Daily "wow"

たまにしか更新しないのに文章長くてすみません。

Steven Tyler with THE LOVING MARY BAND "Out on a Limb"武道館公演

Aerosmithのフロントマンであるスティーブン・タイラーの来日公演が先日行われました。暇があればソロ活動を行っているジョー・ペリーとは異なり、スティーブンはバラエティ番組等への出演はともかく、音楽でのソロ活動は控えめ。数枚のシングルのリリースを除いては、昨年のソロアルバム、We're All Somebody From Somewhereとそれに伴う2枚の先行シングルのリリースが初めての本格的なソロ活動となりました。

We're All Somebody From SomewhereはAerosmithでの泥臭いロックは鳴りを潜め、カントリー色豊かなアルバムとなりました。そのアルバムを引っさげ、THE LOVING MARY BANDなるバックバンドを引き連れてのOut on a Limbツアーの一環として、Zepp Osaka、武道館の2箇所でライブを行いました。

当日は生憎の雨でしたが、九段下では桜が雨に濡れている風景を写真に撮る人もちらほら。グッズ売り場は、パンフレット売り切れの通知がなされ、主な商品はTシャツでしたが、中々の賑わいでした。

大阪公演のセットは分かりませんが、武道館は中央と左右にスクリーンを配置、短いながらも中央に突き出た花道、きちんと組まれた照明、と少ない公演数の割には非常にしっかりとしたセットが組まれていました。ソロながらも9割方の席は埋まっておりました。

開演は20分ほど押したでしょうか。場内の照明が落ちると、薔薇の花を口にくわえたスティーブンが芝居がかった調子で登場。ソロアルバムからではなく、Sweet Emotion、Cryin'というAerosmithのヒットナンバーからのスタート。Sweet Emotionではセーブした感じもある歌声でしたが、70を間近にCryin'のCメロやラストでの迫力のあるシャウトにはつくづく驚かされました。

息をつくまもなく、The Beatlesのカバーを三連発。I'm DownとCome TogetherはAerosmithでもカバーしたことのある楽曲。後者はそうでもないですが、I'm Downの演奏は珍しいかもしれません。Oh! Darlingについては、ソロならではの選曲といった感じです。関係ないとは思いますが、入れ替わりで来日するポール・マッカートニーを意識したのではと思わせるような選曲です。

Love Livesは日本向けの選曲でしょうか。1番のみをアコギとのシンプルな演奏で聞かせてくれました。その後、Aeorsmithでも度々共作しているギタリスト、マーティ・フレデリクセンの元へ近寄り、小話を始めるスティーブン。「(マーティが)他のバンドに書いてる曲、知ってるかな?ええと、何だっけ、君の書いた曲。チャック・ベリー?ああ、バックチェリーだった」というやり取りの後に、マーティがBuckcherryのヒット曲Sorryのサビを披露(これも彼の共作です。ヒットメイカーですね)。スティーブンも少しだけ歌ってみせて、私のような両者のファンには嬉しいサプライズでした。

続けて披露されたのは、マーティとの共作のJaded。Aerosmithとしては、現在最後の全米Top10ヒット曲で、日本でもよく耳にするナンバーだけあって、大きな歓声で迎え入れられました。この曲ではマイクスタンドを観客の方に向けるスティーブンが印象的でした。

明るい雰囲気のJadedからようやくアルバム収録曲に繋げました。途中にMercedes Benzという、これまた珍しいカバーを挟みました(このアカペラを堂々とカバーできるのはそうはいないでしょうね)が、連続でWe're All Somebody From Somewhereからの曲を披露。残念ながら他の有名曲に比べると、ソロアルバムの曲は観客がもう少しノリ切らない感じです。その辺はスティーブンも分かっていてのセットリストみたいですが・・・。

とはいえ、1stシングルであるLove is Your NameはともすればAerosmithでやりそうな(そしてブラッドあたりが愚痴をこぼしそうな)キャッチーなポップスですし、スクリーンに映し出されたPVもあって、まずまずの反応。南国風のコーラスが特徴的なI Make My Own Sunshineもウケは悪くなかったように感じます(確かスティーブンがウクレレを持って歌ったと記憶してます)。

熱のこもったLivin' on the Edgeでは、ラストまで忠実にCDを再現。一旦曲が終わりそうになってから、ドラムと一緒にスティーブンが細くシャウトするのが大好きなのですが、しっかりと再現してくれたのが嬉しかったですね。省かれることも多々あるので。

