cメロ以外は出番があまりない川村さんのテンション高めのアクションにもご注目。

タイアップ曲「Dark Rainbow」は、映像では1曲目に登場。カウベルとカウントダウンの音に乗せてギターのリフが重なるハードなナンバーで、「NEW LOVE」の「SICK」や「俺よカルマを生きろ」と同系統のナンバー。80年代の王道的なロックの作法に則って曲が展開すると思いきや、メロではマイナー調の湿ったメロディが展開。そこから、サビの「吹き飛ばしてやりましょう」の歌詞にあわせて、曲がさっと表情を変えていく、お得意と言えばお得意なスタイル。
「栄華のためならえんやこら」という独特なフレーズの裏で、ドコドコと音が鳴りだして段々派手になっていくドラミングが気持ちいい。この辺はさすが玉田さん。サビでは多分YTと一緒に何かコーラスを叫んでいるんだけど「Catch the rainbow」以外はよく聞き取れず。
激しい曲ほどギターソロは大人しくなる松本さんですが、この曲では二段構えで良い意味で期待を裏切ってくれる。そして曲が終わったと思ったら、非常に不思議なパートがアウトロとして登場。音源だけかの遊びかなと思ったら、映像でも演奏の細部は違えど再現しているのでライブでもやるのでしょうか。「世界はあなたの色になる」のアウトロを思い出させるちょっと不気味な演奏ですが、次の「ペインキラー」への橋渡しになっています。
特典映像では暗いスタジオにネオンのような照明、治安の悪いスラムをイメージさせるセットの中で演奏。この曲は動きがあったほうが映えるなと思いました。稲葉さんはスタンドを器用に捌きながら歌い上げており、松本さんはあんまり動かないですが何か様にはなっています。スタジオライブとは言えそのままMVとしてもいけそうな映像で中々に気合が入ってます。他のメンバーはほぼ顔も見えないですが。

「ペインキラー」は本作のダークホースと言って良いでしょう。アレンジは寺地さん、リズム隊はシェーンとバリーなので2017年以前のストック曲と思われます。ストリングスにクレジットされている石川さんは「EPIC DAY」でのみの参加なので恐らくはその頃に制作された楽曲。
ピアノの印象的なリフに乗せてバンドとストリングスが乗っかってくる非常にスリリングな楽曲です。Aメロからサビにすぐに移るシンプルな構成ですが、一つのメロディが長めかつ非常に抒情的なメロディで構成されています。メロディメイカ松本孝弘の面目躍如たる楽曲で、「Black Coffee」などに通じるどこか懐かしい感じと綺麗なメロディにため息が漏れる楽曲。
2番が終わると、そのままストリングスをバックに綺麗なCメロが登場。少しダークな雰囲気だった曲調に光が射すようなメロディで、「多分一人だけ」のフレーズのメロディが何とも言えぬ感じ。後半でまた暗いトーンに戻すと、かなり作り込んだと思われるギターソロに耳を奪われます。最後は長めのサビを繰り返し、アウトロではギターの裏でシェーンらしい派手なドラムが聞こえてきます。懐かしい。最後はピアノのリフに戻ってきて終了。
歌詞は女性視点のようにも見えますが、別に男性視点でも問題はないかなと思います。一途と言えば聞こえはいいですが、曲調もあいまって若干病的な感じのする重たい愛を囁く主人公。「ハマッてくださいどっぽりもっと」「ワタシ無しではダメになってほしい」等のフレーズに病的な雰囲気が垣間見えます。
ピアノリフをメインにしていて、ちょっと病的、曲調は非常にロマンチックなので、どことなく「LOVE PHANTOM」を想像させるものがあります。「HINOTORI」の全貌が見えない時に妄想していた曲調は個人的にこんな感じなので、実は「HINOTORI」の前に「LOVE PHANTOM」の続編としてチャレンジした楽曲だったら面白いなと勝手ながら思ってます。どういう経緯で出てきた曲なのかはB'z Partyの会報待ちでしょうか。

