Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Up In Smoke

アップ・イン・スモーク

アップ・イン・スモーク

Aerosmithの興味深いライブ音源がリリースされた。オフィシャルでの告知は一切ないため、複雑な権利関係の元にリリースされたものと推察されるのだけれど、経緯等の詳しいことは一切分からない。
二枚組のライブ音源で、それぞれ収録時期も異なる。こう書くと、Queenのレインボー公演と同じようなリリースを思い浮かべてしまうが、あんなに上品なものではなく、ブートレッグをそのままCDに詰め込んだかのような、よく言えば時代を感じさせる、悪く言えば音質の悪い音源である。
Disc1に収録されたのは73年9月26日のCounterpart Studios公演で、デビューしたてのAerosmithの貴重なライブである。基本的には1stアルバムからの選曲で、いくつか2ndの曲を先行して演奏している。1stアルバムのチープな演奏をそのままスタジオライブで再現といった風情である。
どっしりとした今のAerosmithからは想像すべくもないスッカスカの演奏なのだが、曲によってはそれが非常に良い味を出している。好例はOne Way Streetで、音の隙間がむしろ心地よく聞こえてくる。後まで長く歌われることになるMama KinやDream On、Train Kept A Rollin'も収録されているのだが、こちらはもう一つ煮え切らない演奏である。1stアルバムを聞いた後に、このライブ版を聞けばなるほどな、という出来なのだが、以降のライブを知っている身としては初期の興味深い音源といったレベルである。
Disc2には78年のPhiladelphia公演を収録した。Disc1から5年後の演奏で、Draw The Lineツアーの模様を収めたもので、Live!Bootlegと同時期の演奏といえば分かりやすいだろうか。Aerosmithがバンドとしては絶好調に近しい時期で、狂ったようなテンションの演奏が聴ける。
演奏力を考えるのならば、円熟した感のある近年のA Little South Of SanityやRockin' The Jointの方が質の高いライブアルバムになるのだろうが、この時期のこのテンションは聞くものを圧倒する。Live! Bootlegを初めて聞いたときのぶっ飛んだ印象がもう一度蘇る。Live! Bootlegとのかぶりがあまりないのも嬉しい。冒頭のRats In The Cellerからして、とにかくテンションが高い。文字通りクスリをキメながらの演奏で、スティーブンの声はとこどころ掠れているのだけれど、それがまた曲にあってる。Kings & Queens、Big Ten Inch Recordの2曲は音源でもお気に入りの2曲なのだけど、70年代のライブ版が収録されているのはPandra's BoxかClassics Live!くらいだったので、今回の収録は嬉しい。Aerosmithには珍しく重厚で、中世寄りの歌詞が光るKings & Queens、こいつは最後のスティーブンの声をからす勢いのシャウトがとにかくかっこいい。
Aerosmithのカバー曲といえばTrain Kept A Rollin'が代表格で、The BeatlesのI'm DownやCome Togetherがあがってくるんだけど、それと同じくらい、ある意味それら以上に自然にAerosmithの曲として溶け込んでいるのが、Big Ten Inch Recordである。いかにもアメリカ風のスイングした楽曲がライブではハードにロックするのが面白い。曲もいいのだけれど長い演奏の後に、この曲のイントロが登場する瞬間が好きです。
音は悪いけれど、当時の雰囲気やパワーを存分に感じることが出来るライブアルバムになっていると思う。この音を出すために使われたエネルギーが別方向で衝突して、Aerosmithは一度空中分解していしまうのだけれど、こんな感じで続けてたら今に至るまで長く続けられなかったんだろうな、というのも正直な感想。