アルバムのタイトル曲はどちらかと言えばブルースの泥臭さを感じる楽曲で、仮にAerosmithに持ち込んだのなら、喜んで受け入れられるような楽曲です。逆を言えば、アルバムではやや異質なのですが、元よりAerosmithのファンばかりの武道館。曲を知らずともこの曲のグルーヴ感で押し切ったように感じました。

What It Takesのイントロでは更に大きな歓声が爆発しました。Aerosmithのバラードと言うとどうしてもI Don't Want to Miss a Thingが一番にきますし、ライブでの演奏も多くなりがちですが、Cryin'やWhat It Takesといった楽曲を選んでくれたのが嬉しいですね。曲の前に武道館でAerosmithとしてライブしたときの思い出を、遠い目をしながらしゃべるスティーブンが特徴的でした。最後のDiceの部分をためて、観客に歌わせようとするも、観客側が?といった感じになったのが残念なポイントでしょうか。

アルバムの一曲目を飾ったMy Own Worst Enemyはややダークなメロと、雲が晴れるようなサビが印象的な曲です。曲の最後にはバンドが渾然一体となりジャムセッションを披露。スティーブンもついにピアノに座りました。

ティーブンがピアノに座れば、当然期待されるのはDream Onですが、意表をついてRocksのラストナンバー、Home Tonightをファルセット交じりで弾き語りで演奏してみせました。「さよならを言う時間だ」という歌詞から始まるため、まさかもう本編ラストナンバー?と危ぶんだのですが、その後、毅然とした調子で奏でられたDream Onのイントロに一安心。会場からは声にならない悲鳴にあふれていました。40年以上も前のヒット曲ですが、今も色あせないのは楽曲の力ももちろんですが、40年も前から変わらぬ調子でシャウトを振り絞るスティーブンのおかげでもあるかと思います。この日も最高の声が武道館に響き渡りました。

本編のラストを飾るのはAerosmithでもおなじみのTrain Kept A Rollin'です。最初の軽いセッションでは、はてなマークの雰囲気が会場に漂いましたが、「Train Kept A Rollin'!!」とマイクスタンドを向けられると会場が「All night long!!」と叫ぶ様ももうおなじみです。とはいえ、この曲ではジョーの不在を感じます。マーティとの掛け合いもいいですが、「Looking so good〜」のくだりはやはりジョーとがベストですね。最後にはマイクスタンドを宙に投げ、振り回すといった派手なステージングを披露しての終了。元気なことこの上ないです。

会場をさしてお待たせすることなくアンコールを開始。ラジカセの模型のようなものを持ってくると、Janie's Got A Gunがスタート。ソロアルバムでも取り上げた楽曲で、原曲よりも大分トーンダウンしたアレンジで、歌詞の暗い側面にスポットをあてています。

続いてはソロアルバムからのシンプルなバラードOnly Heavenが、Janie's Got A Gunの暗い雰囲気をさらっと流しました。2ndシングルであるRed, White & Youを演奏せずに、Only Heavenを選択したのが意外でした。

マラカスやら太鼓やらを持って、スティーブン含めたバンドが全員でリズムを取りだし陽気なラテンの雰囲気が流れます。最後におなじみのフレーズを叩いて、Walk This Wayで爆発させるというAerosmithさながらの構成です。「Walk This Way!!」のサビで会場が一体となるのは、言うまでもありません。アンコール3曲目をWalk This Wayで締めるのかなと思いきや、ダメ押しでLed Zeppelinのカバーで、Whole Lotta Loveが登場。

AerosmithのメンバーのLed Zeppelinへのリスペクトはよく聞きますが、カバーはそんなに滅多にはありません。2013年にさわりだけ演奏したことがありますので、その延長でしょうか。中間のセクションも忠実に再現した、非常にパワフルなカバーでした。数年前にロバート・プラントが来日した際に演奏したものと比較しても、まぁ、スティーブンの方が声が出てますね(もっとも、この曲を歌いこなす上手さはもちろんロバート・プラントにかなうものではありませんが)。超有名曲だけあって、会場からは「Wanna Whole Lotta Love!」の声がAerosmithの曲と同レベルで響きました。

スティーブン・タイラーの衰え知らずの声やパフォーマンスは相変わらずですが、曲目を見ても分かる通り、求められてるものを分かって、提供するサービス精神が凄いですね。大半をソロアルバムから演奏してもおかしくはなかったと思うのですが、頑固にならないのが素晴らしい。その辺のさじ加減は結構難しいと思いますが、ソロキャリアがそれほどないスティーブンなら、これが正解かなと思いました。次に来日するのはAerosmithのフェアウェルツアーでしょうか。是非またお会いしたいですね。