トリを飾るのは「君の中で踊りたい 2023」で、この曲が再録された理由もB'z Partyの会報待ちですね。2ndシングルとして1989年に発売された楽曲で、デビュー曲「だからその手を離して」に比べるとメロディや展開が各段に練り込まれているのが分かる楽曲で、演奏の古臭さを除けば今でも通じる楽曲だと思ってました。ただ、ヒットもしていない2ndシングルという微妙な立ち位置のため、次作「LADY-GO-ROUND」と並んでシングルの中では存在感が薄い楽曲です。ライブでの演奏も2008年のACTIONツアーのホール公演が最後となっています。
原曲は緊迫感のあるイントロに打ち込みが重なりますが、今回はドラムの一音からサビになだれ込む構成に大胆にアレンジ。そこからの演奏はいつもよりスマートではあるもののパーカッションも含めたゴージャスな演奏に生まれ変わり。稲葉さんが原曲同様に「oh yeah」と軽くシャウトするのはご愛敬。メロは原曲同様にバンドの演奏は控えめ、コーラスは原曲よりもかなり控えめになっているのですが、まるで分厚さが違うのが不思議。原曲はバブリーな雰囲気だったのに、ちょっとサイバーパンクっぽい打ち込みで未来感を出しているのはさすがのYTアレンジ。
大きく変わったのは間奏部分。サビが終わると稲葉さんの軽い掛け声と共にスリリングなギターソロが登場し、弦楽器を模したパートにコーラスが重なり渾身のラップで盛り上がりが最高潮になるのが原曲。音源を持っていたらぜひ聞き返してほしいですが、このパートは2ndとは思えないほどスリリングでかっこいいです。
今回はギターソロ含めてよく言えば貫禄のある落ち着いた構成に変更。ロックマンなしヤマハのギターでは、当時の音を再現できないこともあるのでしょうが、一旦うねりを上げるようなギターソロが登場し、弦楽器パートは控えめな演奏に差し替え。代わりにピアノとコーラスが不思議な雰囲気を漂わせ、英語ラップの代わりに新規の日本語歌詞が登場。デビュー直後の歌詞に悩んでた時期の曲に、いきなり熟練の歌詞が登場するアンバランス感が面白い。
サビはフェイクしつつ長めに繰り返して、最後のコーラスパートをきっちり歌い上げてライブ風にきっちり終了。原曲はサビとコーラスが重なり合いながらフェードアウトするのですが、まあフェードアウトは今のB'zはめったにやらないですからね。
だからその手を離して」が「B'z The Mixture」で完全に新規アレンジで再録されましたが、バンド感全開だった「だからその手を離して」とは違ってかなりアレンジを練り込んで変更した印象。その他の「B'z The Mixture」の再録曲のように当時のアレンジをなぞってもいないので、「スイマーよ2001!!」が一番近いでしょうか。解体ではなく再解釈といった感じです。
特典映像は一応当時のMVを意識したのか、最初と終わりだけ上方から二人を見下ろす構図。セットはどこか地下鉄風で、稲葉さんはスタンドではなく有線マイクを使用、松本さんはフライングVを使用。「Dark Rainbow」よりも明るいのでようやくバンドメンバーの表情が見えるようになります。

新曲が2曲、ストックと思しき曲が1曲、再録が1曲、物凄い派手な楽曲があるわけでもないのですが、中々にバランスはいいと思います。後半2曲を違和感なく収録できるのはシングルの特権ですね。アルバムだと中々こうはいかないです。配信に積極的ならこういう曲もさらっとリリースできるのかもですが。
ジェンガは完全にコレクター向けのグッズ。とは言え、ジェンガを使った映像でプロモーションはしてますし、その内手に入らなくなりそうなのでほしい方はお早めに。スタジオライブはライブでありつつもMVの要素も兼ね備えているので、Blu-ray付きのCDは買って損はないかと思います。「ペインキラー」がないのが残念と言えば残念。次にシングルが出るのはいつでしょうか。


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